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東京にインドを作り続けたこの1年を振り返ってみる:カレー哲学の視点(12/19〜12/25)

2021年は多くの犠牲を払いつつ、今しかできないことをやってきた1年だと思います。72時間カレーを作り続けている最中に2021年の幕が無理やりこじ開いて、そこから僕はずっとインドを作り続けてきました。

自分は家から動かないのに、気温はひとりでに移り変わって、料理テーマが変われば関わる人も変わる。去っていく人、新しく出会う人。カレーはあらゆるものを連れてきてくれる、それだけでまるで動かない旅です。

今回のニュースレターではこの一年間の自分の活動の軌跡を料理テーマ、記事、写真のセットで振り返ってみたいと思います。

東京マサラ部室では毎月の料理テーマを設定しており、2020年の11月からインド亜大陸をぐるっと一周する形でインド亜大陸各地域の料理を作り続けてきました。

2020年
11月 ネパール料理
12月 バングラデシュ料理

2021年
1月 パキスタン料理
2月 マハラシュトラ料理
3月 ゴア料理
4月 カルナータカ料理
5月 ケーララ料理
6月 タミル料理
7月 スリランカ料理
8月 ビリヤニ
9月 アーンドラ料理
10月 フリーテーマ
11月 オディシャ料理
12月 西ベンガル料理

2022年
1月 ナガ料理(予定)
2月 カシミール料理(予定)
3月 ラジャスタン料理(予定)


1月パキスタン料理はテレワークに向いている。

2020年末の72時間カレー作り続けるチャレンジが終了し、1月はパキスタン料理を作っていました。

パキスタンは煮込みの文化。ニハリやハリーム、パヤなど、一日中弱火で肉を煮込み続ける料理が多々あります。放置できるのでテレワークしながらのご飯作りにも向いています。

ログニナーン作り

難点としてはビリヤニやナーンなど高カロリーのものが多いことと、肉肉しくて野菜料理のバリエーションが少ないことでしょうか。家庭の経済レベルにもよるらしいですが、本当に肉ばっかり食べているらしいです。


2月マハラシュトラ料理は地味

2月はマハラシュトラ料理を作り、公園で歌人と凧揚げをしてマハラシュトラ料理を食べたりしました。
マハラシュトラは米も小麦も食べる地帯で、地味めな料理が多いのですがちょうど北と南の中間くらいでおいしい料理が多いです。あとはMishalという発芽させた豆を使った、もやしカレーとも言えるような料理があったりします。

Kolhapurターリー

都内でも貴重な西インド料理を出すお店としてプリヤマハル東京にインタビューをお願いして、マハラシュトラ料理について色々と聞かせてもらいました。

西インド料理インタビュー



3月はガンダーラ真鶴でゴアキャンプ

ゴア料理というと日本ではポークビンダルーのイメージが強いですが、インドでは逆にゴア以外では通じないようです。
ゴアは最近までポルトガル領だったこともあり、あまりインドらしくない料理がたくさんあります。
インド西側の海岸沿いに広がる魚を中心としたコンカニ料理を郷土料理としつつ、菜食料理としては(魚は泳ぐヤサイなので食べられる)Saraswat料理が発展し、ゴアの影響を受けてクリスチャンに改宗した人々が作るゴアクリスチャン料理などがそこに重層的に存在しているのが特徴です。

真鶴にある「ガンダーラ真鶴」というキャンプ場にて、ピザ窯をタンドール代わりに使いビリヤニやナーンを焼いてゴアキャンプをしました。



4月ホーリーでぐちゃぐちゃに

新生活の4月はホーリーでぐちゃぐちゃになるところから始まりました。

4月のテーマはカルナータカ料理だったのですが、カルナータカは大きく北、南、沿岸部の料理に分かれます。特に南カルナータカではラギ(シコクビエ)という雑穀を団子状にして肉料理とともに食べるragi muddeというものがよく食べられているらしく作ってみました。おはぎみたい。

解決カレーおじさん動画

この頃、カレーおじさんのYouTube取材が入り、カレーシェアハウスを撮影してもらいました。


バスマティ実験レポート

部員を総動員してバスマティライスをひたすら食べ比べる実験をしたのもこの頃。


カレーZINE VOL.2

一回目の緊急事態宣言が出た4月7日のちょうど一年後にカレーZINE Vol.2が世に出ました。装丁にもしっかり力を入れ、Vol.1より更にマニアックな内容になりました。まだ在庫あるので買ってください。


5月ケーララサッディヤを開催

日本でも人気のあるケーララ料理。ココナッツや魚介が豊富に使われ、マイルドに仕上げられるものが多いです。Kelala(ケーララ)という名前はケーララの言葉Malayalam語で「land of coconuts(ヤシの国)」という意味らしく、その名にふさわしい南国の料理ですね。
南インド料理と言うとタミル料理とケーララ料理が主流ですが、ケーララではサンバル、コランブなどはタミルのものに比べてとろみがつけられてライスに馴染むように仕上げられることが多いようです。

このときはサッディヤというケーララのお祭り料理を模して25種類くらいの料理を作り、バナナリーフで食べる会をやりました。たくさん料理があったけど、マッタライスという赤米にポディとギーをかけるのが結局一番おいしいという。

インドベンチを作りました。


6月は水牛を食べる

タミル料理は南インドの中でもひときわ存在感を放っている。チェティナード料理もかなり日本で着目されているし、南インド料理店はタミル料理がベースになっているところが多い。ジビエもよく食べられているらしく、このときはうさぎや鳩など変わった肉のカレーもよく作っていた。


映画『ジャッリカットゥ牛の怒り』のために水牛カレーを作った

映画のお手伝いで水牛のカレーを作りました。



7月スリランカ野菜、スリランカまみれ

スリランカ月間として一ヶ月スリランカ料理研究に取り組んでいた。オイルとココナッツミルクをほとんどの料理に豊富に使うせいか、お肌がやけにプルプルになっていました。

なぜか知らないけどスリランカ料理だけが好きな人はインド料理がきらいなことが多いです。スリランカと南インドは地理的に近いこともあり料理も似通っているのですが、スパイスの使い方や考え方が根っこからまるっきり異なるんだなと思うときも多かったです。



waccaさんとの実験が始まった

7月から毎月一回ずつwaccaさんのキッチンをお借りして実験をやっていくことになり、そこからずっと遊び続けています。


ビリヤニで20代最後の夏をダムにした(8月)

8月は地域テーマから離れて、一ヶ月ビリヤニに集中。30ビリヤニを炊こうと思ってリストアップしたけど毎日炊くのもしんどかったし、食べるのもしんどかったです。
スリランカ月間は割と肌の調子がよかったのに、ビリヤニ月間は身体が脂っぽかったです。ビリヤニはジャンクフードなので毎日食べるようなもんじゃないですね。
8月が誕生日の自分は20代最後の夏だったのですが、そんな貴重な時間もビリヤニをダムしている間にまたたく間に通り過ぎていってしまいました。もっと上手に生きれたらなと思いながらバスマティライスを浸水し、塩分濃度を計算し、背筋を伸ばしてDAAWAT CLASSICを湯取りする。残念だけど、ビリヤニはおいしい。

炭火ダッチオーブンで炊いたビリヤニキャンプ


9月アーンドラ料理の追求

アーンドラは米どころで米料理がたくさん食べられるが、ハイデラバードを中心としたテランガーナ料理、湾岸部アーンドラ料理、激辛のイメージの元になっているラヤラーシマ料理の大きく3つに分けられます。

都内でアーンドラ料理を出すお店としてアーンドラ・キッチン系列のお店がありますが、食べに行ったときに社長のパラマタさんとたまたま話が盛り上がり、後日そのままオンラインインタビューを行わせていただきました。

アーンドラ料理についてインタビュー


『カレーZINE Vol.2』刊行記念イベント

ひょんなことから本屋B&Bさんからお話をいただき、寄稿頂いたゲストの方とカレーを食べながら対談するという謎のイベントを実施しました。カレーは人間を利用して繁殖している。


10月マサラ部室一周年

10月は東京マサラ部室ができて一周年ということでイベントを実施しました。仕込みは夜中までかかり、中島みゆきの『ファイト!』を歌いながらひたすらカレーを作っていたのはいい思い出。勢いでTシャツを作ったりもしました。

当日自分では料理の写真を撮る暇もなかったので、じょいっこさんがレポしてくれたものを載せておきます。

立ち上げから一年間あっという間だったんですが、その間活動を続けてきて、なんだかんだ認知もそれなりに広がって応援してくれている人もいるということを実感できてよかったです。
このあと燃え尽き症候群に陥ってしばらく何もできなかったのですが。


11月オディシャ料理を伝道師に教わる

オディシャ料理というどマイナーな料理を研究せねばならなくなりどうしようかと途方にくれていたのですが、幸運にも日本に1人しかいない(と思われる)オディシャ料理研究家とつながることができ、オディシャ料理について詳しく教えてもらうことができました。
実際に料理を作ってもらって食べることで、レシピをどんなに読み込んでもわからないことがわかります。もっとメリハリを効かせていいんだとか、こんなにパンチの効いた味にするんだとか。

自分の知らないことにいかに切り込んでいくかで世界は広がっていく。



チャパティ合宿

勤労感謝の日にはひたすらチャパティをこねて焼き続けるチャパティ合宿を実施しました。waccaの三浦さんがチャパティ捏ねてた。



12月西ベンガル料理はおいしい

忙しい12月は西ベンガル料理を研究してきました。クソクリスマスもクソ仕事納めも関係ありません。ただの平日です。
一年前にバングラデシュ料理をやったので、今回は『ベンガル料理はおいしい』を底本としつつ、西側のベンガルの料理を作ったり食べたりしていました。町屋のプージャーは2回行った。


ホールトマト缶食べ比べ記事


1年を振り返って

2021年は、まさに動かない旅でした。動かないのに泥臭い旅でした。カレーというものはどこまで近づいてもフラクタル構造をしていて終りが見えません。自分自身何度もキャパオーバーして周囲に甘えてしまったり、もっとスマートに生きられないのかと落ち込むことが何度もありました。ネガティブだし、すぐに調子崩してすみません。
でも泥臭いながらも繰り返すことで着実に前に進んでいるところはあり、ともに手伝ってくれる仲間だったり、ふとしたときに助言をくれる方など多くの人の協力のおかげでここまでやってこれたんだなと思います。関わってくれたすべての人にダンニャワード!

そういえば、12/29(水)にNHKワールドで東京マサラ部室の普段の活動の様子が放映されることになりました。どんな風にまとまっているかわかりませんが、よろしければご覧ください。


今年も終わりです。2021年の年末は8人のカレーの作り手がそれぞれのターリーを作り、最終的にインドへ旅立てるようにと願いを込めた巨大曼荼羅ターリーを作りあげます。


タイムスケジュール(仮)


来年の目標

2022年にはもう諦めよう。自分はこんな風にしか生きれない。

どんなマイナーなものでも掘っている人がいて、どんなニッチ領域でも刺さる人には刺さる。それを忘れずにクオリティと面白さを今後もひたすら追求していきたいですね。

来年は、新大久保に拠点を移したいと思っています。それがどういう形態になるかはわかりませんが、活動する上で新大久保が近いと便利だし、もっともっと面白くなると思います。まだ妄想レベルなので、もうちょい詳細を詰めて書いてみます。


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◾このメンバーシップについて 日本にインドをつくる。カレーとインド料理研究のためのオンラインコミュニ…

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