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「カレーの考察」

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カレーやインド料理について基礎的な実験のレポートや考察をした記事をまとめていくマガジンです。
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記事一覧

タンドールと共に寝起きする合宿で、短時間でナンを上手に焼けるようになるために考えた7つのポイント

タンドールと共に寝起きする合宿で、短時間でナンを上手に焼けるようになるために考えた7つのポイント

パンジャーブやデリーなど北インドを旅すると、そのあたりの路地で掘り炬燵のような床下式のタンドールでカミーリーロティ(発酵した白くて丸いふパン)やクルチャ(スパイスや野菜の詰められたパン)を焼いている光景を目にする。ナンもあることにはあるが円形で固めに作られており、日本のインド・ネパール料理店でよく食べられているようなふかふかした甘いしずく型のナンはインド現地では見たことがない。

インド現地にはな

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目隠しをしてミールスを手で食べる「クラヤミールス」をやってみて考えたこと

目隠しをしてミールスを手で食べる「クラヤミールス」をやってみて考えたこと

東京マサラ部員すーさん主催の「手でミールスを食べるBAR」というイベントに参加した。インド料理は手食することが一般的であるが、普段手で食べることに慣れていない人が実践することで新たな体験をしてもらおうというのが狙いだ。

自分自身は10年くらい手食をしているのでもはや手で食べること自体には何も思わない。そこで、視覚を奪って手の感覚に集中したらより楽しめるのではないかと思い、前からやってみたかった「

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2000年前のカレー再現。高円寺かりい食堂さんと古代インド料理「クシーラウダナ」と「クックタユーシュ」を作ってみた【いにしえのインド料理研究#1】

2000年前のカレー再現。高円寺かりい食堂さんと古代インド料理「クシーラウダナ」と「クックタユーシュ」を作ってみた【いにしえのインド料理研究#1】

姿も形もわからない古代のインド料理を、文献をもとに再現してみるという試み。まずは2つの料理を作ってみた。

料理というものは移り変わっていく。インド料理が今の姿になったのはごく最近のことで、これまでには多くの出来事があり、その度に変遷があった。例えば唐辛子が新大陸からインドにもたらされたのは16世紀とされており、それ以前にインドに唐辛子はなかったというのは有名な話だ。さらに、ターメリックが料理に使

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【カレー理論】カレーにおけるトマトの役割と使い分け

【カレー理論】カレーにおけるトマトの役割と使い分け

「カレー作りにおけるトマトはスパイスより大事」

※ある程度カレーを作りなれている人向けの内容かもしれません。
※あくまでコバタロの持論なので、客観的に正しくないことも含まれています。「こういう考え方もあるんだ」というくらいのスタンスでご覧ください。

忙しい人は目次から「まとめ」までジャンプ!

前置きカレー作りが好きな皆さんこんにちワダ。

スパイスカレー作りでは当たり前のようにカレーにぶち込

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短時間のテンパリングでスパイスの香りは本当に油に移るのだろうか?実験してみた@wacca【カレーのカガク】

短時間のテンパリングでスパイスの香りは本当に油に移るのだろうか?実験してみた@wacca【カレーのカガク】

今まで、カレーの構成要素として玉ねぎやトマトに関しての実験を繰り返してきた。ここからはカレーの本丸であるスパイスに関しても切り込んでいこうと思う。

今回は、短時間のテンパリングだけでスパイスの香りは本当に油に移るのだろうか?という実験をしてみたときのレポート。過去レポートはこちら。

インド料理でスパイスを扱うときに多くのレシピでまず登場するのが「テンパリング」ではないだろうか。

テンパリング

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ビリヤニ愚考#1_ビリヤニ香探求

ビリヤニ愚考#1_ビリヤニ香探求

数年前ならば,「ビリヤニとは」から話を始めたであろう.しかし今となってはその必要もないほどビリヤニはエスニック料理における一定の地位を築いたと思う.その一方,インネパ店のジャンキーな炒めビリヤニや都会を中心に栄える和の要素を取り入れたビリヤニなど,幅の広さゆえに「結局ビリヤニって何?」という疑問は深まる.総論や定説は一旦他に譲り,ここではぶち当たった疑問を深掘りする方式で問いのぐるりを巡ってみる.

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水と共に挽いた時、スパイスの香りはより強まるのか?チェティナードチキンカレーの場合【カレーのカガク】

水と共に挽いた時、スパイスの香りはより強まるのか?チェティナードチキンカレーの場合【カレーのカガク】

チェティナード料理を作る際に「ウェットマサラ」を作る工程が入るレシピがいくつかある。「ウェットマサラ」というようなはっきりした名称がついていないこともあるが、文字通りスパイスをローストして香りを立たせた後、水を入れながらミルサーなどでグラインドする方法である。

これはチェティナード料理特有の調理法というわけではないと思うのだが、チェティナード料理について調べていると頻度高く登場する方法である。

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生食用トマトと加熱用トマト、どちらがカレー作りに向いているのか?トマト実験Vol.2【カレーのカガク】

生食用トマトと加熱用トマト、どちらがカレー作りに向いているのか?トマト実験Vol.2【カレーのカガク】

カレー作りに欠かせないアイテムであるトマト。世界中で10000を超える品種があり、日本でも240種類ほどが栽培されているという。

前回の実験でホールトマト缶について調査したが、トマトの選択肢はトマト缶以外にもトマトピューレ、トマトペースト、生トマトなどいくつかある。今回は生トマトにおける生食用トマトと加熱用トマトの違いについて比較してみた。

前回の実験↓

生トマトには調理したときにおいしくな

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スパイスと発酵のこと#2_野草でグンドゥルック

スパイスと発酵のこと#2_野草でグンドゥルック

【はじめに】季節感は無視,春の野草でグンドゥった話以前作ったネパールの発酵食品,グンドゥルック.
無塩発酵乾燥野菜というなんとも情報量の多い食材である.

現地ではアブラナ科の野菜で作ることが多いらしく,意識したわけではなかったけれどこの回で使ったカブとタァサイもアブラナ科.他にも繊維質な野菜が向いているらしい.
そこで当時,日本中部地方に籠る2020年GW(当時)の私は考えた.

突拍子もないが

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カシミールでお茶を#2_ピンクチャイ・イン・プラクティス

カシミールでお茶を#2_ピンクチャイ・イン・プラクティス

先日リサーチと仮説を立てたピンク色のカシミールチャイ,試行錯誤を重ねたので忘備録として報告します.速報値的なものです.最適化ができたら追って更新します.

【用意するもの】材料
茶葉:ティースプーン 1 (約2 g)
水:400 mL 
重曹:ティースプーンの柄 2杯
牛乳:30 mL程度,適宜
塩:軽めの1つまみ
(水温が高い時期なら氷水:1 L程度用意)
道具
コンロ,小鍋,茶漉し,ティースプ

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カシミールでお茶を#1_ピンクチャイ・リサーチ

カシミールでお茶を#1_ピンクチャイ・リサーチ

【カシミールのピンクチャイ】きっかけは忘れてしまったが,以前チャイについて調べていた時に "Pink chai" や "Kashmiri tea" または "Noon tea"と呼ばれるなんともキャッチーなお茶文化があることを知った.名前の通り,苺ミルクのようなピンク色.さらにピスタチオなどのナッツを砕いて載せるのも定番らしく愛らしさを増強している.

カシミール,といえばインド・パキスタン・中国

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球体のパーフェクトチャパティを焼くには?【東京マサラ部活動レポート】

球体のパーフェクトチャパティを焼くには?【東京マサラ部活動レポート】

チャパティをまんまるに焼くこと、それは人類共通の願いである。
毎朝自分のチャパティは自分で焼くような丁寧な暮らし。

早くこれになりたい。まんまるに膨らんだチャパティをいつでも自由自在に焼けるようになったらどんなに素敵だろうか。履歴書に書けるし。

では一体、ぷっくりと膨らみ、きれいに2層に分かれたチャパティを作るにはどうしたらいいのだろうか。このようなチャパティを理想形としたときの要素を分解する

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最もカレー作りに適したホールトマト缶はどれか?9種類比較実験@wacca【カレーのカガク】

最もカレー作りに適したホールトマト缶はどれか?9種類比較実験@wacca【カレーのカガク】

カレー作りにおいて、トマトは欠かせないアイテムだ。栄養満点のトマトはカレーのベースになり、うまみ、酸味、テクスチャー、フレッシュさ、香りなどを与える。インドにトマトが入ってきたのは16世紀だというが、それ以前のトマトのないインド料理はいったいどういうものだったのか想像もできない。

カレー作りの材料としては、生トマト、ホールトマト、カットトマト、トマトピューレ、トマトペースト、トマトジュース、ドラ

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カレーにおける玉ねぎ炒めと時短方法について。玉ねぎ実験総まとめ@八丁堀wacca【東京マサラ部活動レポート】

カレーにおける玉ねぎ炒めと時短方法について。玉ねぎ実験総まとめ@八丁堀wacca【東京マサラ部活動レポート】

玉ねぎのことを考えていると夜しか眠れないね。

月に一度、八丁堀waccaさんのキッチンをお借りし、カレーにまつわる要素について様々な実験をしていく「カレーのカガク」プロジェクトが進行中だ。毎回新しい発見がいくつもあり大変楽しい。

肉のこと、スパイスのこと、水のこと、油のこと…。扱いたいトピックは山ほどあるのだが、まずはカレー作りの基本のキである玉ねぎについてフォーカスを絞り、3回連続で実験を行

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