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東京マサラ部28.西インド料理についてInterview【プリヤマハル東京】

 東京マサラ部2月の活動テーマは西インド料理です。

「西インド」というと、ラジャスターン、グジャラート、マハラシュトラ、ゴアの4州を含むことが多いですが、個人的に2月はマハラシュトラ料理の調査や試作をメインに取り組んでおります。  

ムンバイや西インド出身のシェフは日本にたくさんいると思うのですが、日本でマハラシュトラ料理を前面に押し出して出しているお店はまだまだ少ないです。

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そんな中、マハラシュトラ郷土料理の専門店である笹塚のプリヤマハル東京にて、ムンバイ在住のオーナー夫妻、Rutjaさん・Swapnilさんからマハラシュトラの料理に関してオンラインでお話を伺う機会を得ました。

長いですがそのときのインタビューをまとめたので垂れ流します。


このとき食べた2月限定ターリーの食レポはブログにて(お店の食レポは基本的にブログに書いています)


Q:お店を始めた経緯は?

A:もともと日本で2015年から2017まで日本語の通訳として働いていた。その際、日本には南インド料理店とパンジャーブ料理店がたくさんありインド料理の根強い人気に気づく。しかし、マハラシュトラ出身のインド人はたくさんいるのにも関わらずマハラシュトラ料理専門店がないことを知り、自分が 始めなくてはいけないと思った。そこから一度ムンバイに戻ってレストランを始め、また日本に戻って一年間滞在しながらプリヤマハル東京の立ち上げをした。

Q:マハラシュトラのローカルで食べる米は?

A:普段使いのお米はアンベモハールAmbemoharインドラヤーニーindorayaniコーラムKohrumなどの短粒米を使っている。バスマティは高いので普段は食べない。ビリヤニやプラオなどを作るとき専用の米という扱い。代表的な米料理Masale BhatをつくるときはAmbemoharなどの米を使うことが多い。


Q.マサレバートとプラオの違いは?

A. マサレバートは、ターメリック使うが、プラオは使わない。そのため色が違う。マサレバートはスパイシーに仕上げる一方で、プラオはそれほどスパイシーではない。使う野菜はベジプラオならば同じ場合もある。

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昨年ムンバイで食べたマハラシュトラターリー。真ん中のものがマサレバート。

Q:Goda masala(マハラシュトラのスパイスミックス)はどういうときに使う?Godaはどういう意味?

A:Godaは甘いマサラという意味。Amti(酸味のある豆の料理)など色々な料理に使う。甘い香りになるのは、シナモンなど甘い香りのスパイスを多く揚げて加えたりしているため。主な構成としてカルパシ、ココナッツ、セサミ、クローブ、ベイリーフ、チリ、BP、カルダモン、コリアンダーなどを使うが、カルパシは省略してもよい。



Q:マハラシュトラではどういう油をよく使うのか。

A:主にひまわり油かピーナッツ油。パオバジなどの屋台料理ではバターを大量に使うが、家庭ではバターではなく、ギーしか使わない。ギーも手作りする。


Q:マハラシュトラではお見合いの際にお嫁さんの料理の腕を試す料理はチャパティではなくポへって本当か。

A.お見合いをするとき、お嫁さん候補にシンプルなカンダポヘ(玉ねぎと干して潰した米、ポへを炒めたもの)を作らせて料理の腕を試すという習慣がたしかにあった。(最近はそうでもないみたい)シンプルな料理のため実力差が出やすい。


Q:ダルのようなものの呼び名としてAmti、Varan、Dalという言葉があるが、どう使い分けているのか?

A:Dalは一番シンプルなもの。
Varanはダルにクミンやマスタードシードなどをタルカ(テンパリングした油とスパイスをかける)する。唐辛子は入れず、ギーをかけてライスと食べたりする。
Amtiはもう少し豪華で、コカムで酸味をつけたり具が入ったりする。


Q:シンプルにご飯と豆料理の組み合わせセットのことをマハラシュトラではなんと呼ぶか?

A:地域によって呼び名が違う。プネーやムンバイでは ワランバートなどと呼ぶが、ナグプールやコラプールではダルバート。コンカン、ムンバイ、プネではアムティバートと呼ばれることが多い。


Q:Usal(豆のスープ状のカレー)を作るのによく使う豆は?

A:Vatana dal(エンドウ豆)、Chawri(ロビア豆)、Moong(緑豆)、Matki(モスビーン)などを発芽させてから使う。ウラドダルは基本的に南インドのもので、マハラシュトラではあまり使わない。発芽させる理由は健康にいいから。


Q:UsalとMisalの違いは?

A:Usal は豆でできたシンプルな料理で、そのままチャパティとかライスと食べることが多い。そこにフライドシャロット、トマト、オニオン、チリなどを足してスパイシーに仕上げるとMisalになる。Misalはコラプールが発祥で、とても辛い。プネーのものは少し甘く、Nagpurもまた違うMisalがある。それぞれの街にそれぞれのMisalがある。

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ムンバイで食べたMisal


Q:以前Kolhapurに行ったときノンベジレストランには肉料理しかなかったけど本当にベジ料理が存在するのか?

A:一応Kolhapuri Masalaというベジ料理があるが、それぐらいしかない。本当に肉しか食べない。

Kolhapurの話は去年ここに書きました。


Q:Saar,Rassaという言葉をどう使っている?

A:Saarはトマトスープのことだけに使う。Rassaはグレイビーとか汁とかのカレー的なもの全般。わかりやすいのはKolhapurのタンブララッサ、バンダララッサとか。

Q:Bhakri(雑穀チャパティ)やThalipeeth(お好み焼き的な軽食) に使用する雑穀の種類は?

A:Rice, Bajra(トウジンビエ), Jowar(モロコシ)の粉などがBhakriの材料となる。何も混ぜず水でこねて雑穀チャパティとして主食としてたべる。Thalipeeth はスナック、ストリートフードで、朝食で食べたりする。玉ねぎやスパイスが入る。

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Bhakri

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Thalipeeth


Q:普段よく食べる主な魚の種類、主な魚料理は?

A:プネーは海から遠いのでそんなに魚を食べないが、ムンバイでは海の魚をよく食べる。うなぎもカレーにして食べたりする。あとはボンベイダックとかも有名。海岸沿いを含むコンカン地域では特にシーフード料理が有名。

ボンベイダックは見た目が気持ち悪い深海魚で、バングラデシュでボッタにするLoitaと同じ魚


Q:隣接する他の地域の料理には馴染みがあるか?

(グジャラート州・ゴア州・カルナータカ州・アーンドラプラデーシュ(テランガーナ)州・チャッティースガル州・マディヤプラデーシュ州など)

A:ムンバイは他の州や外国からの移民もたくさん来るので、本当にいろいろな料理が日々食べられる。


Q:なぜムンバイはストリートフードが有名なのか。

A:スパイスが少なくて手軽でおいしいから。また、インド中から移民が集まってくるし、企業の拠点もたくさんあったりするので、忙しいワーカーの手軽な軽食として発展してきた経緯もある。有名なところだとPav bhaji は1955~1960にムンバイで生まれ、有名になり始めた。実は、パオバジもバリエーションが地味にたくさんある。

Q:朝ごはんは普段何を食べる?

A.ポハ(潰して乾燥させたお米を炒めた料理)、ウプマ(おかゆ)などをよく食べる。

Q:Curryと言う単語は一般的に使われる?


A:使われない。レストラン用語という認識。
(Bhajiという言葉がかなり広汎に適用され、ある意味Curryに相当する。)


終わりに

インタビューは以上です。自分もまだまだ知らないことばかりで、掘れば掘るほど面白くなってくる西インド料理。

西インドの家庭料理は全体的にド派手ではなく、茶色い地味なものも多いです。しかし、地味ながらも優しい魅力があるのです。

ご夫妻は日本在住経験も長く、部分的に日本語でも話を伺うことができました。skypeインタビューは終始和やかな雰囲気で行われ、詳細まで料理の説明をしていただけました。

Rutjaさん・Swapnilさん夫妻に加え、突然にも関わらず今回のセッティングをしていただいたプリヤマハル東京さん、本当にありがとうございました。


このときの食レポはブログの方へまとめています。



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