見出し画像

かんな奥様ストーリー⑤

「へえ、それは大変でしたね」
 妻のおつかいを済ませ、ホテルの駐車場に車を止めた俺は最寄りの駅でかんなと会った。
 明るいロングヘアの茶髪な女の子で、黒のロングワンピースに白のふわふわなロングコートとシックな服装。
 俺はかんなとホテルまで歩く。夜な夜なまんじゅうを買いに行かされた愚痴を誰かに話したかったからだ。
「旅行じゃないんだこっちは」
「奥さんからしたら、県外に出かけた感覚なんじゃないですか?」
「ええ……」
 俺は仕事の関係上、各県を飛び回っている。
 かんなの言う通り、専業主婦の妻にとっては県外へ飛び回ってるぐらいにしか思ってないのかも。
「そう文句言いながらもお土産を買っているの、可愛いですけどね」
 かんなにそう言われ、俺は自身の頭をかく。
「そう、なのかな」
「ええ、可愛いです!」
 愚痴を聞いてもらっただけで、気分が少し晴れた気がする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?