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詩「les sentiments de tristesse sont très intenses下層ガルニの憂鬱」

こんにちは。
葬送のオーケストラ「墓の魚 PEZ DE TUMBA」
作曲家です♪

今回は
19世紀フランス・パリ
を舞台にした
新作の詩
を書いたので、
掲載します。

テーマは貧困です。
詩の中で登場するガルニ(Garni)とは
フランスの安アパートの様な
低下層の家具付下宿の事です。

以下、少しだけ
詩の解説をしていきたいと思います。

・・・

不衛生なガルニの一室で、
めくれた壁板の中から
ゴキブリ(カファール)
こちらを覗いている。

ゴキブリは、
フランス語文化の中でも、
人生の憂鬱や、悩み事
象徴するものです。

その
めくれた壁の裏のゴキブリの姿が、
まるで絵画のモチーフの様に見え、
「汚い底辺の暮らしの中にも
高尚(高貴)な芸術とは存在するのだ・・」
と主人公は語るのです。

ここでゴキブリの事を
シナントロープ(synanthrope)
つまり、
[人間社会に依存した動物]
と、敢えて呼ぶのも、
芸術というものが
全ては人間社会の思考(都合)
によって生み出される

という暗示があります。

一方、ガルニの二階に住む
(誰にも相手にされない)蚤だらけの男が
高尚な詩を読みます。

多くの知性尊いものは、
貧困の中で
人知られず消えていくもの
であり、
その摂理(真実)を忘れるな・・
という
華やかな文壇に向けた批判
も語られます。

ゴッホの絵「ジャガイモを食べる人々」

文壇の栄光など
一部の恵まれた者達の
表面的な遊戯に過ぎない。

本当の貧困の中で、
音楽を奏でる者達・・
真実の芸術ほど、
文壇などに上がる事も無く、
人知られる事なく、
跡形もなく消えていく・・
という事実を
受け入れるべきだ・・
と主人公は語るのです。

なぜなら、
そうやって今までも
人間社会は、
数多くの貧困
(あるいは弱者)の中に埋もれた
知性(芸術)を無視し、
殺して来た訳ですから、
今更何を文壇に上げて
讃えた所で、
全ては手遅れ
だからです。

こちらはパリではなく、ロンドン

作中で
が進む中で提示される
各章のタイトルは、
全く変わる事は無く、くり返されます。
貧困とは、
[抜け出す方法がなく、
永遠に繰り返される憂鬱]
だからです。

さてさて、
そんな訳で、新作の詩に関する
簡単な解説をしてみました。
以下、詩の本編を掲載します。

↓↓↓

【les sentiments de tristesse sont très intenses
下層ガルニの憂鬱】

黒実 音子


第一章
le sentiment de bourbier ou de déprime
[泥沼の精神、または憂鬱・・]

屑屋は歌う。
貧困ガルニの埃まみれの窓辺に転がる
蠅の死骸・・
固くなったキリストの肉体・・
熱を持ち、腐り落ちる
奴隷達の主食(イモ)の花・・
動物(ファウナ)的な巣穴に閉じ込められ、
何処にも行けない隣人達・・

それはペストによる
沮喪の歌であり、
剝ぎ取られた憐みの賛歌(キリエ)であり、
乞食だけにわかる艱難の譜面だ。

おお、神よ!!
なんて事だ。
見よ!!
破れ、めくれた壁の裏にいる
蜚蠊(カファール)を!!

それはある種の
シナントロープ達を描く絵画の様に
高貴な惨めさへの
グロテスクな誇張であり、
卑屈な現実への密告である。

第二章
le sentiment de bourbier ou de déprime
[泥沼の精神、または憂鬱・・]

二階に住む蚤を売る男は言う。
「我らは病害と親眤な関係にあり、
ラテン語で咳をする」

知性とは常に
救えぬ乞食の外套を羽織る。

ああ、蝦と魚の匂いのする
漁船に集る蠅を追い払い、
数える事など叶わない
無数(レギオン)の憂鬱を
私は内包している。

第三章
le sentiment de bourbier ou de déprime
[泥沼の精神、または憂鬱・・]

屑屋は歌う。
貧困ガルニの埃まみれの窓辺に転がる
蠅の死骸・・
すなわち自分達の有り様についての
検証を・・!!

貧困よ!!
数えきれない夢を殺し、
名も知られない貧者を殺し、
血痰を吐き、
それでもまだ足りないのか?

ああ・・
それならば
破れ、めくれた壁の裏にいる
蜚蠊(カファール)こそが
我らの絵画だ。

第四章
le sentiment de bourbier ou de déprime
[泥沼の精神、または憂鬱・・]

路上に捨てられ、
泥水にふやけた新聞の上でこそ
歌うべき歌がある。
したたかな屑屋よ。
一曲歌ってくれ。

ああ、ジューヌ・フランスよ。
そして
そんな音楽に焦がれないでくれ!!

どうか、忘れ去り、
先に行ってくれ!!

bourbier・・
bourbier・・
進まない物語もあるという事だ。
ただ、何度も繰り返し、
救われない!!

じきに俺達は死んで、
貧者の肥料となる。
命も、顔も、誇りも、笑いも、
何もかも譜面には
残らないし、
ああ、そうとも。
そもそも
残る事を望んでいない・・



◆◆


いかがでしたでしょうか?
本日は、私の
新作詩を紹介いたしました。

という訳で、
そんな作品を日本で制作していく
私や、私のオーケストラ
「墓の魚」

これからも
よろしくお願いいたします~。




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