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詩「[神と荒野における腐肉達のダンス] 五つの詩」を書きました

こんにちは。
葬送のオーケストラ「墓の魚 PEZ DE TUMBA」
作曲家です♪

本日も
私のの紹介を
していきたいと思います♪

今回は
「[神と荒野における腐肉達のダンス] 五つの詩」
という
五つの詩でセットとなっている作品で、
この詩では、
人間社会の見ていない場所で
繰り返されている
[顧みられる事のない死]
が語られます。

詩の舞台となっている場所は
メキシコポルトガルスペイン
と、
ラテン系イベリア系
世界観が描かれます。

しかし、そもそも
[神と荒野における腐肉達のダンス]
とは何なのでしょうか?

この詩集を語る時、
私は、ある絵画を紹介したくなります。
それは
ダヴット・リッケルト(David Ryckaert III)
「La ronde des Farfadets
de Les Farfadets(幻視の精のロンド)」
です。

「La ronde des Farfadets de Les Farfadets」(David Ryckaert III)

このでは、
人間社会が見ていない
(社会の理性が認知する事のない)
無人の荒野で、
腐肉の様な者達
輪になって踊っています。

そして、その上空では
謎の二人組が、
この光景を見ているのです。

の右側には、
この幻想を見ている人間
の様な姿も写っているので、
これは
「聖アントニウスの誘惑
(As Tentações de Santo Antão)」
的な題材である可能性もありますが、
詳細は不明です。

恐らく、
人が通りかかれば、
あるいは昼になれば、
この魔物達は、
たちまちただの腐肉に戻るのでしょう。

すなわちこれは、
人間社会が把握しきれない
暗闇の中の・・
つまり、この世界の・・
[得体の知れなさ]
を表している
なのだと私は思います。

我々人間が、
如何に理性社会を作り、
残酷さ隠蔽し、
無菌室の様な価値観の社会で
生きていこうとした所で、
社会の外側荒野では[悍ましい死]
(動物達の死骸や喰い合い)
が展開している。

衛生の為に、町の城壁から外(荒野)
病人の死体や、廃棄物や、
汚物を捨て去り、
[穢れ]として、
人間の醜さを忘れ(隠し)、
社会性という化粧で着飾った所で、
荒野では悍ましい真実達が踊っている・・

このは、
そんな世界の虚栄(VANITAS)性
描いている様にも思えます
(人間が支配していない
荒野(外の世界)から
悪霊がやってくる

という迷信は古くからあります)

また、踊る腐肉の様な悪霊達に比べて、
上空に吊るされている
赤い鐘(ベル)の様なものには
妙な現実性があります。

恐らく、
この風で揺れる鐘(ベル)の音に合わせて
悪霊達は踊っているのですが、
この荒野暗闇の中
寂しく風に揺れる
遺棄された鐘の音に、
人間が
[畏怖想像力]
を働かせた時に、
見えぬ深淵(ABISMO)の中に、
これらの
踊る悪霊達の姿
が描き出されるのです。

それは、
存在しないものを見ている
のと同時に、
この世界の[隠蔽された真理]を
悪霊という形に変えて見ている

(人間社会が飼い慣らせない
世界の残酷な真理を見ている)
とも言えます。

ちなみに、私(「墓の魚」)の悪霊観
絶大な影響を与えている
ダヴット・リッケルトの絵は、
他の作品でも、こんなヴァニタス的な
[囁く死骸]がいつも登場するので、
良かったら、ぜひ調べてみて下さいね♪

さて、そういった
ヨーロッパ芸術の精神を把握した所で、
ようやく今回の
[五つの詩]のテーマを
説明する事ができます。


という訳で、以下に、
「[神と荒野における腐肉達のダンス] 五つの詩」
テキスト本文を掲載します。

↓↓↓

◆◆
「[神と荒野における腐肉達のダンス] 五つの詩」
黒実 音子
◆◆

「[1]捻じくれた子供達」
黒実 音子

私の装飾は、艶やかな黒い蠅と白い蛆。
ガス壊疽と、自由になった蛋白質(ミオグロビン)。
捻じれた子供達(クロストリジウム)・・
あるいは破壊された表皮を通る霊(パーフリンゲンス)。

おお、ハビエル。
かつて斜陽の午後、
アヨコテ豆の花の鮮やかな色を
私達が讃えた様に、
世界のありのままの姿を見つめ、
その美しさを陰りの無い眼(まなこ)で眺めて・・・

「[2]嚢胞性壊死の奏でる音楽」
黒実音子

私達の氏族がかつて仕留めそこなった
黒い茂みに住む獣が
私達の心臓を毎夜齧ってゆく・・

それか、何処かの
腐肉(カローニャ)を捨てる荒野と繋がっている
我々の内部からの崩壊と腐敗・・

誤った歪なリガンドを受容し、
絞殺される肉の喘鳴や、
上行大動脈に生まれた
笑みの無い幼児
(アネウリスマス・デ・アオルタ・アスセンデンテ)
の命を狂わす音・・

病的な嚢胞(キスティカ)の奏でる歌は、
一本弦をコル・レーニョで奏でる
死者の笑う
黒い口腔内から響き渡るのだ。

その嚢胞性壊死の奏でる音楽は
最も自然に荒野に流れ、
夜の荒れ狂う海面の様に
救いはなく美しい。

腐肉(カローニャ)は最も自然に
無数の蛆達に貪り喰われ、
土壌に帰っていったが、
愛だけが!!
愛だけがそれに対抗し、
その過度な愛着は
水死体(デ・ノワイェ)の顔を爪で搔き毟り、
肉を剥がし、
死の素顔を露わにし、
歪なものにしてしまった。

愛とは愛着であり、
愛着とは執着であり、
それ故に命(アルマ)達は地上で苦しむのだ。

キリスト教徒は神に問う。
「主よ、なぜ私の愛する者を
奪われるですか?」
神は答える。
「私の知る愛を知る為に・・
そして、無や不変が知らぬものを
知った故に・・」

応じて、
フランク・スターリングの法則から
永遠に解放された
荒野の鹿(ヴェナード)の死骸も
語りだし、答える。
「幸福とは不幸によって
もたらされる故に」

やがて人は、
己の心臓を毎夜齧る獣の顔が
天使と同じである事に気付く。
やがて人は、
いつかの朝に海岸で見た砂地の貝、
会わなくなった友の顔、
二度と会えぬ愛する者への執着を
夜の荒波の中に放り込み、
自らも身を投げる。

悲しみを交えながらも、
永遠の望郷に駆られながら、
愛を失い、
愛に帰還するのだ。

「[3]愛という湿度に依存する故に乾いて死ぬ」
黒実音子

蔓脚類(セミバラヌス・バラノイデス)達の
命を打ちのめす北海の
冷徹な岩礁に打ち上げられた
数匹の月魚(ペエトシコル)の骸が、
[何処にも行けない肉]として
世界に展示されている。

[外科医の肉(エプロピスシウム・フィシェルソニ)]と呼ばれる
巨大な陽性菌(モノデルム)達は、
「冷たい(イル・フェ・フロワ)・・」と言いながら
死んでいくのだ。

ああ、貧しい労働者よ!!
船乗(マリニェイロ)よ!!
何処にも行けない者達は、
ただ命を削り、
心臓を切り裂く荒波の中に船を出す。

限定された環境で肥大した肉(カルネ)は、
優しい[血漿の粘度]に支配され、
決して世界を知る事はない。

イルマオス!!(おお、友よ!!)
お前は知っているのだろうか?
我々の魂の歌を?

本当は誰もがわかっている事だ!!
革命など、
切断され、塞き止めるものも無く
流れ出ていく摘出された心臓の
心拍出量(ガスト・カルジアコ)を計る様に
無駄な事なのだと。

それでも、何処へも行けぬ
悲しい陽性菌(モノデルム)は、
その[錯体の粘性]の中で足掻く。

情熱(パイション)など無い。
信仰(パイション)は乾いたままだ。
愛という湿度に依存する故に
乾いて死ぬ。

知性よ!!
お前は何もかもわかっていない。
組合員達は
何もかも知っていながら出かけていく。

本質は同じだ!!
月魚(ペエトシコル)の臓物に捕らえられ、
血管から滲み出る間質液(リクイド)に支配され、
肺循環する血を感じ、
命を永らえておきながら!!
労働者達は生きる為に
今日も自身の心臓を突き刺すのだ。

【[4]我々は、爪や、髪や、悍ましい糞便や、死んだ犬(カゥン)を
全て荒野に投げ捨て、振り返らない】
黒実音子


健全なる死とは、
常に荒野(カンポサント)で営まれている。
だから、ここより壁の内側は
歪に死を隠蔽した
高慢な患者達の無菌病室(サラ・リンパ)だ。

我々は、
爪や、髪や、
[悍ましい糞便(エジィオンド・エストゥルミ)]や、
死んだ犬(カゥン)を
全て荒野に投げ捨て、振り返らない。
それは禁忌(アナテマ)故に。

ああ、忌まわしい穢れを左肩越しに放り、
我々は今日も
あの墓地を見ないように暮らす。

それでも早朝、
狭心症(イスケミア)の胸の痛みを抱え、
打ち上げられた鷗の死骸を見た時、
私はハッキリと何者かの顔を見る。
そいつは人生であり、死であり、
笑みの無い己の顔をしていた。

打ちひしがれたキリストの磔刑像が
死や、曝気槽(アイラッサオ)の汚泥や、
病や、喜びや、
痛みの混合物となった
錯体の十字架を背負いながら
私に語りかける。

おおい!!そこのお前!!
痛みを見ないフリをするな!!
それこそがお前の家だ!!
孤独に化膿した醜い傷を抱え、
誰にも知られずに蟹(セントーリャ)と銃身を埋葬する。
座り心地の悪い玉座は
お前の肋骨(コスタ)を徹底的に痛めつける。
だが、それこそが!!
それこそがお前の私物なのだ!!

ああ!!そして私は
舌下錠(ニフェジピン)を口に入れ、
寒さに凍えながら、
無数の崩御された
蛤(ヴェネリッド)達の殻を踏みつけ
一人で帰路につく!!
誰にも知られない様に。

そう・・
あの時・・
あの時、私は自分の顔を見た!!
ああ!!それは死の顔をしていた。
それは健全な[痛み]の顔をしていた。

血を流さぬ命などない。
切り裂かれぬ命など無いのだ!!

打ちひしがれた
キリストの磔刑像の下で、
私は自分の顔を見た!!

そいつは・・
他人行儀で友の葬儀に立ち会い、
振り返りもしなかった
黒い荒野の墓地の顔をしていたのだ!!

「[5]我々は喪す事で、いつか楽園の門で出会う故に」
黒実 音子


命は、
深藍色の深く冷たい海の底で
大量の大型の紐虫(ネメルチア)達に
貪り喰われる。

それを「許さない」と言う
喧しい法律家も
遥か昔に蔓脚類達を纏わりつかせ
珊瑚藻(リソサムニオン)となった。
海底に横たわる
これらの[無痛の肉(カルニ・インドロル)]達は、
過ぎ去った物語を気にもかけないのだ。

ああ、キリストに遺棄され、
砂地に横たわる
[命の骨]である巻貝よ。
黒い波間に囁くグラム陰性菌達よ。
巨大な棘皮類(ウニ)を喰い殺す
[付着する長桿菌(テナシバクラム)]よ。

籬貝(コノミュレックス・ルワヌス)の
[内に窪む溝(ヒーントレンシア・エストロンボイチ)]の様に、
世界は今日も正確に再現され、
命は無数に消えていく。

わかり切った天使達の自死(アポトーシス)により、
命は塵の雪となり、
積もり砂地となり、
悍ましい美しさを作り出すのだ。

その美しさの前では
命に価値などない。

船乗(マリニェーロ)よ。
お前は元々、
去る為に作られたではないか!!
崩壊が組み込まれた
[消費する肉体(コンスモ・デ・カルネ)]に
それでも錆びた釘を
血漿に打ち込んでまで
縋り付くのか?

我々は失われる事で
我々は去る事で
我々は喪す事で
いつか楽園の門で出会うだろう。

ああ!!紐虫(ネメルチア)達に喰われ、
その白い骨(カラベラ)すら細菌達の住処となり、
分解される栄光(グロリア)を!!

その栄光(グロリア)を
無人の荒野で月夜に踊る
命無き腐肉達は
知っているのだ。

◆◆





今回の詩は、比喩を多様に用いた
難解さがある為、
以下、[五つの詩]
簡単にですが解説していきます。

↓↓↓

1【捻じくれた子供達】
実は、この詩を一人称で語っているのは死体です。
死者が[死体となった者の視点]で
この世界の真理を語っている、という作品です。

2【嚢胞性壊死の奏でる音楽】
人がどんなに[健全な生]に執着しても、
人生とは、老いや、病や、摩耗によって
一方的に欠けていく(消耗していく)。
それは自然の摂理なので、
受け入れざるを得ないのだ。
その中に[神の愛]を見つけるしかないのだ。
という詩です。

3【愛という湿度に依存する故に乾いて死ぬ】
これは、ニザダイ(ムーンフィッシュ)という
魚の中に住む特殊なグラム陽性菌
Epulopiscium fishelsoniが、
ニザダイの外の世界を知らず、
ニザダイという安定した環境では繫栄しているが、
そんな安定は、ちょっとした事で失われ、
細菌(命)達は残酷な真実に放り出される・・
という事を語っている詩です。
そこから
[では、人生とは何だ?]
という問いが始まり、
狭い人間社会に閉じ込められ、
それでも自由を求め、
わかっていながらも残酷な世界で死んでいく
かつての社会主義者や、共和主義者達の
苦悩と照らし合わせながら
[我々は誰もが
傷口から血を流しながら死に向かっている]
[安定性などという幻想は
人生の中で当然の様にひっくり返される]
という真実を語ります。

4【我々は、爪や、髪や、悍ましい糞便や、死んだ犬(カゥン)を
全て荒野に投げ捨て、振り返らない】
これは、まさに先ほどの
[荒野(CAMPOSANTO)]の話です。
心臓病を抱えた者の
自分だけの[孤独な痛み]を描きながら、
どんなに[見ないフリ]をした所で、
人は最後はこの[痛み]に捕まり、
誰にも理解されることなく
孤独にそれを抱えて死んでいく・・
人間は皆、薄情で他人行儀で孤独だ・・
という[宿命]の様なものを歌っています。

5【我々は喪す事で、いつか楽園の門で出会う故に】
これは、海底のヒモムシという
紐形動物の事を歌った詩で、
船乗りは、最後は海に捨てられ、
海底で無数のヒモムシに貪り喰われながら
死んでいくので、
逆に、そういった[神の摂理]の中に
[救い]を見出していく事こそが
[信仰]であり、[救済]なのではないか?
というお話しです。

[五つの詩]全てにおいて、
やはり、ここでも
「墓の魚」のテーマである
[喪失の宿命]が語られています。

いかがでしたでしょうか?
本日は、私の
新作の詩を紹介いたしました。

という訳で、
そんな作品を日本で制作していく
私や、私のオーケストラ
墓場
と、博物誌
「墓の魚」
これからも
よろしくお願いいたします~。




【1000視聴突破ありがとうございます♪】
「墓の魚」のラテン詩と、
メメントモリ曲の融合した
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「死んだ珪藻とマキシロポーダのミサ」
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