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【インタビュー】より多くの人にサステナブルを意識をしてもらうために リユース業界のスタンダードつくりを目指す 株式会社メルカリの事例

脱炭素化社会の推進に向けて、企業はさまざまな取り組みを始めています。
しかし「何をどうすればいいのか」「他の企業はどんなことをしているのか」と考えあぐねている人は多い様子。

そこで今回から、先進的に脱炭素化社会に向けた取り組みを進めている企業様にスポットを当て、みなさまが参考にできる実践法をお聞きしていきます。第8回目は株式会社メルカリ様へのインタビューです。

迷ったり悩んでいる方々の参考になりますように。

【用語解説】カーボンニュートラルとは、発生した炭素(CO2が対象)排出量と除去量を差し引きゼロにする状態です。詳しくは過去の記事【秒速理解】脱炭素社会とは?なぜ目指すのか?達成の第一歩とは?で解説しています。

■インタビューした企業様
株式会社メルカリ 

■お話を伺った方々
株式会社メルカリ 経営戦略室 石川真弓様


創業7年でサステナビリティレポートの作成を開始

 

ーー貴社の事業内容について教えてください。

2013年より、フリマアプリ「メルカリ」を中核とした事業展開を行っています。月間のアクティブユーザー数は2300万人と、日本人のおよそ6人に1人が普段からサービスを活用してくださっています。現在米国でも事業を展開しています。

また弊社はフィンテック事業も展開しており、フリマで得た売上金をスマホ決済で利用できる「メルペイ」や、クレジットカード「メルカード」を発行するほか、アプリ内でビットコインの取引を行えるサービスなども提供しています。

(幅広く事業を展開している 画像提供:株式会社メルカリ)

 

ーー事業に合わせて、サステナブル活動も拡大しているそうですね。創業から7年目にはサステナビリティレポートの作成を開始。他社と比較すると早いタイミングでの着手だと感じます。

創業時は事業の成長に注力していたため、サステナビリティ領域の活動まで手が及んでいなかったのが実情です。

また、「不要になったものを必要な人に譲り、再び大切に使ってもらう」ことが、環境課題解決に繋がるサステナブルな行動になるいう認識もあり弊社の事業が環境にもたらすポジティブな影響を定量化できないものかと当時から関心があったのは事実です。

このような中で弊社が2018年に東証マザーズ市場に上場し、社内で「ESGプロジェクト」が立ち上がり、2020年からサステナビリティレポートの作成を開始しました。

(同社がこの10年で実現してきたこと 画像提供:株式会社メルカリ) 


ーー貴社のレポートは、年々アップデートされている印象を受けます。

2019年にマテリアリティを特定し、2020年に初めてサステナビリティレポートを公開しました。

その後2021年には初めて、Scope 1(直接排出量)、Scope 2(間接排出量)、Scope3と削減に向けた目標値の開示を行いました。

昨年に上場市場区分を、東証プライム市場に変更したことで、より高度な情報開示を求められるようになりました。GHG排出量のネガティブ・ポジティブ両方のインパクトを算出し、数値の公開をすることにも挑戦しています。

(ポジティブインパクト(温室効果ガスの削減貢献量) 画像提供:株式会社メルカリ)
(ネガティブインパクト(環境負荷量) 画像提供:株式会社メルカリ)

  

ーーレポート内容に対する周囲の反応はいかがですか。

投資家からは、ポジティブインパクトもネガティブインパクトも双方の数値をだしたことで評価の声を頂きました。GHG排出量に対するポジティブな影響(削減貢献量)を数値化したことで、「評価がしやすい」というコメントもいただきましたね。

また、連携する自治体や省庁の方も興味深くデータを見てくださっている印象です。 

mercari R4D×東京大学のタッグが削減貢献量の算出ロジックをアップデート

ーー算出していく上で、課題に感じた点はありますか。

フリマアプリという事業の特性上、取扱商品が多岐にわたるので、製品の種類ごとに削減貢献量の算出のロジックを細かく調整する必要がありました。

例えば、電化製品は、メーカーや製品の種類によって製造時に発生するGHGがそれぞれ異なりますし、製品を利用した際に排出するGHG量がどの程度なのかを考慮する必要があります。また、ハンドメイドのアイテムやトレーディングカードなどのように、生産時も利用時もGHGの排出量が比較的少ないアイテムも存在します。つまり、一律のロジックを全てのアイテムに適用することができないのです。

今後も算出対象カテゴリーを拡大していきたいと考えていますが、拡大するたびに、カテゴリーに応じてロジックを考え直していく必要があることを課題に感じています。

(株式会社メルカリ 経営戦略室 石川真弓氏)

 ーー多数の品物、かつリユース品を取り扱っているからこそのご苦労ですね。アイテムごとのロジック設定というと、難易度が上がるように感じます。

リユース業界で、GHG排出量の削減効果を定量化していくというのは前例がない取り組みでしたので、難しいことだったと思います。2022年からはメルカリの研究開発組織「mercari R4D」と、東京大学のインクルーシブ工学連携研究機構が連携をして、排出量を計算するためのロジックの策定と算出を行いました。 

今年は配送にかかるGHG排出量や、ユーザーアンケートを行ったり、精緻にロジックをアップデートをかけています。

(2022年より「mercari R4D」×「RIISE」が始動 画像提供:株式会社メルカリ)

 

取り組み推進のキーポイントは”経営層の理解”と組織戦略 


ーーカーボンニュートラルにまつわる取り組みをどのように推進すべきか悩んでいる企業も多くいらっしゃいます。まずどんなことから始めるのが望ましいのでしょうか。

全社的な取り組みとなりますので、サステナビリティに対して、いち企業としてどんなスタンスを取っていくべきか認識の統一が必要だと感じます。ですので、まずは経営層と認識を合わせることが重要ではないでしょうか。

弊社は幸いなことに、経営層がサステナビリティ領域に高い関心を持っており、スムーズに取り組みが始まりました。 

環境問題や、サステナビリティレポートの重要性に対する認識がまだそこまで高くない企業さんの場合は、まずは専門家の方を招いた勉強会を催したり、その情報を元にした議論の機会を持ったりして、認識合わせをし、合意形成をするとよいのではないでしょうか。 

ーー社内で地道にインプットを繰り返し、組織を強固にしていくことが大切ですね。

そうですね。さらに、サステナビリティに取り組むチームを社内組織のどのポジションに置くか、ということがキーポイントになると感じます。弊社ではサステナビリティチームが経営戦略チームに統合され、マテリアリティと事業戦略を紐づけたロードマップを策定していったことで、全社の取り組みのスピード感がアップしたという実感があります。

(メルカリ社のオフィス 画像提供:株式会社メルカリ)

 ーー社内のメンバーの皆様のサステナビリティに対する意識はどのように変化していますか。

取り組みが始まったばかりの頃はサステナビリティやESGに関心の高いメンバーは限定的でした。そこから数年をかけて、社内で実施するサステナビリティに関する説明会などを通して、情報のアウトプット量を増やしてきたことで、だんだんと社内でサステナビリティやESGの重要性について、理解を得られている実感があります。

現在は、レポートを作成する際にも、IRチームなど別のチームの協力を仰ぎ、段々と連携体制が整ってきました。

ーーカーボンニュートラルに関して、今後、貴社が描いているビジョンがあれば教えてください。 

メルカリの事業が環境にもたらすポジティブインパクトの算出を進めていきたいと考えています。ポジティブな影響をより多くのお客様に知っていただくことで、メルカリの利用がサステナブルな活動であるという意識を持っていただけたら嬉しく思います。 




メルカリの皆様、ありがとうございました!



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最後までお読みいただきありがとうございます。

取扱商品の非常に多いリユース業界においては、サステナブルな取り組みの定量化への道は決して平坦ではないようでした。かつてない挑戦にもかかわらず、わずか数年で高度なレポートを作り上げた背景には、リユース事業そのもののサステナブル性を伝えたいという強い熱意があるように感じました。

メルカリ様の取り組みの事例を通して、皆様の活動のヒントが見つかることを祈っています。

それではまた次回、お会いしましょう。

 

 

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