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「使える手=器用な手」を目指した作業療法プラン

器用さとは
要素的な運動が次々と協調して行われ、余分な筋肉が使われず、目的に向かって適切な時間に、適切な筋肉がちょうど適切な力を出して動くような運動のこと。
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA82539296

久保田競(京都大学名誉教授)

作業療法士として、臨床をしていると
「手が思うように動いてほしい」
「手が不器用で・・・」
など手に関わる悩みを聞く機会は少なくありません。

悩みを打ち明けられた時、「ひとまず○○で様子をみましょう」など曖昧な返事しかできなかった私がいます。


まずは、「器用さ」とはどんな状態を指すのか?専門用語を使わず、分かりやすく説明をしてみます。

器用さに必要な3つの要素
①力の配分:私たちのカラダには、筋肉や関節に感じることができる機械受容器というものがあります。これは、筋肉や関節の力や位置を感じることができる感覚器です。
力の配分とは、この機械受容器を使って、どの筋肉をどれだけ使うかを判断することです。例えば、ボールをキャッチする時には、手の筋肉をちょうど適切な力で使い、ボールをしっかり掴むことができます。

②予測した動き:私たちの脳の前頭前野という部分は、動きを予測したり修正する役割を担っています。
予測した動きとは、どのような動きをするのかをあらかじめ想像することです。例えば、ボールをキャッチする時には、目でボールの動きを予測して、適切なタイミングで手を伸ばすことができます。

③順序:順序とは、動作を適切な順番で行うことです。例えば、手を伸ばしてボールをキャッチする場合、まず手を伸ばし、そこから手を閉じてボールを掴みます。このように遂行機能という部分が、動作の順序をコントロールしています。
手の動きやカラダの動きを正しい順番で行うことで、スムーズな動作ができるようになります。

つまり器用さとは、
①力の配分②予測した動き③順序をうまく組み合わせることで、細かな動きをスムーズに行う能力のことです。
ボールをキャッチする時には、手の筋肉をちょうど適切な力で使い、予測した動きをして、正しい順番で動作を行うことをいいます。

いかがでしょうか?
患者(利用者)さんにも分かりやすく、説明ができたのではないでしょうか?


器用さを評価する


ここからは、もう少し専門的な視点で、器用さに必要な運動機能を評価するための要素をご紹介します。

①正確なコントロール


患者さんが自分のカラダや筋肉を正確にコントロールできるかどうかを評価します。これには細かい動作や正確な手の動きを含みます

  1. 姿勢保持:姿勢を保持できるか。一瞬の寄りかかりやバランスを崩す。

  2. 腕のポジション:腕やカラダの位置の拙劣さ。過度に肘が挙がるなど

  3. 操作性:手の中での物の操作。持ち替える・1枚だけ取り出すなど

  4. 校正:力の調節。動きの速度。消しゴムで消す紙を破っていまうなど

②手足の協調


手と足の動きがスムーズに協調して行えるかどうかを評価します。

  1. 移動:立位・歩行能力。独歩可能か?方向転換がスムーズか?

  2. リーチ:手を伸ばしたり物を置くときに体幹や腕を動かす時に努力が増大

  3. グリップ:物と関わる時の手の動き。掴み損ねる・蓋を開けるが滑るなど

③反応時間


反応時間を評価します。外部刺激に対して適切な反応を即座に行えるかを示す指標

  1. 覚醒度:刺激に対して反応できる状態にあるか

  2. ペース:速度やテンポ。遅い・むらがある・速い

  3. 問題解決:修正能力。枠から外れた時に、正そうと修正できるか

これらの要素を総合的に評価することにより、患者さんの運動機能の現状を評価し、リハビリテーションプランを立てることが容易になります。


その他、
〇注意力(課題から気が逸れる)
〇計画を保持する(目的がズレる)
〇道具を正しく選択できる(失行?)
〇行為の取り掛かりへのためらい(取り掛かりが遅い)
などの認知機能面などを組み合わせて総合的な評価を行うと、より具体的なアプローチができるかもしれません。


今回は、「使える手」を目標にしたとき、いかに納得して満足いただける回答ができるだろうか?といった日々の臨床思考過程を中心にお伝えしました。
日々の臨床に一つでも参考になれば嬉しいです。

一緒に頑張りましょう。
私も頑張ります。

作業療法士 木股




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