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卯月短歌 20首vol.10

1.センバツの 舞台に雪が ひらひらと
白い息吐き 駆け抜けファイト

2.赤ちゃんの 握った拳を こじ開けて
酸っぱいような 匂いに痺れる

3.春の陽が 床の埃を 反射して
いつもよりぎゅっと 雑巾絞る

4.社殿から 漏れる光が 石畳に
ユラユラ反射 明け方の雨

5.君の元に 届けこの気持ち 音もなく
吸い込まれる この雨のように

6.祈りとは 絶望と手繋ぎ 生まれ出る
なすすべない時 声にもならず

7.生まれ来る時も死ぬ時も 皆手ぶら
なのに人は何故 多くを欲する

8.不幸さえ エンタメ化して 消費する
そのスピードに 疑問を抱く

9.花はもう 楽屋で待ち兼ぬ 雨の後
一斉に開く ショーが始まる

10.ビニール傘 憎いし少し 敗北感
ちゃんと予報 見てない後悔

11.東から 入る日差しが 強くなり
桜咲くまで 秒読みの朝

12.白黒を はっきりさせず 置いておく
それも一つの 処世術なり

13.うららかな 春の日差しに 解(ほど)けゆく
やり場ない怒り 閉ざした心

14.おばんざい 料理するのは 君に居る
幼き君の やり直しだよ

15.パステルの パーカと白い スニーカー
光合成し 背伸びしてみる

16.お花見の レジャーシートを 畳む時
この後どうする? を待つ時間よ

17.洗面所 顔を洗って よく見ると
老けた女が こちらを睨む

18.紫の 寝巻きからのぞく 枯れ枝の
ような鎖骨の 母は萎(しお)れて

19.どす黒く 花びらめくれた 薔薇見つめ
息絶え寸前 狂おしい美を

20.明け方に 薄ぼんやりと ベッドにて
ひんやりとした 君の足絡む

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