久しぶりにばら寿司を作った
実際に作ったのは昨日で節分の一日前ということになるが、何しろスーパーに行ったら
「もうすぐ節分やで!寿司作らなあかんで!」の圧が強すぎてそれにまんまと引っかかったというのが実情だ。
大体恵方巻きなんてものは、大阪の海苔問屋が仕掛けたブームだったそうだが、これが2月というまぁ、商売には向いていない季節だから当たったのかもしれない。
いや、本当は世の中のシュフと呼ばれる人達は毎日の献立決めに飽き飽きしていて、土用の鰻だの、クリスマスのチキンだの、節分の恵方巻きなど何も考えずに、料理しない日を堂々と作れる壮大な言い訳を探しているやもしれぬ。
話が逸れた。
で、私が作ったのはいわゆるちらし寿司だ。
関西では「ばら寿司」と呼ぶ。
ちらし寿司と聞いて酢飯の上にマグロやサーモンなどがズラーっと並んでいるのを思い浮かべる人はそれは江戸前ちらしと言うらしい。
(ググった)
私のはそういう豪華版ではなく、野菜がメインの五目ちらし寿司だ。
ごぼうをささがきにして、酢水にさらし、その間にレンコンをサッと茹でて灰汁を抜く。砂糖、塩、酢に漬け込んだ酢れんこんを作る。
先程のごぼうとにんじん、タケノコ、椎茸を出汁に少量の砂糖、みりん、酒、醤油で煮汁がなくなるまで煮る。本当は干し椎茸を使うのが望ましいが、先週夫と行き違いがあり、我が家はただ今椎茸が大量に冷蔵庫にある。だから生椎茸でよしとする。
ひとつまみの塩を入れた熱湯で絹さやを茹でて、冷めてから細かく刻む。緑ついでに大葉も何枚か刻む。
そろそろ白いご飯を炊く。昆布を一欠片入れて水は普段より少なめの方が寿司には向いている。ご飯が炊けて十分蒸らせてから、桶にご飯を移し、寿司酢をかけて切るように混ぜる。
寿司酢を考えた人は割と天才かもしれないと思う。ばっちり味が決まる。
ああ、錦糸卵も作らないといけない。なんて工程が多いのだろう、ちらし寿司ならぬイラチ寿司だ。(イラチは関西弁でせっかちの意味)。
この錦糸卵といかいう代物。日本では誰もが当たり前に作っているが、私が学生の頃アメリカのホームステイ先で披露したら、
「You are an artist!!」(芸術!)と褒め称えられた。日本人の半分くらいが芸術家と言う計算になる。
ええ感じで酢飯が冷えて来たら具材に加えて、ちりめんじゃこ、胡麻、紅しょうがも入れて混ぜる。
うん。
良い色合い。
パラパラと錦糸卵を散らして出来上がりだ。
しょっちゅう作れ!言われたら断固断る所存だが、自分から作ろうと思い、作る分にはなかなか楽しいちらし寿司作りであった。
また、ちらし寿司には何やら楽しい思い出が私には紐づいている。
まだ子どもであった頃、学校で良い成績が取れたら、弟たちが野球のレギュラーになったら、絵が入賞したら、と言った日常的に起こる小さなお祝い事に母がよくちらし寿司でお祝いしてくれたのだ。
だからちらし寿司を作る時はそのような小さな幸せの思い出達が私の頭の中でドーパミンを発生させるのかもしれない。
まあ、人間の記憶などあやふやなものなので適当に美化されて上書き保存されている可能性も大いにあるがそれはそれでよいではないか。
帰宅した夫に食べさせると美味い、美味いとおかわりしていた。
よかった。
夫の母、もう他界した姑は仕事人間でこのような手のかかる料理はしたことがないらしい。
だからちらし寿司を見ても、食べても、子どもの頃の記憶や幸せ感を感じる事はないのだそうだ。
哀れな夫よ。
まあ、またこれからも何か少し良いことがあればちらし寿司で私がお祝いしてあげよう。
そんな事をふと思った節分前夜。
外の風はまだまだ真冬のそれで二日後に春と呼ぶには冷た過ぎる。
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