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ストリートピアノは心を穏やかにしてくれるのです。

先日の出張からの帰り、現地の空港に早めに到着してお土産を物色した後でまだしばらく時間があったので、休憩所を探していると、待合スペースの中心にピアノが置いてあるのを見つけた。最近流行りの(?)ストリートピアノだ。

搭乗まであと30分くらいあることを確認した私は、荷物を近くにまとめておいて、ピアノの前に座ってポロポロと音を出し始めてみた。

最近は新しく音楽を聴くこともなくなってしまって、特に弾く曲も思いつかないから、頭に浮かんだコードを適当に連続させて雰囲気を出しながら弾いてみた。

それにも少し飽きてしまったので、昔覚えたクラシックの名曲の中で、不意に思い立ってドビュッシーの「アラベスク」を弾き始めた。

研究室生活を始めてからピアノを弾く時間がどんどん少なくなり、1人暮らしを始めてからはもっとピアノから離れてしまっていたので、途中わからないところをごまかしたり、思い出しながら弾いてみた。

そんなことを考えながら静かに一曲弾き終わると、近くに座っていた若い女性が、小さくパチパチと拍手してくれた。

その待合スペースには他にほとんど人がいなかったのだが、彼女もおそらく同じ搭乗を待ちつつ、一人私の演奏を横で聞いていてくれたらしかった。

プロの腕前ではないとしても、今この瞬間に少しでも「良かったな」と思う気持ちを人の心に与えられたかもしれないと思い、何だか穏やかな気持ちになった。

こういうささやかな出会いと環境を与えてくれるのがストリートピアノの醍醐味でもあるのだろう。

その後も、搭乗の時間までいくつか曲を弾いていたのだが、そろそろ行こうかと立ち上がって周りを見渡すと、彼女はいつの間にかいなくなっていた。

こういう穏やかな気持ちで過ごせる日々が続く世界であってほしい、との思いを抱きながら、空港を後にしたのだった。

ちょっと応援したいな、と思ってくださったそこのあなた。その気持ちを私に届けてくれませんか。応援メッセージを、コメントかサポートにぜひよろしくお願いします。 これからも、より精神的に豊かで幸福感のある社会の一助になれるように挑戦していきます。