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革屋と本屋のヨシナシゴト往復書簡010

皮革作りは料理に似ている/化学なのです/皮は最初真っ白/芸術の到達点のその先

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新井さん、こんにちは。
私たち、おサルさんチームだったのですね。
「猿男」は笑えますね。
こうしてカッコ付けて文字で起こすと映画のタイトルのようにも思えてきます。

「町で生きるための生命の芸術の必要性」
うん、長いけど言いたいことはわかります。
お金か、芸術かではなく、経済社会にあって、「生きる意味」を芸術に求めることは、例えば、義務教育であればどんな時に種を蒔くことができるのかな。
音楽、美術、国語、歴史、総合、体育ですかね。数学にも芸術を感じる人はいるかもしれないし。
むずかしいな。テストで測れるものでなし。

さてさて、皮革づくりが料理に似ているとは草加のタンナーさんの言葉です。
すごくすごく簡単にいうと、動物からもらった皮はタンパク質であり、
洗って毛を抜いてから少しの熱、水分、そこにアルカリ性のもの、酸性のものを足したりして、乾かして、腐らない、柔らかい革になるのですが、
タンパク質であるお肉、魚を必要なだけ熱を加えて調味料を数種類加えて
料理することと似ているそうです。
処方以外にちょっと味付けに、これを入れたらどうだろう、なんていうこともあるそうですし、そもそも食べ物もそうでしょうが、季節、産地、個体、下処理で違うので、その時々に併せ処方(=レシピ)も少しずつ変えていくのがプロの技術です。
そう、化学なのです。料理も化学で説明される場合がありますよね。

私は、今年いただいた国産レモンで初めてレモン酒をつくりました。
少し時間も手間はかかったけれど美味しくできまして。
酸味のある果汁も必要ですが、皮からリモネンという美味しい成分が出てくるのです。
あ、皮なんだと思いましたね。
別にオチもなく、今回はこの辺で。

河合さんのレモン酒

LEATHER TOWN SOKA Project team
河合 泉 2024 5/24

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河合さんへ

革といえば出来上がった固く強靭な革製品を見てきて、なんだか、その革の状態がそのまま動物の皮だと認識していた節があります。
牛の皮は牛の革製品みたいに丈夫。
漫画で原始人が腰に巻いている動物の毛皮は、動物から剥がしてそのまま革として使える、、、みたいな。
そんな訳なかったんですけどね。

だから初めて毛抜き処理をした鹿の皮をみたときに、プルプルに柔らかな質感の皮だったことに驚いてしまったんですよ。
そして、皮の肌が真っ白だったことも、意外なことでした。
『革』として見る革って、茶色や肌色をしていることが多いじゃないですか。
その茶色はタンニンや染料などで『鞣(なめ)し』てあるからの、茶色や肌色だったんですよね。
なんだか、皮は肌色をしているって思っていました。
わたしたちの肌に赤みがあるのは、血管に血が通っているから。
わたしたちも血が抜けてしまえば、イカの刺身のように真っ白なんですよね、、、!

皮は最初、真っ白です(伊藤産業にて)

その皮にタンナーさんが、熱やアルカリあるいは酸性の溶液を加えて、革に仕立てる。熱や溶液の調整には、加減やタイミングがあり、それが料理みたいなこと、、、なんですね!
タンナーさんの職人技ということか。
おくぶかい!

ところで芸術の話になりましたけれど、、、芸術って到達点のその先を求めるようなものですよね。『良し』とするところを、深く掘り下げる。
『良し』とするものが自分の中から確信として湧き上がってくるまで、創っては壊し、描いては消すを繰り返すような。
それはとても苦しいんですけれど(でも楽しい)、やがて『良し』が出来上がったときには、魂が震えるような感動がありますよね。
そのような、やがて芸術作業を芽吹かせる種(タネ)がどこにあるのかと言えば、『好きなこと』の中にあるのじゃないかと思います。好きなことじゃないと、作業を繰り返すことはできないし。
そうすると河合さんの言うように、義務教育の中に見つけることのできるひともいれば、その中には、ほんとうの『好き』は無いひともいますよね。
芸術まで昇華しないとしても、生きがいに繋がる『好き』を見つけることを、個人に委ね格差のあるままでいるのは、社会として貧しいいことではないだろうか。
こども食堂のお手伝いをしていると、そのあたりモヤモヤします。
義務教育の質を問うか、義務教育の外の例えば町の中に機会を作るか、、、?

話は戻りまして、真っ白な皮といえばですが、映画『The Cell』に、白い肌が出てきます。
この映画をわたしは大好きなのですが、同時にものすごく怖くて、相当頑張らないと見られません。
そしてとてつもなく美しい映画なんですよ。美しくて怖い。
ジェニファーロペスが素晴らしくて、衣装は石岡瑛子さんで、これもまた圧倒的な美術です。
河合さん怖いの大丈夫でしたら、見ていただきたいです。

河合さん、革のお仕事を間近で見ておられて、美しいな!とか、怖いな!とか、動物の命を感じる、とかいう場面ってありますか?

pelekasbook
新井由木子 2024 5/27

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河合泉
埼玉県草加にある皮革工場『河合産業株式会社』。
家族が営む同社を手伝う傍ら、草加の皮革「SOKA LEATHER」のPRを努めている。落語が好き。
新井由木子
埼玉県草加市の小さな書店ペレカスブックを営みながら、町の工場と力を合わせて『読書のおとも』を作る。酒が好き。落語も好き!!


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