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溢れ出る唐揚げ弁当

2024.09.02
ぺぎんの日記#155
「溢れ出る唐揚げ弁当」


ふと、昔食べた唐揚げ弁当のことを思い出した。

中学生の最初の方だったか、少し離れたところにある普段あまり行かないような小さな町の、お弁当を売っている店に行ったことがある。

たしか陸上の練習会に個人で参加した帰りだったはず。お父さんが運転する車に乗りながら、「1年前は潰れてなかったはずなんだよなぁ…」と言うお父さんの発言に少々の不安を抱いていたのを覚えている。

着いたのは小さい個人商店のような場所。中の様子はハッキリ覚えてはいないのだが、薄汚かったはずである。注文するとすぐに出てきた、ビニール袋に入った唐揚げ弁当2人分をブラブラ持って、車に戻る。

お父さんは「家に帰ってから食べるから、ぺぎん先食べな」とのことだったので、運転をするお父さんを横目に、ビニール袋から唐揚げ弁当を取り出す。

出てきたのは、透明なプラスチックケースが締まりきらないほどに入った、特大の唐揚げだった。ケースの左半分にはお米が敷き詰まっており、右半分には唐揚げがゴロゴロ入っている。唐揚げは理論上の最大数をはるかに超えているようで、米側にはみ出しながら、さらに輪ゴムで留められたプラスチックケースを押し上げている。

「すごっ!笑」
思わず声が出た。隣ではお父さんが「やってやったぜ」という顔でニヤニヤしている。

中学生ながらその光景には感動したことを覚えている。たしか値段も600円とか、かなり破格だった。唐揚げとお米というシンプルな内容とはいえ、普通に定食として食べれば倍近くの値段がしてもおかしくないくらいの量だった。

味も悪くなかった。揚げたての美味しい唐揚げ。お米はなんか半日ジャーの中にあったみたいな、表面がカサカサしてるような食感で、美味しくは無かったけど、それもまた個人商店クオリティっていう感じの風情があった。唐揚げがジューシーだから、むしろあれくらいの方が美味しく感じるのかも知れない。

あれ以降、あのお店には全然行っていないけれど、それでも記憶に残っているのだから、あの唐揚げ弁当は私にとって相当特別なのだろう。

記憶に残る食って、凄いと思う。日常的な「食」のうちの1つが、脳に「忘れてはいけない情報」として刻まれているのだから。

小さな町の、小さな店の、溢れ出る唐揚げ弁当。今はもう潰れちゃってるかな…。いや、まだ細々やってたりして。

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