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熱中症⑤ 〜治療 〜

熱中症かな?とおもったら

熱中症かな?とおもったらとにかく涼しいところに移して、体温を下げることがとても重要です。熱中症重症度分類の I  〜 III 度のどこに当たるかを考えながら対応します。III 度を疑えば(尿が出ない、意識が悪い)などあれば、即救急車を呼んでください。I 度、II 度と判断しても、改善傾向がなければ病院を受診します。

中枢温が41-42 ℃になると、1 - 8時間で、49 ℃を越えると5 分で不可逆的な組織障害が起こると言われています。体温をできるだけ早く下げた方が予後が良いことが解っています。

どこを冷やすか?どうやって冷やすか?

現場でとれる手段は限られていますが、熱放散の原則と血液が熱を運ぶことを思い出してください。

(1) Convention(伝導)
(2) Evaporation(蒸発→気化熱)
(3) Convection(対流)
(4) Radiation(輻射)

このうちで利用できるものを利用します。
簡単に利用できるのはやはり(1) (2) でしょう。

体の大きな血管が通っている場所を冷却します。

霧吹きがあれば吹きかけて気化熱も利用できるかもしれません。

空気の動きを作って上げることで、伝導、対流の効率はグッと上昇します。うちわ、扇子などで扇いで上げることも有効な手段だと思います。

病院では重症度に応じて様々な手段を用います。
冷たい水のプールに患者さんを入れて冷やすことも推奨されていますが、なかなかスペースと施設の問題で難しいのも現実です。体外循環による冷却も試みられてはいますが、前方視的な研究は今のところ報告がありません。

様々な臓器症状を起こしますので、集中治療も含め、臓器症状に対応することが必要になります。

【参考文献】
1. 日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン 2015
2. 環境省 夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン 2019
3. Hifumi T. et al,  J Intensive Care 2018; 6: 30
4. Ebstein Y, et al, N Eng J Med 2019; 380; 25: 2449-2459


小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン