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自殺と中学生

これまでに述べてきましたが、「飛び降りによる自殺」は死へのエネルギーも致死率も高く、確信的な自殺の手段としてよく用いられています。今年度から久しぶりに救命救急センターに勤務していますが、10代をはじめとして若い世代の飛び降りによる自殺がすごく多いなあと感じています。

少し古いデータですが、10代の自殺者の内、飛び降りを選択する人は他の年齢層に比べて多いようです。

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こどもの医療に関わる者として、なんとか止める方法はないかと思いながらも、救急医療の現場からはできることも少なく歯がゆい思いでいます。

今回中毒と自殺というテーマで少しお話ししてきましたが、まとめとして、一冊の小説をご紹介します。

『青空に飛ぶ』

この夏に何気なく手に取った一冊でした。

さわやかな北海道の風景の描写から始まりますが、ページをめくると中学生のいじめの現場が赤裸々に描かれ、読んでるだけで吐き気が出そうになります。じとっと汗をかくような描写が続き、遂に主人公の中学二年生が「大空に飛ぼう」とする瞬間が描かれます。

見事な心理描写のすえに、少年は元特攻隊員に出会います。
「死が決定づけられた」特攻隊員であったにもかかわらず、9回出撃して生きて帰ってきた実在の人物の取材に基づく心理描写が少年の心理描写と交互に描かれます。

「命の終わりは自分で決めるもんじゃないっしょ。」

と元特攻隊員は少年に語りかけます。

「生きるとはつまり、生きることの問いに正しく答える義務、生きることが各人に課す課題を果たす義務、時々刻々の養成を満たす義務を引き受けることに他ならない」

というフランクル(『夜と霧』より)の言葉を彷彿とさせますね。

この少年がどのような結論を選択したかはぜひ読んでいただければと思いますが、私自身は「特攻隊」という者に対する見方が少し変わりました。

知覧についてはまたどこかでお話ししたいと思いますが、記念館があって、特攻隊の方々の手紙がたくさん残されています。合唱曲にもなっていて、彼らの死への向き合い方、覚悟の決め方に大変感銘を受け、自分も頑張らなくては、と感じました。

しかし、この小説を読んで、それは一面的な理解だなあと感じざるを得ませんでした。そのような状況の中でどう生きるか、それさえも自分で選択できるんだなと感じています。

実際に入院しているお子さんや、まさに自殺を考えている子どもたちの前ではこの本が語りかける内容は「刺激が強すぎる」あるいは「届かない」かもしれません。しかし、そうなる前に、子どもたちにどんな語りかけをしていくのがいいのだろうと、いじめにあっている子どもたちの心境を疑似体験しながら、あらためて自分に問いかけるきっかけになりました。

ううう、喋ればもう少し上手に言える気がしますが、文章に書くって難しい、、、。

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小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン