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災害医療体制と災害時小児周産期リエゾン

災害時における小児周産期領域の課題

昨日、災害弱者の概念のご紹介とともに、東日本大震災での小児周産期に関する課題をご紹介しました。

さまざまな問題点は挙げられますが、災害時医療体制と小児周産期の医療体制の連携が図れず、それぞれが独立して動いた結果、連動がとれなくなったことが最もクリティカルな問題だったと考えられます。

「災害時小児周産期」リエゾンとは?

これらを踏まえて、双方を連動させ、よりよく機能させるための存在として、「災害時小児周産期リエゾン」が制度化されました。

下図に示すように、災害時小児周産期リエゾンには、小児ネットワーク、新生児ネットワーク、産科ネットワークと、災害医療を担うカウンターパートとを双方の価値が最大限発揮できるよう、連動させる役割を果たすことが期待されています。

災害時小児周産期リエゾンが任務は大きく分けると下図のようになりますが、災害の超急性期から慢性期にわたって、継続的に関わるため、災害のフェーズ毎になすべき仕事は移り変わりますので、実情に合わせてシームレスに各器官との連携を図っています。

訓練もしています!

毎年、内閣府が主導し、「大規模地震時医療搬送訓練」として、行政、DMAT、災害拠点病院、自衛隊などが連動し、実災害が起こった想定で実動訓練をしています。今年は首都直下地震を想定した訓練の予定です。

私は例年、小児周産期部門の訓練企画担当としてDMATや関係機関ときちんと連携を取らないと解決できないようなタスクを盛り込んだ訓練を、各県の災害医療担当者、コアになっている小児周産期領域の先生方と計画しています。

災害弱者といわれてる小児・周産期領域の患者さんたちにしっかり光を当てて、訓練を通して問題点を挙げてひとつずつ各県の実情に合わせてつぶしていく地道な作業ですが、机上の空論にしないためにとても大切な機会です。

まだまだ走り出したばかりの制度ですが、すこしずつ改善を加えながら、よりよい医療を提供できるよう日々改善を積み重ねています。

【参考文献】
災害時小児周産期リエゾン養成研修資料


小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン