トマトは お好き？
一番好きな野菜をあげるとすれば、トマトだろうか。小さい頃から好きだったけど、健康維持や美容、ダイエットにも良いと聞くと、ありがたみすら感じる。
一年中出回っているトマト、やはり夏場 旬になると美味しくなり、お値段もお安くなるのが嬉しい。ひとくち大に切って、刻んだシソを加え ごま油と醤油であえただけのものが好きで、よく作る。
故 向田邦子さんが、家を訪れた編集者に「とりあえずどうぞ」と出した料理をまねた。
スライスしたモッツァレラチーズとトマト。
オリーブオイル、レモン汁、バジルの粉をかけて。
調理時間１分、これも簡単 切るだけ
トマトというと思い出すのが、妊娠中。つわりがひどかった。歯ブラシをくわえれば、「おえっ」、ご飯の炊ける匂いや、お風呂の湯気もダメ。
食べようとすると吐き気がするし、お腹がすいてもムカムカ。どうにもならない。そんなしんどい つわりの時でも大丈夫だったのが冷蔵庫から出したばかりのトマトであった。
冷たいものなら臭いがしなくて食べられるのではと、コンビニおにぎりを買って冷蔵庫で冷やしたら食べれた。それから同じく冷やしたサンドイッチも。
そんな食べ物で妊娠初期を乗り越えていたのだが、なんだかんだでトマトに一番お世話になったような気がする。
さらにさかのぼると、小学校の夏休み。
ラジオ体操から帰った後の朝ごはん。
母が前日の冷やご飯で焼きおにぎりを作ってくれるのだが、これが美味しくないのだ。今のわたしなら、もっと美味しく作れる。
けれども食卓には美味しいものがあった。それは『冷やしトマト』。スライスして塩をかけただけなのに、ひんやりしてて塩味が効いてて実に美味しかった。
＊ ＊ ＊
ラジオ体操の会場の小学校に行く道中、昔は田んぼがあって、水をひくための長いチューブがあぜを走っていた。
生き物のように勢いよくチューブの中を流れる水の動きが面白くて踏んだり、チューブの先から田んぼに注がれる冷たい水に手をあててみたり、田んぼの中のオタマジャクシを眺めたり。ラジオ体操のあと 少しの時間、友達と遊ぶのだった。
セミの大合唱を聞きながらの帰り道、大きな木の幹にはカナブンやカミキリムシ。道端には、大きなヒマワリ。誰かの家の庭先には繋がれた犬が寝そべってて。おっかなびっくり近寄ると突然吠えだし 慌てて逃げ出す…。
そうなふうにして帰宅後の朝ごはん。早朝とはいえ蒸し暑く 食欲はわかず、一番美味しいのは冷たいトマト。。
なんのことはない。
これでは、つわりの時と同じではないか。
昔のトマトは、えぐみがあったというか、
もっと青臭い野菜だった気がする。
今スーパーに並んでるトマトはとても食べやすく色も鮮やか。なかにはフルーツトマトなどという甘い品種のものもある。美味しい。
美味しいのだけど、小学生の夏、ラジオ体操から帰って食べたあのトマトの美味しさには どうやっても かなわないのだ。