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MELODY&NUTS #6 IMPERIAL

ディーはこの街で人気のDJだ
どこのCLUBに行っても顔がきく
ヘッズ達から言わせれば
ヤバすぎるスキルを持ってるらしい

HIGHをタダで渡す代わりに
俺とナッツのビジネスに
協力してくれている
ウィンウィンな関係だ

HEAVENは街でも人気のCLUBで
週末は人数制限で入れないくらいに
盛り上がる箱だ
例外なく今夜も長蛇の列が出来ていた

一難去ってまた一難
並んで入ったら約束に間に合わない

『こっちこっちー』

ディーが親指を立てて呼んでいる

ディーは今夜
HEAVENで仕事があるらしく
エントランスを軽くかわして入って行った
ディーに続いて俺達も
エントランスを抜けた

約束の5分前
HIGHとディーのおかげで
取引には間に合いそうだ

熱気が充満しているフロアを横目に
俺とナッツは
VIP専用のエレベーターに
乗り込んだ

真っ赤な壁にもたれかかり
緊張と興奮を抑え込むために
深呼吸を二度した
ナッツはエントランスで貰った
シャンパンを一気に飲み干し
竜の如く鼻息をふーーんと吐いた
そこにチワワの面影はなかった

バブルの生き残りの様な
ギラギラした扉が開き
奥にいくつかの部屋が見えた

『インペリアルへようこそ』
深々と頭を下げた
ボーイに出迎えられた

『カイザーはどこだ』
ナッツは空になったシャンパングラスを
ボーイに渡し尋ねた

『こちらへどうぞ』と
一つの部屋に案内され
扉をノックする

コンコンコン

『時間通りだな
 入ってくれ』
扉の向こうから
太い声がわずかに聞こえた

扉を開け部屋に入ると
一面だけがガラス張りの
特殊な部屋に
酒と女と何かが混ざった
複雑な臭いが充満していた

明らかに仕立ての良いスーツとは
ミスマッチな仮面を被った男が
スッと立ち上がり
ジェラルミンケースを机の上に乗せ
こう言った
『ナッツ金は用意できたのか?』

リーから自らを担保に借りた100万円を
カイザーと思しき男に渡すナッツ
俺はジェラルミンケースの中身を確認した

『メロ問題ないか?』
『ナッツ問題ないよ』

取引は滞りなく完了したが
カイザーは最後に俺たちにこう言った

『売るのは構わない
 ただし
 絶対に使うな
 ここに来たくないならな』

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