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キリシタン史跡巡りisサバイバル(駒込)


はじめまして駒込と言います。普段は観劇オタクですが、今回は「キリシタン史跡巡り」についてお話します。自分はカトリック信者ではなく、歴史に対する興味で年に1回はキリシタンツアーを決行しています。計140ヶ所以上訪問しました。

キリシタンこわくない!こわくないよ!

キリシタン、と言えば「迫害にも屈さず信仰を守り続けてきた人たち」「殉教者」みたいなイメージが一般的でしょうか。最近だと映画『沈黙』とか宝塚歌劇団花組の『MESSIAH−異聞・天草四郎−』とかやってましたね。

史実にしても創作物にしても何となく悲しいイメージが付きまといますが、私は小学生の頃にキリシタンの同人ギャグ漫画(?)を読んでから、彼らの近寄りがたいイメージが変わったように思います。今でも名を残す信徒や宣教師たちは、やっぱり色んな意味で強キャラですが……。
歴史が好きで人物伝マンガを読み耽っていた小学生時代からすくすくと歴オタに育ち、大学では日本史学専攻に。ですが、エンタメと歴史研究は異なるもので教授から「本だけ読んで満足すな!実物を見ろ!歴史学はフィールドワーク必須!」と指導され、現地をくり返し訪問するようになりました。間違いねえ。研究対象の解像度が跳ね上がる。


キリシタン信仰ってなんなの

私はキリシタンを民間信仰の一種と捉えています。宣教師たちはカトリックの教えを日本に持ち込みましたが、彼らが国外に追放されて以来、潜伏キリシタンの信仰は現地の神仏や風習と融合して独自に発展していきます。殉教者ばかり注目されがちな一方、こういった信仰の変化の過程も面白いですよ。(禁教令が撤回された後に本来のカトリック信徒になった方も多いです。)


キリシタン史跡ってどんなんなの

最近「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に登録されましたねはぴはぴ~~
布教・迫害・潜伏の経緯はざっくりここで読めます。

キリシタン史跡は日本全国にありますが、その中でも北部九州に250箇所以上集中しています。ちなみにマカオとかマニラとか海外にもあります。

キリシタン信徒は迫害を逃れるために、都市部からできるだけ離れた郊外や離島に散りぢりになって生活していたので現代においても史跡への交通アクセスは非常~~~~に悪いです。基本的にレンタカー必須です。その困難さが燃えるんですが。
教会や資料館に行くのはまだ楽ですが、段々とハードルが上がってくると

・何もない住宅地を彷徨う
・真っ暗な山道を進む
・漁師に船を出してもらう
・崖を登る
・断崖絶壁の洞窟に入る
・無人島に泊まる
・マカオの路地裏をさまよう

みたいな感じになってきて楽しい♡(?)キリシタン史跡巡りisサバイバル

b_洞窟

そのハードさと認知度の低さ故に、郊外離島はほとんど史跡めあての観光客がいません。釣り客はぼちぼちいるかな? だからこそ、キリシタンの宣教時代(16世紀半ば~)から風景がほぼ変わってないんですよね。400年前の彼らと同じ景色を見ている! 歴オタにとってこんな喜ばしいことがあるだろうか。いや無い。
史跡そのものに加え、清々しい海と山、静かな島々、安くて飯が美味くてコスパ高すぎな民宿、そういった周辺環境も含めて愛しています。

あくまで史跡は宗教的な空間なので、行政も大袈裟に行楽地化しようとはしてないように感じます。私はその素朴さが気に入っています。あと普通にたどり着けない。

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どの史跡に行けばいいの

こんな風に言うと「じゃあ行くの無理じゃん」てなりますが、気軽に行けるエリアから紹介していきます! それぞれに数多くの史跡がある中、特にオススメなものを選んでみました。

■ 長崎市内エリア(難易度★✰✰✰)

最もメジャーな都市部。路面電車が走っているため、レンタカー不要で移動できます。教会や資料館はもちろん、中華街や軍艦島、洋館、原爆資料館など観光地いっぱい!演劇に絡めると『母と暮せば』や『マリアの首』の舞台でもあります。

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①日本二十六聖人記念館
②大浦天主堂・浦上天主堂などの教会群
③サント・ドミンゴ教会跡資料館
④出島

逆にいうと、ここは最も迫害が厳しかった地域。潜伏時代の痕跡はほぼ残っておらず、現存する史跡は明治以降のものが中心です。潜伏時代の遺物は資料館で見よう!


■ 外海エリア(難易度★★✰✰)
そとめと読みます。長崎駅からレンタカーで約45分。美しいサンセットが有名です。遠藤周作の『沈黙』の舞台となったエリアで、遠藤周作文学館があります。「人間がこんなに哀しいのに、主よ、海があまりに碧いのです」と書かれた碑石が印象的。

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①カトリック黒崎教会
②ド・ロ神父記念館
③潜伏キリシタンの墓地群 ※私有地


■ 五島列島エリア(難易度★★★✰)
大小無数の島があり、フェリーか飛行機で行けます。現地でレンタカーを借りて巡礼します。激アツ史跡・激アツ教会だらけ、何度も訪れている場所です。

3_莠泌ウカ

①キリシタン洞窟(上五島)
……地元の漁師の船で行きます。海が深いエメラルド色。
②旧野首教会(野崎島)
……野生の鹿がうろつく無人島にあります。
③半泊教会(福江島)
……未舗装の山道を抜けた先の、人口7人の集落にある教会
④頭ヶ島天主堂(上五島)
……隣にある墓地にも注目


■ 平戸・生月エリア(難易度★★★★)
九州大陸の最西端にある大きな二つの島、それが平戸島・生月島です。連絡橋をレンタカーで渡って行けます。人口流出や過疎化によって信徒が減少していく中、独自の信仰儀礼が現在も受け継がれているエリアです。1両編成の松浦鉄道に揺られて、このエリアの近くまで行くのも乙です。シンプルに”遠い”ので難易度4です。

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①平戸ザビエル記念教会
②黒瀬の辻殉教地
③平戸市 生月町博物館(島の館)

特に③は彼らの信仰生活を生々しく感じることができます。


■ 島原・天草エリア(難易度★★★★)
天草四郎率いる「島原・天草の乱」の戦地となった原城は、一般的に最も知られているキリシタン史跡ではないでしょうか。冒頭に挙げた 花組MESSIAHや新感線SHIROHの聖地ですね!
といっても博多からは車で約3時間、長崎からも車で1時間半。アクセス悪すぎて難易度4です。そのぶん、原城跡から眺める海は圧巻です。

5_島原

①原城跡
②天草キリシタン館
……一揆側が掲げた陣中旗を所蔵し、年に数回実物を公開しています。
③有馬キリシタン遺産記念館
……原城跡から発掘された十字架や人骨(レプリカ)が見られます。

この他にもオススメのエリアは山程あるのですが、文字数上限に達してしまいました。現在はコロナでほとんどの史跡や資料館が閉鎖されているので、GWの史跡ツアーは断念しました。収束したら即刻行きたいですッ……無念

都会の喧騒に疲れた、おいしい空気を吸いたい、おいしい魚を食べたい……そんな人は是非、キリシタン史跡巡りましょう!
てか本当に過疎化が尋常じゃないので来て(懇願)心洗われるのは本当です(事実)


詳細情報

分かりやすい史跡紹介コンテンツはこちら!
■「旅する長崎学 キリシタン文化編」シリーズ

■ながさき旅ネット

■おらしょ こころ旅

※史跡や教会を訪問する際は、マナーを守りましょう
※教会は施錠されてなければ誰でも入場できます(ミサ中を除く)
※郊外離島は街灯が非常に少ないため日暮れ前に宿に到着しないとヤバいです。飲み屋も無いので、必ず朝夕食付プランにしましょう! 

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【今回の「偏愛」を語ってくれた人】 駒込 twitter

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