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KIMONO展:着物の魅力が詰まった奇跡の海外発展覧会

念願のケ・ブランリ美術館の『KIMONO』展に行ってきました。今この大股の着物女性ポスターを見ます。平日午後なので空いてると思ったのですが意外や意外結構な人がいました。

ねえさん喧嘩売ってるんかいな?的な攻めの姿勢です。地に足が吸い付いて胆力に力入れてます。しかも下の方にV&Aのロゴ入ってますよ。あの美術館のキューレーション?!


パリジャンにしか人気のないケ・ブランリ美術館

会場のケ・ブランリ美術館は別名シラク美術館でシラクさんの独特の異型への愛で溢れています。非西洋的な芸術を集め、人々に発信するという目的で2006年に建てられた経緯もあるので中はなかなか岡本太郎なのです。ポストモダンというかなんというか、正直なところパリにオスマン風やロココ調を求めてきたアジアの観光客にはあまり人気はありません。想像するにここはフランス人にとっては19世紀末の万博のような気持ちで来るのでしょうか?とりあえず建物はジャン・ヌーベルでかなりモダンで奇抜ですが内容はいつもインドアフリカアジアの非キリスト的なあたしみたいな人間には馴染み深い展示で溢れています。あと、ケ・ブランリのケというのはQuai でプラットフォームという意味もありますが川辺。つまり川辺のブランリー通りにある美術館という意味でなんともケっ。ですよね。とは言え一応国立美術館です。

脈々とつづくフランス美術界の日本愛

まずパリの博物館や美術館が日本のことをする。。。となるとかなり力を入れますので期待値高いですよね。印象派以降のジャポニズム愛は変わることがなく、いくらK-POPが流行ろうと、美術の世界のジャポニズム愛の深さはかわらない。(そろそろぐらついてきていますが、、歴史がある。。と思いたい) いわゆる永遠の片思い、永遠の誤解なのかもしれません。近年だと若冲展も国芳展やアジアのおばけ展で水木しげるもかなり力入れてたので『KIMONO』もテンション上げていきました。まぁ、京都市北区出身あたしも西陣織の機織りの音を子守唄のかわりに聞いてきた身として(ちょっとおおげさ)これはいかねばならぬのだ!ということでいざ。

博物館自体大きいのですが企画展会場はそこまで大きくない。でも、期待値マックスで『KIMONO』という実用にも芸術にも社会学にもなるテーマをどう料理するのか楽しみで行ったのですが、、

自由なKIMONO

私のような人間からすると、小さい頃はおばあちゃんは着物を着て普段の生活をし、母世代は洋装という過渡期の目撃者なので、今の晴れ着の場しかないKIMONOというのは最近なのです。

ひとこと、かなりポイントを絞って展示しておりましたね。見やすかった。と言うか目を楽しませてくれました。

デザインの奇抜なものがやはり多く(もちろん歴史のコーナーもあったのですが)混乱したのは確かです。

まぁ、感動的に肩透かし。でもこれは受けるわ!なんです。だからほぼジャパンエキスポ状態。洋装つまり西洋のデザインになれた人たちの目から見たCoolなKIMONO展というか、こういう視点もあったのか!という発見も多かったです。特に私達が知らない「輸出用の着物コーナー」の視点は輸出を進める私の仕事ではとても興味深いものでした。


Yumi Katsura 先生
いやはやいやはや

デザイナーだけに注目されがちですが、この産業に従事するすべての職人への敬意を♡


ちょっと厳しい言い方をすると着物を作るために、金糸から、織りから、染から、パーツ毎の職人から、パーツごとの販売から、クリーニング職人まで、ぜーーんぶ職人いる京都で一応育ってる私からするとこの展覧会は「デザイナー」に注目している結構一面的な展覧会ではないかと思いました。いや伝統博じゃないのですからこれでいいのです。伝統芸能は京都市でお願い致します。

ただ逆にこれだけ着物を着ることのない現代の日本社会において、掘り起こしてくれた事やこの奇跡に感謝でしょう。

DNAを残すために。。奇跡を起こすしかない気がいたします。

KIMONOとは私のような京都人からするとやはりひとつの産業なのです。日本酒が田んぼの土の健康状態から始まるように最後のデザイナーだけでのものではありません。このシステムがが前世紀の近代化で弱体化してきました。これは世界中の伝統産業に言えることで決して日本だけの問題ではありません。このコロナ後の社会OSのリセット、AIの飛躍で伝統産業はもっと変わるでしょう。でも少数でも違う形でDNAを残すことは必要だと思っています。問題は山積みで、私のような一鑑賞者は非力ですが、違う形で残せるなら残したい、、だからこのようなKIMONO展が開かれたのかもしれません。最後の叫びのような気もしました。是非とも機会があれば皆さんどうぞ足を運んでください。


幾何学モダン
ロリータ
最強の着物のお義姉さんたち。。


ケ・ブランリ ジャック・シラク美術館
住所:37 Quai Branly, 75007 Paris, France
電話番号:+33 1 56 61 70 00
開館時間:11:00〜19:00(木、金〜21:00)
休館日:月
料金:12€


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