通りすがり

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「満蜂-ミツバチ-」1話

「ああ、神の使い満蜂様。 どうか私の心も満たしてください」 雑踏の中そう叫ぶ男性が一人。 周りを歩く人達は彼を気にも留めていない。 ミツバチ。 ストレス社会が加速する現代。 不幸を取り除き、その脳内を快楽で満たしてくれるというそれは一部の人間からは信仰対象として崇められていた。 心を満たす神の使いという意味合いで「満蜂様」と。 満蜂様が、人間から搔き集めた膨大なエネルギーを使って、いつか世界を無に帰してくださる。 それが世界の理であり、新世界の始まりである。 ✽✽✽

    • 「月明かりの魔女に恋をした」3話

      「おかあさん……?」 私がそう呼びかけると、女性の肩がびくんと跳ねる。 「なんで、お母さんって……」 「お母さんでしょ、私の! わかるよ。だってその腕、私のせいだよね……」 「ひぃ!」 母らしき人物はそのまま恐怖におののき後退る。 「そうか、あのガキが変な入れ知恵をしたのね」 あのガキ……? 彼のことだろうか。 「お母さんなんて呼ばないでちょうだい。あなたのことなんて私は知らない。知らないんだから」 呪いを警戒しているのだろう。母は言葉でも、そして物理的にも

      • 「月明かりの魔女に恋をした」2話

        私はいつも一人だった。 物心がつく前から。 ずっと隔離されていたらしい。 誰とも会わず、牢屋で一人過ごすこと。当たり前すぎて、それが一般的な普通の家庭にとって異常だということさえわからなかった。 あの夜、彼に出会うまでは。 私はいわゆる忌み子というやつだ。どうしてなのかはわかっていない。 ただ、私のそばにいるだけで。みんな何かしら体の不調を訴え出す。 最初に異変が起きたのは、実の母だった。 私が生まれてすぐはもちろん母も私のことを愛してくれて。可愛がられて。 そうやっ

        • 「月明かりの魔女に恋をした」1話

          見惚れていた。 どれぐらいの時間見つめ合っていただろうか。時間を忘れるほど女の子と見つめ合ったのは初めてである。 こういうのを世間では一目惚れと呼ぶのだろうか。 雲間から差し込む月明かり。 それに照らされた彼女は淡く、しかしはっきりと発光していた。比喩表現ではなく文字通り。その綺麗な輝きに、僕の目は思わず吸い寄せられてしまっていた。 彼女がなぜ光っているのかわからない。いや、そもそも本当に光っているのだろうか。あの子が綺麗で、ついついそう見えるように脳が錯覚しているだけ

        「満蜂-ミツバチ-」1話

          設定メモ

          タイトルのとおりです。 いくつか思いついていた設定案の自分用メモです。 ・自分にとって嫌なことを否定し、それは全て夢だったことにできる力。 しかし、それはあるべきだった可能性を自ら拒むことになる。 そして否定した分、先の未来が固定される。 その結果生まれるのが予知夢。 そこで見た事象は否定できない。 あらゆる可能性を否定して狭まってしまった選択肢に、そこに向けたレールが敷かれてしまっているから。 力に無自覚なため、自分に都合の悪いことを否定し続け全てただの夢だったと思っ

          『満蜂-ミツバチ-』企画書

          キャッチコピー:他人の不幸は蜜の味 第1話ストーリー: 「はぁ、一歩遅かったか」 「こりゃあダメっすね」 ぺたんと路地裏の道端に座り込んだ男性が一人。 目の焦点は定まっておらず全身の力も抜けきっている。 それに近づいていく青年が二人。 「こちら八九寺。 現場には被害者1名。ハチの消息は不明。 申し訳ありません。間に合いませんでした」 ハチ駆除隊本部へと報告する。 「なかなか新入り増えませんねえ〜」 「不謹慎なこと言うな。 俺たちは運が良かっただけで大抵の人はこうなるんだよ

          『満蜂-ミツバチ-』企画書

          『死神投死信託』企画書

          キャッチコピー:あなたの命はいくらでしょう? 第1話ストーリー: 「先生、僕はずっとこのままなの?」 診察してくれている担当医、三ヶ西に尋ねた。 答えあぐねている彼はポケットの中から異国の物らしきコインを取り出した。 そしてコイントス。 「表?裏?」 僕の質問には答えなかった彼が、今度は僕に質問をしてきた。 「う、うら……」 長い沈黙に耐えかねて僕はそう答えた。 果たしてコインは裏側だった。 そのコインを先生は僕の手の中に押し付けながら言う。 「正解した君にはこれをプレゼ

          『死神投死信託』企画書

          『ボタンの胸の内』企画書

          キャッチコピー:あなたとドキドキ共有チュー 第1話のストーリー: ある日のこと。 伴陽斗は寝坊した。 寝坊したがために、吸血鬼の眷属になってしまった。 遅刻しないように急いでいた陽斗は、ベタにも曲がり角で女生徒とぶつかってしまう。 その相手は灰谷牡丹。 隣の席の女の子。特段意識したこともなかった相手である。それなのに、その時なぜか陽斗の鼓動は早くなっていた。 彼女の目を見ただけ、それだけなのに。 牡丹も頬赤らめて俯いてて…… あれ、こんなに可愛かったっけ? そんな陽斗を

          『ボタンの胸の内』企画書