『ボタンの胸の内』企画書

キャッチコピー:あなたとドキドキ共有チュー

あらすじ:隣の席の女の子、灰谷牡丹(はいや ぼたん)は影が薄く冴えないクラスメイト。
そう思っていた。
けれど彼女の目を見ただけ、それだけでこんなにもドキドキしてしまう。
あれ、こんなに可愛かったっけ?

実はシャイなだけの吸血鬼!?
そんな彼女の眷属になってしまった伴陽斗(ばん はると)

これはシャイな吸血鬼と、それに振り回される眷属の物語。



第1話のストーリー:
ある日のこと。
伴陽斗は寝坊した。
寝坊したがために、吸血鬼の眷属になってしまった。
遅刻しないように急いでいた陽斗は、ベタにも曲がり角で女生徒とぶつかってしまう。
その相手は灰谷牡丹。
隣の席の女の子。特段意識したこともなかった相手である。それなのに、その時なぜか陽斗の鼓動は早くなっていた。

彼女の目を見ただけ、それだけなのに。
牡丹も頬赤らめて俯いてて……
あれ、こんなに可愛かったっけ?

そんな陽斗を放課後に呼び出す牡丹。
牡丹とは隣の席だ。
用があるならすぐに話せるはず。
わざわざ放課後に……まさか告白!?とソワソワしつつその時を迎える。
「じ、実は私……"吸血鬼"なんです。
そして、ごめんなさい。
あなたは私の眷属になりました」

吸血鬼の眷属には、血を吸われたからなるのではない。
正しくは、噛まれた際の傷口から入った吸血鬼由来の細菌が、体内を侵食するためである。
吸血鬼は、人間の何倍も刺激に敏感である。
大蒜や太陽が苦手と言われるのはこのため。
あらゆる刺激は、人間の想像を絶するものとして吸血鬼の脳に伝わる。
人間と同程度の脳で、そんな高負荷にどうやって耐えているのか。
それはメモリを拡張しているから。
それが眷属を作るということ。
牡丹とぶつかった拍子に、牡丹の爪によって出来た切り傷。
ここから入り込んだ細菌が陽斗を蝕み、牡丹との間にネットワークが構築。
その結果、牡丹1人では処理しきれない負荷がかかった場合、その分は眷属である陽斗に分担される。
「要は、私がドキドキし過ぎたら、その分のドキドキがあなたに伝わるんです。
だから、今……
あなたがドキドキしているのは、私があなたを見てドキドキしている、から……
け、決してあなたが私のことを好きだとか可愛いと思ってるわけではありません……
ご安心ください。
あなたが私を見てドキドキしていることそれ自体が私が吸血鬼であること、及びあなたがその眷属であることの証明となります。
ご理解いただけましたか」

晴れて陽斗は吸血鬼の眷属となった。

これはシャイな吸血鬼と、それに振り回される眷属の物語。


第2話以降のストーリー:
授業中、牡丹をチラリと見る。
視線に気づく牡丹がドキドキすると……

いや、なんでそれだけで照れるんだよ。
こっちもドキドキするんだからやめろ。

心臓がもたないので目線を窓の外に逸らす。
太陽を一瞥。
カーテンを開閉していると胸のモヤモヤを感じる。
確かに太陽の刺激は吸血鬼にはきついようだ。
「こら。開けたり閉めたり何やってんだお前は」
カーテンを開け閉めして先生に怒られるその姿が、静かな教室には滑稽に映ったらしい。
クスクスと笑いが漏れた。
そして笑う牡丹、隣にしか聞こえないほどの小さな声で「ありがとう」と呟いた。
牡丹の顔は先程のように赤く熱ってはいない。
今のこのドキドキが彼女のものではないと実感し恥ずかしくなりそっぽを向く。
それを合図にするかのように教室も授業に戻ろうとしていた。

しかし、一瞬だけ。
チクチクした感覚が陽斗の胸を刺す。
ドキドキではなくチクチク。
これは、おそらく視線だ。
目が合うだけでドキドキするような牡丹だ。
他人から向けられる嫌悪の視線なんてストレス以外の何物でもないだろう。
眷属にならなかったら、隣の席なのに何も気付かないままだったのだろうか。

周りがなんとも思わない、空気みたいな存在の牡丹。
でも、牡丹からしたらみんなは空気じゃない。
この空間は牡丹にとって刺激だらけで。
陽斗も知らないうちにストレスを与えていたのだろうか。

だから、耳元に息を吹きかけてみた。
だだ肩の力を抜いてほしくて。
結果、牡丹は声が出ず口をぱくぱくさせる。
可愛いな、やっぱり。
そう思っていると、牡丹がキッと睨み出し……
だんだんと、陽斗の意識は深い闇に沈んでいった。

ハッと目を開けると保健室の天井だった。
どうやら牡丹の許容量を超えた刺激は、眷属である陽斗の脳さえも貫通したらしい。
そして耐えきれずショートした。
「あんなの自殺行為同然なんですから気を付けてください」
牡丹の目尻には光る雫が見えた。
牡丹の脳を保護するための眷属。
その眷属に保護機能はないらしい。

責任を感じてるのか。
それとも、心配してくれているのか。
この胸の痛みは……
聞いたら牡丹は答えてくれるだろうか。
わからない。
でも今は聞かないことにした。

気付くと牡丹はそばで眠っていた。
ずっと気を張っていて疲れたのだろう。
起こなさいように気を付けてそっと起き上がる。
周りを見渡したが先生は見当たらず帰宅の準備をしに教室に戻った。

教室には何人かの女生徒が残っていた。
「あの女」やら「一緒じゃない」やら。
ひそひそと話す彼女達からは、そんな言葉が聞き取れた。

そうか。お前たちか、あの視線は。
1人がこちらに近づいてくる。
「あの女、感じ悪いよねぇ」
気にせず帰る準備を進める陽斗の背中に彼女は続けて牡丹の悪態をついていた。 
それに耐えかねた陽斗は気付けば、その生徒を襲おうとしていた。

それは吸血衝動。
牡丹の悪態をつかれたことに、陽斗は自分でも抑えられない程ストレスを感じていた。
だから、それを処理しようと。眷属を作ろうと。
本能が彼に吸血行為を行おうとさせていた。

そして、それを止めたのは牡丹だった。
目に見えない速さで二人の間に立ち、受け止めるように。

そのまま女生徒達は怯えて去っていく。
自分が何をしようとしていたのか理解出来ず泣き崩れる陽斗に、牡丹は自身の首元を差し出して噛ませる。
高ストレス下で吸血衝動が起きるということは、逆に血自体に興奮を鎮める作用があるということだから。
「ごめん、ごめん……
でもさ、嫌だったんだよ。お前が悪く言われるの」

陽斗にはわかる。眷属だから。
陽斗だってわからなかった。眷属になるまで。

この世界は、吸血鬼にはあまりに辛い。
あらゆるものが刺激物で、そして自信を抑えられないくらいストレスになる。

でも、だから。だからこそ。
「友達作ろう」

メモリの拡張?……違うね。
わかってくれる人が欲しいから。
誰かに理解してもらいたいから。
だから、吸血鬼は眷属を作るんだ。

なら、眷属じゃなくてもいい。
友達でいい。
「楽しいも苦しいも友達なら一緒に分かち合えるんだから。たくさん作るぞ!友達!!!」
……恨むなら、俺を眷属にした自分を恨め。
この胸が痛まなくなる日まで、お前のそばにいてやる。

吸血鬼と眷属の友達作り計画の始まり始まり。

まずは悪態をついていた女生徒達の攻略。
このグループの中心人物は、実は密かに牡丹のことが大好きすぎて陽斗といるのに嫉妬していただけ。
そして吸血鬼(牡丹も陽斗も気付いていない)

#週刊少年マガジン原作大賞


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