『死神投死信託』企画書

キャッチコピー:あなたの命はいくらでしょう?

あらすじ:
いつも見る病室の窓からの景色。
四季の違いはあれど、それ以外は変わり映えのしない風景。
それが僕の日常。
僕の当たり前。
そんな毎日が僕の全てだと思っていた。
ある日、そんな僕を見かねてか担当医の三ヶ西(みがにし)は自分は死神であり僕の寿命を伸ばしてくれると言い出す。

仮想通貨が流通している現代。
死神界での仮想通貨は「人間の命」だった。

第1話ストーリー:
「先生、僕はずっとこのままなの?」
診察してくれている担当医、三ヶ西に尋ねた。
答えあぐねている彼はポケットの中から異国の物らしきコインを取り出した。
そしてコイントス。
「表?裏?」
僕の質問には答えなかった彼が、今度は僕に質問をしてきた。

「う、うら……」
長い沈黙に耐えかねて僕はそう答えた。
果たしてコインは裏側だった。
そのコインを先生は僕の手の中に押し付けながら言う。
「正解した君にはこれをプレゼントしよう。
そして、さっきの答えだが、君はこの先好きなことをして生きていけるよ」
「え?」
「それはどこのコインかわかるかい?」
そんなことより、と言いたかった。
だが間髪入れず彼が答えた。
「それはね、死神界の通貨なんだよ」
死神界?馬鹿げてる。
さっき彼が口にした言葉を信じたい僕にとっては、そんな冗談がひどく腹立たしかった。
その場を立ち去ろうとする僕の背中に彼はそのまま話を続けた。
「でも、死神界では他にも流通してる通貨がある。
それは人間の命さ。
いわゆる仮想通貨って表現をしたほうがいいのかな。
魂なんて実体としては存在しないからね。
つまり、今君が手にしてるそのコインは君の命に変換できるし、君の命もそのコインに替えられるってことさ」

人の命を刈り取る鎌を持っている。
創造上ではそう言われる死を司る神様も、要は自分のためにお金稼ぎしてるだけらしい。
また刈り取るだけじゃなくて与えることだってできるようだ。

「そして賭けに勝った君に、私は投資をしようと思っている。有り金全てを君の寿命に替えてあげよう」
患者がナーバスになっているから励ましている。
そのための方便にしか聞こえなかった。
「信じても信じなくてもいい。
でももうすぐ君は退院できる」
退院できる。
その言葉には心が踊った。
「そして、君には自分の命の価値を高めてほしい。
投資と言ったろう?
それは君の命という仮想通貨の価値が上がることを見込んでいるからさ。
だから退院した後、君は他の死神にも投資してもらえるような人間になってほしいんだ」
医者だと思っていた何かは、話し終えると僕の背中を押して部屋を追い出した。

そして、程なくして順当に迎えた退院当日。
先生はいなくなっていた。
病院内の誰に聞いても、そんな人は知らないと言われた。
最初から存在しなかったかのように消えていた。
全部夢だったとしても。
それでも人に誇れる生き方をしよう。
そう思い病院の敷地をあとにした。

第2話以降ストーリー:
退院後、無事復学する。
担任の先生からの「みんな仲良くするように」という言葉もあり、皆声をかけてくれたり挨拶してくれたりと優しかった。しかし、クラスで一人だけ会話したことのない生徒がいた。
その子は僕だけでなく誰とも話している様子はなく、いわゆるいじめられっ子だった。
入院生活続きで人間関係には疎かった僕は、死神の先生の言葉を思い出しその子をクラスの輪に入れるように促す。
その結果、いじめの対象は僕へと向けられてしまう。
どうしたらいいか途方に暮れていると行方をくらませていた三ヶ西先生が再び現れる。

元々いじめられていた子の命の価値は底値をつけていた。
しかし、いじめの対象が僕へと変更したことで一気に価値は一定水準まで戻ったそうだ。
そして驚くことに、いじめっ子の命の価値も上昇していると言われる。
人間の善悪による判断ではなく、死神から見て面白いかどうか。
要はエンターテイメントとして、いじめっ子は一部の死神から好まれているらしい。
その結果、投資先としての需要が高まり、いじめが続く限りはじわじわと上昇を続けるらしい。
「君は正義のヒーローじゃない。勘違いしないでくれ」
助けを乞う僕に対して彼はそう告げた。
僕を正しく導いてくれる存在だと思っていた。
けれど、三ヶ西先生は結局は金儲けにしか見てくれていない。
そう失望する僕の耳にはその後の彼の言葉は届かなかった。
「そうじゃなく君は君自身の価値を高めてくれ。
じゃないとあの人達に顔向けができない……」

あの人達とは主人公の両親である。
三ヶ西は元々主人公の両親を投資先として観察していた。
しかし、結果として彼らの命の価値を大暴落させてしまう。
命の価値が低い=寿命が近い、ため大暴落した彼らは死んでしまった。子供を残して。
死後、あの世(≒死神界)へと旅立った彼らに対する申し訳無さがあり会わないですむように、それ以来ずっと人間界で暮らしていた。
そこで偶然、彼らの子供である主人公のことを見つけ、そして彼の寿命が短いことも知る。
せめてもの償いとしてこの子の未来を明るいものにしたいと思い、有り金を全て主人公へと投資することにしたのだった。

そのことを主人公が知るのは更に先のこと。
三ヶ西が主人公の元に何度も訪れて助言を与えていたことが相場操縦として死神界で問題視される、その時だった。

#週刊少年マガジン原作大賞


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