リット
reply 第4話 「正体」
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リット

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鍵を差し込み、クルッと回す。
カチャリという音とともに玄関のドアが開いた。

素早く靴を脱ぐ。

わくわくしながらリビングのドアを開けると


そこにこぎつねの姿はなかった。



――あれ、?



一体どこに行ったんだろう。


置いておいたこぎつね用の御飯を確認する。

油揚げは、なし。
ちゃんと食べたみたいだ。

隣の部屋?

...いない。


じゃあ寝室に行ってみるか。

バッグを床に置き、コートを脱いで寝室に向かった。



その時





開かれていた寝室のドアが、突然音を立てて閉まった。




...。



嘘でしょ。何よ...今のは、




私以外の人がいるはずないのに


勝手に扉が閉まるなんて。



狐が出来るわけがない。

考えられるのは、泥棒...とか?

でも、玄関の鍵はちゃんと掛かっていたし...。




どういうこと...



寝室のドアノブに手を掛け、ゆっくりと回す。

勢い良くドアを開けた。









真っ暗な部屋。

急いで電気をつける。


パッと明かるくなった室内には、誰もいなかった。


こぎつねもいないし、あるのは見慣れた家具だけ。

そうだ、クローゼットは!?


開けて確かめるが、誰もいなかった。

ベッド下にも、いない。



...私の勘違い?

でも確かに、ここの扉が閉まったのに。


寝室を後にして他の部屋も見てみたけど、異常はなかった。


やっぱり、気のせいなのかな。

...それにしても、あのこぎつねは一体どこに?



そう考えながらリビングに戻ってきた。




そこで信じられないものを目撃する。




「...!!」




「...あ、やば...」




知らない男の子が窓から外に出て行こうとして、足を掛けていた。










あまりに驚きすぎて、言葉が出てこない。

ただ、ぼう然とその場に立ち尽くす。




彼は私に見つかった事であたふたしていたが
しばらくして、観念したかのように窓から離れた。



「...あの、」




その声にハッとする。



「あなた...、泥棒?」

「ち、違う!」
「えっと、お礼はまた今度するつもりで。」
「何も言わずに出て行こうとしたのは、確かに悪かったけど。」

「...ちょっと。何言ってるの。」
「お礼って、...誰なのよ!」

「お、落ち着いて。オレに見覚えない?」

「...ない。」

「オレ、きみが助けてくれた狐なんだ。」

「...は。」

「信じられないと思うけど...」


そう言って、罰が悪そうな顔をこちらに向ける。


「からかってるの。」
「狐が人間に化けた?都市伝説じゃあるまいし。」

「その逆!人間が狐に化けていたんだ。」


「...、」


意味不明。


「じゃあもう一度狐に化けてみなさいよ。」

「そうしたら信じてもらえるんだろうけど、...その。」
「簡単には化けられないんだ。」
「オレ、まだ半人前で。うまくコントロールできなくて。」



何よ、それ。

都合が良すぎる。



でも、言い訳にしては...かなりチープな作り話。


「じゃあ、どうしてあそこに倒れてたの。」


別の質問をすると、“えーっと”とモゴモゴ答える。


「どう話せばいいか...。」
「オレ、とある修行をしていて。ワープの術を試してみることにしたんだ。」
「それで、成功したんだけど...随分迷っちゃって。」
「やっとの思いで辿り着いたのが、この世界だったんだ。」
「そして、力尽きて倒れてたところを、君に拾ってもらったってわけ。」



「...この世界?」
「この世界って、ここ?」

「うん。」
「オレ、異世界の人間なんだ。」

「!何言って...。」
「...そんなの、信じられない。」


そういうと、彼は首を傾げる。


「え。会ったことないの?異世界の人に。」

「あるわけないじゃない!」

「へぇ。意外と閉鎖的なとこなんだな。それとも...見つけにくいだけか?」
「...まぁ、とにかく。」
「あのままだったらオレは危なかったと思う。」
「助けてくれて、本当にありがとう。」」



――...。





「...あなたは、」
「...異世界だなんて、信じられない。」
「ただ、...嘘をついているようにも、見えない。」

「全部本当だよ。」

そう言って微笑んだ。



「じゃあ、そろそろ」


彼は窓の方へ振り返る


「...、行くの。」

「いつまでも迷惑は掛けられないから。」

「別に迷惑じゃないけど、体調は大丈夫なの?」

「え?」

「いや、また倒れないかなって...」

「!迷惑じゃない?」

驚いてまた私の方へ振り返った。

「え。う...うん、まあ。」

「じゃあここに住まわせて欲しい!」

「...え。」

「実はまだ帰れる力は無いから、途方に暮れてたんだ。」
「お願い!しばらくの間でいいから!」

「ええ!?」

「掃除、洗濯、ほかの雑用もなんでもやる!」
「...その、料理だけは無理だけど。」

「そんな問題じゃ」

「それに、」

「?」

「ここが気に入ったんだ!」

「...」





昨日拾ったこぎつねの正体





...それは、別の世界から来た男の子?




信じられない。


...でも嘘をついているようには見えないから。






深く深呼吸をした。


自分でも、どうかしていると思う。





「わかった。」

「ほんと!?」

「うん。回復するまでよ。掃除も、ちゃんとしてもらうからね。」
「あと洗濯は各々で。」

「わかった!」


彼は勢いよくガッツポーズをして“ぃやったー!”と叫んだ。


「オレの名前は、クラリ。今日から改めてお世話になります!」
「沙利よ。よろしく。」



まさか、こんな一日になるなんて。


伸ばされた手をとり、固く握手する。



青天の霹靂


奇想天外


人生って、なにが起こるかわからない。







「そういえば、」

「なに」

「こぎつねの姿で暮らすの?それとも人間?」

「どっちがいい?」

「こぎつね。」

「わかった、人間にする。」

「...。」





◇正体◇End ...続く。

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お手軽な恋愛小説を作っています。 小説を元にゲームも作っています。