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ロゴストロン信号(その3)

執筆:ラボラトリオ研究員 鴨 奢摩他(かものしゃまた)

今回は、空中に飛んだロゴストロン信号が、如何にして人間に作用するのかについての考察を、最近の発表されたレポートを引用しながら展開していきたいと思います。

脳研究の世界では、磁界によって弱い電界を脳の中に発生させて脳の機能を調べたり、治療に応用する経頭蓋磁気刺激という方法が確立しています。

これには、8の字型の電磁石コイルを使います。

「ファラデーの電磁誘導の法則」によってコイルに電流が流れると磁界が発生しますが、コイルに流す電流を変化させると磁束も変化します。磁束の変化が起きると影響を受けた導体に電位差が生じて脳の中の神経細胞(神経細胞も導体)に電流が流れるという仕組みになっています。

画像2

より具体的には、TMSコイルに短時間に大きな電圧をかけ急速に電流を流し変動磁場を生み出して、変動磁場の影響を受けた脳にはコイルに流した電流とは逆向き(磁場の変化を打ち消す方向)に誘導電流(渦電流)を生じる。
『rTMS療法』の仕組み》より引用。

この8の字の形をした電磁石コイルの装置を用いて、脳を磁気で刺激することで、脳から電気信号が神経細胞を伝って体のどの部位を制御しているのかというように、体が動く仕組みを解明する研究がされており、リハビリへの応用が期待されています。参考までに、以下に研究事例のリンク先を貼っておきます。

夢ナビ大学教授がキミを学問の世界へナビゲート「脳を磁気で刺激して、体が動く仕組みを解明する」

また、ちょっと恐ろしい例ではありますが、外部からの脳情報操作により、「より気持ちよく」音楽を聴かせることが出来た実験結果の講演録が以下の記事の15頁、16頁に掲載されています。
(掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じるとのことなので、以下にリンク先のみ載せておきます)

SCATLINE Vol.108 September, 2019
https://www.scat.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/06/scat108_seminar_02.pdf

8 の字型コイルで脳の尾状核に瞬間的に異なる2種類の信号の磁気刺激をかけて、音楽を聞いて気持ちいいという脳活動が上がる方向と、その反対の疲れたという反応の2 つの方向に変化をコントロールできたということです。

音楽を聞いて、すごく気持ちよくて、お金を出したい、というような状態に持って行くことができたとも報告されています。

このように、磁気刺激により体の随意筋の動きを誘導するのみならず、感情さえもある程度コントロールできる可能性が示唆されています。

さらに、情報伝達という面では、磁気刺激により脳で直接、情報を受け取る実験も行われており、ある程度の成果が出ているようです。

ワシントン大学のストッコ、アンドレア等によって「20の質問」と言う実験が行われましたが、これは、脳波計(EEG)を使って1人の参加者(「回答者」)からの脳の信号活動を検出して、1マイル離れた場所にいる別の人物に、経頭蓋磁気刺激(TMS)用のコイルを頭に近づけて磁気でその人の脳に信号を伝えるという試みでした。

10人の参加者(5つの質問者と回答者のペア)で実施した結果、72%という確率できちんと情報が伝わっていたということです。これは磁気に誘導されて神経電流(電磁誘導による誘導電流)が発生することで情報が伝わっていると言えるかと思います。

図2

Stocco A、Prat CS、Losey DM、Cronin JA、Wu J、Abernethy JAなど (2015)心で20の質問をする:脳と脳のインターフェースを使用した人間による共同問題解決。PLoS ONE 10(9):e0137303。https://doi.org/10.1371/journal.pone.0137303 の図より引用。

この実験に関しての動画を含めた、より詳細な解説は以下のASCII.jpの2015年09月24日の記事に詳しいので興味のある方は、ご参照ください。

以上、見てきたように、磁気(磁場)によって、ある程度、脳内に信号をダイレクトに伝達させることができることがわかります。

前回の記事で電磁波とは電界と磁界が交互に発生しながら空間を伝わっていくいう説明をしましたが、ロゴストロン装置が発生している電磁波は、周波数帯が数10 kHz〜数100 kHzであり、その電磁波にはロゴストロン信号という情報がのっています。

この電磁波の磁界によりロゴストロン信号が脳に伝わっているかどうかは、まだ検証されていないため分かりませんが、先に紹介した実験例より電磁波の磁界成分によって信号が脳に到達している可能性は十分あるものと思われます。

さらに、以下に紹介するように、脳に到達した情報がどう処理されるのか、「ことば」を理解するメカニズムはどうなっているのかといった研究も脳磁界計測法(MEG)を用いて行われていますので、こういった計測が一般的になれば、近い将来、ロゴストロン信号の脳内での振る舞いが解明される日も来るかも知れません。

「こころを伝える脳情報通信に向けて- 脳活動から「わかり」を評価する」NICT NEWS
https://www.nict.go.jp/publication/NICT-News/0903/03.html

最後に、カリフォルニア工科大学と東京大学の国際共同研究チームによって行われた研究を紹介して記事を締めたいと思います。

「多くのヒトは地磁気に対する感受性を潜在意識下で未だに有している 」https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400111625.pdf

静磁場(直流磁界)とはいえ、人間が25〜65μT程度の地球上の地磁気を潜在意識下で感受しているとしたら、動物やヒトの磁気感受能力はかなり高いようです。

これも、これからの更なる研究の進展が期待されます。

英語の論文は以下のサイトにて全文参照可能です。https://www.eneuro.org/content/6/2/ENEURO.0483-18.2019

もし、電磁波に乗った情報が磁界により脳に直接伝わるとしたら、皆さんは、地球上に数多く飛び交う電磁波にのっている種々雑多な、どうでもいいような情報を脳で受信したいでしょうか。それとも “言霊” を受信したいでしょうか?

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【鴨 奢摩他(かものしゃまた)プロフィール】
「方丈記」が好きなことと「止観」をあらわす「奢摩他(シャマタ/サマタ) 毘鉢舍那(ヴィパシャナ)」から自戒の意味を込めて「 鴨 奢摩他」と名乗る。
専門は、EMC(Electro-Magnetic Compatibility / 電磁波両立性)試験、品質法規全般。

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