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生きるの下手でも、きっとどこかにたどり着ける【赤と青とエスキース】を読んで

やばい。

「最近の若者はなんでも"やばい"だけで表現して、語彙力が乏しい」なんて言われているけど、やばい。

若者でもないけど、本当にやばい。

「赤と青とエスキース」(青山美智子さん著)

いい話だった。
自分と重ね合わせて、涙が止まらなかった。

ひとりでなんて生きていけないのに…

わたしは、20代の頃、新潟を飛び出したくて横浜に行った。あの時の自分は無敵だった。

「わたしだって、ひとりで生きていける!」

そうやって続くのはせいぜい数ヶ月で、半年もすれば心療内科にかかっていた。

大丈夫大丈夫と、騙し騙しに会社に行っても、必ず身体にあらわれる。なさけなさ。くやしさ。

本作で登場する、突然襲われる動悸の苦しみは本当によくわかる。

死を意識するほど苦しいのに、内科に行っても「疲れてるんじゃないですか?心配しすぎじゃないですか?」とそっけなく言われ、心療内科に行けばやっと救ってくれるかと思いきや、待ち時間の地獄、管理できないほどの薬の数々が手渡された。

フラフラになりながら、やっと診察室に入っても、早く話を終わらせよ、と言わんばかりな雰囲気。

まだ着席して間もないのに、終盤を示すのは、パソコンに向かい、処方箋をカタカタ打ち始める音。

急かされるから、事前にメモして言いたいことをまとめていく。

でも、途中から「あれ?わたし、何が言いたいんだっけ?でも早く、呆れられないように話をまとめなきゃ!」と、いつも焦っていた。

自分の正直な気持ちを、吐露できる場ではなかった。

いくつになっても、模索し続けていいんだよ

ちょうどこの本には、額縁と絵の話があって、タイムリーすぎてびっくりした。

先日、わたしは生まれて初めてのイラスト展示会に参加したばかりだったからだ。

額縁なんて、全く興味がなかった。でも、絵を引き立たてるために必要な存在だと、とても勉強になったよ。

今作もやっぱり、青山美智子さんらしい、人との縁やつながりが描かれていたのですが(なんでこんなに話をつなげられるんだろ…すごすぎる)

赤と青とエスキース」の中の2人が、50歳を過ぎても生き方を模索していて、「今度はこれをやりたい!」と言っていて、なぜだか無性にホッとした。

いや、物語の中の登場人物なのにね…?

でも、これからきっと、40代も50代も60代も…それぞれの年代で悩み続けるし、やりたいことは変わっていくに違いないのに、なにをわたし、30代で何者かにならなきゃ!と焦っていたんだろう、、、

それよりも今、手を差し伸べてくれる友だちや、少ない家族、変わらず助けてくれる元恋人のおじさんのことを、心から大切にしたい…と涙が溢れた。

この本の特にいいところは、ハッピーエンドが、結婚してゴールイン!だとか、就職しました!とか、子どもが産まれてfin…とか、分かりやすい「幸せのカタチ」じゃないところ。

勤め人ではなく、個人で何かを形にしようとしている人々の、それぞれのしあわせのカタチが描かれているのがいい。

どうしても普通になれない自分のこと

「赤と青とエスキース」は、最後まで読んだのに、鼻を噛んだティッシュを片付けながら、また読み返したくなる本。

いくつになったって、ひとりでいるのはこわいし
生きるのは、ほんとに途方もなく苦しい…

それなのに、なんでみんな、毎日必死に仕事に行けるの?なんでわたしにはできないの?

生きるため?
死にたくなりながら会社に行くの?
それが普通なの?
そうずっと疑問を抱えていた。

ふと頭に浮かんだのは、心から尊敬する
喫茶店のマスターの言葉。

「みんな、忙しさを言い訳にして
考えることを放棄して騙しながら生きてるだけですよ」

そうなのかな?考えすぎな自分のこと、少しは認めてもいいのかな?

身体だけ老いて、中身は成長してない?堂々としてたらいい

わたしは、イラストを描いてるけど画家ではないし、文章を書くけどライターというのはしっくりこない。
時折バイトをして、食いつないでる。

先日、「ずっと仕事としてイラストを描いてます!」と堂々と言い放つ方とお会いして、眩しかった。

わたしは、自信はないくせにこだわりが強くて、無能なくせに人に合わせられなくて、プライドは高くて、傷つくのは嫌で…もう、ほんと、どうしようもない。

それでもね、堂々としてたらいいんだよ。
(この言葉に何度も勇気づけられた)

自分が何者なのか、いまだにまったく分からない。人生終わってる…どこに向かって歩いていけばいいのかわからない…そんな時に出会った本。

 「赤と青とエスキース」(青山美智子さん著)

タイトルだけ見ても、「なんのこっちゃ?」「わたしには関係ない」と思ってしまうかもだけど…

この物語、おひとりさまに、これからの生き方に悩んでいるあなたに、読んでほしい本です。



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