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商品の価格は何で決まるのか

こんにちは、(株)ワシントン靴店 商品部長の北川純子です。
今回は、オリジナル商品の「価格」の決め方について書きたいと思います。

某セレクトショップさんの場合

数年前、とある馴染みのメーカーさんとお話ししたときに
「○○社さんでPB(プライベートブランド)の商談が決まったんですよ~」と自慢されました。
○○社さんとは、ものすごくおしゃれで、超有名なアパレルのセレクトショップさんです。
わたし「このパンプスがですか?」と、目を疑いました。
そのパンプスは我が社では当時1,900円で販売していた、合皮の普通のパンプスだったからです。
「○○社さんは、いくらで販売するのですか?」とお聞きしたところ、

「1万円です。」と、教えてくださいました。

キャー!!ぼったくりバーじゃないですか!!(すみません。)
○○社さんのブランド力、半端ないです。
物の値段って、何なんだろう、
物の価値って、何なんだろう、
わたしは、何を売っているのだろう、

と、この時、ひどく考えさせられました。

そのセレクトショップさんに入店した時の期待感、おしゃれな店員さんとのやりとり、買ったときの満足感、そのパンプスを履いた時の高揚感、そのブランドを身につけているという優越感など、我が社が1,900円でしか販売できない、同じ商品を5倍以上の価格で販売できる、圧倒的なブランド力は、商品単体以外の価値を創造しているのだ、と思いました。

実際に、靴にいくら使われているのか

商品の価格を決める際、参考になるものの1つに、総務省の家計調査があります。ホームページに調査結果が載っていて、無料で調べられますので、便利です。品目別にもっと細かく掲載されていたり、県別に比較できたりするので、見応えがあります。

2020年の総務省の家計調査によると、「履き物類」の年間の支出金額は、
総世帯      12,505円 
  2人以上世帯 14,781円
  勤労者世帯  17,956円
  単身世帯    8,244円でした。

総世帯の1世帯あたりの平均人員は平成27年に2.33人だったので、年度は違いますが、総世帯の支出金額を人員で割ると、
1人あたり年間5,367円です。年間ですからね。きっと靴を1年以上買っていない人もたくさんいますよね。
2020年はコロナ禍だったので、過去20年間で最も支出額が低かったです。

20年前の2000年の総世帯の履き物類の年間支出金額は19,541円でした。2019年は15,662円、2020年が12,505円ですから、
すごい勢いで下がっています。価格の高い靴は、どんどん売れにくくなっているのが現状です。

チェーンストアの価格の決め方

「商品の価値(バリュー)は価格×品質(機能)で決まる。」
「価格は安い方が価値が高まり、品質(機能)は適切がよい。」
チェーンストア理論ではこのように教わります。

品質は高い方がいいのでは?と思われるかもしれませんが、必要以上に品質(機能)を高くすると、価格が高くなってしまい、バリューを下げます。
また、必要じゃない品質(機能)を過度に追加するのは、使う人の立場に立っていない場合があります。
例えば、「-40度でも耐えられる」とか。
チェーンストアは、「日常」の暮らしを豊かにしたいので、品質は「適切」がよいのです。

あの時、セレクトショップさんの話で悶々と考えていたことの、我が社の答えは、これだ!と思いました。わたしは、やっぱり、1,900円の靴を、1万円で売るための努力をしたくない。わたしが考える「豊かな生活」とは、高い靴をたまに、少しだけ買うことではなく、履く人の気分や、日常の様々なシーンによって、色々な靴を履き分けられること。色々な靴を買っていただくためには価格を下げる努力をしなければいけない、と、思ったのです。

もちろん、安すぎる価格の裏に、工場の人件費を極端に抑えた不当な労働条件の話が、一部のチェーンストアでも問題になりました。そういうコスト削減はしたくないですね(そんな力もないので、そもそもできない)。また、会社の成長のためにも、社員の安定的な収入のためにも、適正な利潤も必要です。

我が社の商品開発は、まず、いくらで売りたいのか、価格から決めます。
次に、それでどれだけの品質や機能を付けられるか、を検討しています。

雑貨業界の社長さんで、ペガサスクラブの大先輩の言葉を思い出します。
「お客様が、安いと思う、一番高い価格をつけなさい。」

これからも、価格×品質の、バリューある商品をじゃんじゃん開発していきたいと思います。

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