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長年しがみついているものを手放す時が来た、と思った日

突然ですが、「境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)専門家」みたいなのをもう辞めようと思います。

いや私そもそも精神科医でも精神疾患研究家でもないので、別に専門家ではないんですけど。

自分が元・罹患りかん者で、ど根性で自力治療&寛解かんかいしたので、その知識や経験談を求められていただけなんですよね。だけ、なんですが、それで企業や個人問わず報酬をいただいているのが凄い……。

昔使っていたJUGEMブログの記録を辿ってみたら、なんと境界性パーソナリティ障害について初めて発信したのは2014年6月16日でした。えっ、約9年半も発信してたの……? まじで……? そりゃ「病名で検索したら巴さんの記事が出てきた」とか言われますわ。

私も「自分の知識や経験談が役に立つなら喜んで発信するわ!」と思っていたんですけど、最近「私のやっていること、なんか意味あるか?」と感じる回数が増えてきていたんですよね。
しかもなぜか、頼ってくる人が増えれば増えるほど、その虚しさも増えていました。

そんな時、お友達のひなりんさんと続けてお茶をする機会がありまして。
それを皮切りに、「もう長年しがみついているものを手放す時なんだな」と気づけたのです。

◆「人は鏡」にあらためて気付かされた

ひなりんさんはずっと前からお知り合いだけど、転勤族だったので、これまで数回お茶したりごはん食べたりしたことあるくらいの間柄の人でした。

実は私が描いたエッセイ漫画にも出てきたことある人です(笑)。

ひなりんさんは次発売の4巻に出てきます!

色々あって私の住む島根県に引っ越してこられた(しかもこれから永住する)ので、前より会いやすくなって、先日たまたま1日おきで続けてお茶する機会があったんですよ。

ひなりんさんって明るくてふんわりしていてコミュニケーション能力バリ高で、時々ズバッとしたことは言うけれども(笑)、私とは正反対の世界の人だよな〜、いいよな〜とずっと思っていたのです。

横町カフェうん(島根県雲南市)で撮った写真。私どこ見てんだ

しかしお話ししていて、色々と意外な共通点があると気づけました。
マルチタスク得意じゃないのに気づいたらマルチタスクやっちゃってたとか、自分の性質に合っていない生き方を無理やりしていると毎回ケガして気付かされるとか(笑)。

「ひなりんさんもそうですけど、私の周りって愛されキャラの人が多いんですよね。いいな〜、自分はそうじゃないよな〜、と思っていつも見てます」

「あら、巴ちゃん! そんな人ばっかり周りにいるってことは、自分も愛されキャラってことよ? 人は鏡なんだから!」

言われてハッとしました。そういや私、自分のカウンセリングでは「人を見ていて、いいな〜とか羨ましいな〜と思う所は、自分も持っている所なんですよ」って相談者さんによく言っとる!!!!!

カウンセラーになってからというもの、人には言っているのに自分には実感できていない心理学がよくあるなと気づく私です。

……ということをひなりんさんに伝えると、「でしょでしょ〜?」と笑顔で返されました。

「そういや私、他人を見ていてイライラする時は、自分の中にある問題を教えてくれている時だって考えているんです」
(この後、昨日の記事に書いた話をする↓)

「……それで、『私、漫画を無料で描くの嫌だったんだー! 3年もやってたのにー!!』って気づけたんですけど、他にもまだ嫌なことありそうですね」

「やめたいやめたいって言ってやめられない人を見るとイライラしちゃう、って言ってたよね〜。もしかして巴ちゃんにも、実はやめられなくてしがみついているものがあるとか?」

「えっ!? 私やめたいことは全部やめてると思ってるんですけど、まだあるんですかね!? 会社勤めも合わなくてやめたし、X(旧Twitter)も自分に合わなくなったと思ってスッパリやめたのに……。そんな私にまだやめられないものが……!? こわっ! 全然わからない!!」

「彼氏さんに聞いてみるといいんじゃない? 自分では気づけなくても、彼から見たら『もうやめたらいいんじゃないかなぁ』と思うところがあるかも♪」

「確かに彼は人間観察力がすごく高いので、私が気づいていない意外なところに気づいていそう……! ありがとうございます、今日さっそく聞いてみます!」

「一皮むけた巴ちゃんになるのね〜♪楽しみだな〜♪」

……っていうのが、手放すものに気づく最初のきっかけです。

◆「他者から見る私」で意外なことが分かる

我が家には、寝る前にちょっとだけ深いことを話すおしゃべりタイムが時々あります。ひなりんさんとお茶した日の夜、パートナーにさっそく聞いてみました。

「あなたから見て『ねんは本当はこれが嫌なんだろうな、やめたほうがいいのにな』と思うことってある?」

(※私のあだ名は「ねん(ちゃん)」です。詳しくは下記私のエッセイ漫画を参照のこと↓)

「う〜ん……田舎暮らし……? 大豆田とわ子みたいな生活がしたいんじゃないかな、と思って見てる」

(※大豆田とわ子とは、私が2年前にハマっていた「大豆田とわ子と3人の元夫」というドラマです)

「いやいや、田舎暮らしが嫌で辞めちゃったら、あなたとの生活が破綻するんですけど!? あと大豆田とわ子は好きだけど、あんな風に都会で綺麗な服着て社長業バリバリやりたいとは思わんな……」

「う〜ん……大豆田っていうか……なんか、ねんは理想の自分がいるんだけど、その理想像がぼやっとしていて、何やっても理想に届かなくてイライラしている感じはある……」

「ぐっ……それはあるかもしれない……。確かになんとなく理想はあるけど、それがぼんやりしてるせいで、近づいているのかどうなのかいつもよくわからないのか……。だからイライラするのか……。
……いや、そうじゃなくて、他になんか嫌々やっているように見えるものはない? やめたそうなのにしがみついている、みたいな」

病気関連の人と関わるのは、もう嫌なんじゃないかな、とは思う……」

「えっ。それって、私がずっと発信してきた、境界性パーソナリティ障害のこと……? あ〜……でも確かに、言われてみれば、『長年しがみついているもの』としてしっくり来る……」

「それをやっていれば、とりあえずお金は入ってくるじゃん……。安い給料だけど、とりあえず安定したお金が入ってくるブラック企業にしがみついちゃう人と、一緒じゃない……?」

「あ……あ〜〜〜〜……うわ……一気に分かった……確かに……ずっと発信してきたし、経験も積んできたし、この看板さえ掲げておけば仕事になると思ってしがみついているところはあるかも……でも、本当はもう嫌なんだ……」

「うん……ブラック企業やめるのと違って、ねんは個人事業で、一度ひろげた風呂敷をたたまないといけなくなるから、大変だと思うけど……」

「確かに、『何年もこれでやってきたのに今更やめるの? 次何すんの?』って今まさに思ってるわ……ていうか、それがしがみついているってことか……! う〜〜〜わ〜〜〜……ありがとう、色々見えてきたわ……そっか〜……すごくありがとう……」

「おやすみ、ねんちゃん……(すぐ寝た)」

眠いのに的確な意見を言ってくれて、本当にありがとう!(笑)

ということで冒頭の、「境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)専門家みたいなのをもう辞めよう」に繋がるわけです。

◆過去の自分がもう癒されてしまった

私はずっと「過去の自分に似た人たちのサポートをしたい」という思いで様々な発信や活動をしてきました。無料であろうと有料であろうと。

それは、自分の中にいる「病気に苦しんでいた過去の自分」を癒すための行為でもありました。過去の私を助けるために、現在で似ている人を助ける。

ただ正直、もう過去の私は癒されちゃったよねと思うところがあるんです。
なぜなら、当時のことがだんだん思い出せなくなってきているから。

部屋で大泣きしながら手首をたくさん切っている私、薬を大量に飲んで死にかけた私、貧乏な自分が情けなくて暗闇で布団かぶって大泣きしてる私。

たくさんの悲しい私を、私はあの手この手で必死に癒してきたんですよね。
カウンセラーになる前も、カウンセラーになった後も。

「あの子達まだ癒されてないよな、まだ頑張らなきゃな」と思っていたけど、記憶が薄れて思い出せなくなっているってことは、おそらくもうあの子たちは癒されたんですよ。

(※親戚の年配の人々を見ていると昔の記憶のほうが鮮明なので、加齢で忘れているわけじゃないと思います(笑)。たぶん)

あんなにつらいことだらけだった筈なのに、最近、子供の頃や若い頃のいいことばっかり思い出すのです。楽しかった、愛されていた、悪くなかったな、という思いが湧いてきます。

だから私もう、だんだん同じ“患者側の気持ち”で当事者さんと向き合うことができなくなっているんですよね。「自分と同じだ」「共感されたい」と思って来てくれる人に、もう共感できなくなってきつつある。

だから本当に、当事者として接するのは辞めどきなのかもしれません。

◆「過去の私」に本気で似ている人は、治す気がない

私が「意味あったか?」と思っていても、うちのカウンセリングを頼って良くなった方々は「意味ありますよ!」「めちゃくちゃ役立ちましたよ!」って言ってくださると思います(ありがとうございます)。

ただそれって、やっぱりそのご本人さんが「何としてでも、本気で変わってやる」と真剣に思ってくれたからなんですよ。

私が治したわけでも、気持ちを変えさせたわけでもない。
そのかたが本気で腹を決めたので、そこにトスを与えたと言うか、ブーストをかけたと言うか、ギターのアンプ的な役割をしただけです。

最近気づいたのは、過去の私に本気で似ている人とは「病気を治したくない人」だよなということ。ここで言う過去の私とは、病気全盛期だった私を指します。

あの頃の私は、変わりたい・強くなりたいと言っていたけど、本当は変わりたくもなかったし弱いままでいたかったし、病気にしがみついていたんですよね。病気が必要だったんです。だから、24年も罹患していました。

そんな全盛期の私に似ている人が、何か言ったくらいで「本気で治します!」ってなるのかな、と思いました。いや先に回答を言いますけど、ならないです。だって今のその人には、病気が必要なんだもん。

病気があれば、社会でまともにやっていけなくても、急にドタキャンしても、他人に対して何か迷惑をかけたり不義理を働いても、自分で自分を許せるのです。「だって私、精神病なんだから、情緒不安定なんだから、みんなみたいに普通の人間じゃないんだから、しょうがないよね」って。

病気全盛期の私は、他人や社会に許されるために精神疾患にしがみついていたんじゃなくて、自分で自分を許すために精神疾患にしがみついていたんだな、って最近やっとわかりました。
それぐらい、「自分」が許せない存在だったから。

病気のパートナー、あるいは家族とずっと一緒にいて、愚痴を言い続けている人も同じだと考えています。
今の自分に必要なんですよ、その病気の人が。

だって、その人の面倒を見てさえいれば、他のもっと深い問題を見て見ないふりできるから。そっちに手をつけなくて済むから。

「あいつのせいで他のことが手につかない、でもしょうがないよね、全部あいつが悪いんだから」って思えるのです。それは、そのくらい色んなことを既に「自分のせい」にしているからかもしれません。

自分のせいじゃないことを沢山自分のせいにして、疲れ切って、自分が本当に責任を持って立ち向かうべき課題に向き合う力も残っていなくて、そんな自分も許せなくって、だから「病気で困ったあの人」を身近に置くのです。

あるいは、身近に置かなくても、「あの人をずっと気にかけ続ける」ことで、自分の課題から目をそらせます。

大抵の人は、これ言うと怒ります。当事者も周囲の人も。
なんで怒るかって、図星だからです。
図星だから感情が反応するのに、認めません。

だから私は思うのです。
「私のやっていること、何か意味あるか?」って。

境界性パーソナリティ障害(またはその当事者)が必要でしがみついている人に、その苦しみを手放しましょうって伝えて、なんかあんの?
本当は手放す気のない人に手放し方を教えて、それでなんか意味ある?
なんもないでしょ? と。

今その人にはそれが必要なんだから、気の済むまで持っていてもらうことしかできないんですよ。カウンセラーは魔法使いじゃないんだから、無理やりひっぺがすことはできないのです。

本人がどんなに「もう変わりたい、強くなりたい、手放したい」と言っていても、心が真剣にそう覚悟していない限りは、そんなのは口だけです。
この記事で書いていた「治す治す詐欺」だった私と同じ。
 ↓

しかしある日急に、本気で治そうと思った時の私みたいに、「うわー! こんなの(病気)もう要らねー!!」って心底思える日が来るかもしれません。

あるいは死ぬまで必要で、一生持ち続けるかもしれません。
そうだとしても、その人にとってはそれが今回の人生で必要なことなんだから仕方ないのです。

◆カウンセラーとして、これから私ができること

境界性パーソナリティ障害専門家(みたいなの)はもう辞めようと思うんですけど、じゃあカウンセラーを辞めたいかっていうとそれは違うんですよね。

人と話すのは好きだからです。相手の問題の根源を探偵みたいに探すことも、相手のモヤモヤが晴れる瞬間に立ち会うのも好き。

私が好きじゃないのは、変わる気がないのにしがみついている人と延々同じ話ばかり繰り返すことです。
事件解決する気ないのに、ずっと同じ場所を捜査させられているような。

いやしかし、変わる気ないのにしがみついていてそれに気づかなくて自分ではどうしようもないと思い込んでいるから、悩んで私のところに来るんでしょうか……? うーん。

昨日の記事でも告知しましたが、12月1日からしばらく通常カウンセリング業を休業するので、休業中に自分なりの答えを見つけようと考えています。

しかしそもそもうちのカウンセリングって、最初のスタートは境界性パーソナリティ障害じゃなかったんですよね。

「ブログで収益を得たい人」とか「イラストレーターとしてプロで活躍したい人」とかばかりでした。境界性パーソナリティ障害じゃない、心のモヤモヤを解きに来ていたかたもいらっしゃいましたし。
それが何でこうなったのか……?

ともあれ今まで築き上げてきた専門家的な立ち位置は捨てようと思いますので、カウンセリングサイトの説明漫画とかも全部修正しなければなりません。めんどくさい! しかしちょっとワクワクしている自分もいます。

今まで書いた境界性パーソナリティ障害関連の記事は、それでも何かの役に立つ人もいるでしょうから、残してはおきます。

あと2ヶ月前に始めた月額マガジンは、「境界性パーソナリティ障害当事者」が読むことを想定して記事を書いていましたが、もうそこ消してもいいかな。

情緒不安定がんばりすぎ女子向けマガジンとかに改名しようと思います。
……他にいい名前ないかちょっと考えてみます(笑)。

病気全盛期だった過去の私に似ている人は、誰が何言おうと変わる気がありませんが、「病気を本気で治そう」と思って努力していた時代の“過去の私”に似ている人は、他人の言葉や知識でブーストがかかるはずなので。
そういう人に向けたマガジンにしていきたいですね。

なんかねー、もう、そういう人と話したいんですよねー。
「これは自分の問題なんだ! 私がなんとかしなきゃ!」って腹を括った人と話したい。

あんたが全部何とかしてよ、という感じの人とたくさん話してきましたが、自分が何とかする気ねーのに何とかなりますか。なりませんよ。何とかする気ない、しがみついている自分を自覚してほしい、本当に。

境界性パーソナリティ障害専門家みたいな地位にしがみついていた私に言われたくないでしょうけど。まあしかし私もそれ、手放すんで。

ということで昨日に続き、今回も決意表明のような記事でした。
きっと私の知らんところで、この記事を読んで、勝手に何かを手放したりする人がいるんだろうなあ、と思います。

私のやっていることにほとんど意味はないけど、そういう感じで、勝手に誰かが何か感じたり決意したりしてくれるといいなあ、というかきっとそうであろう、とは信じています。

では本日はこの辺で。ごきげんよう、さようなら。

◎お知らせ

2023年12月1日からカウンセリング・ペップトーク業務を全面的に休業します。再開予定は未定(たぶん来年中旬ごろになる予定)です。
お申し込みは下記サイトよりお願いいたします。
 ↓

【申込受付期限:2023年11月24日(金)まで】

年内最後のカウンセリングは下記クリエイター向けグループセッションとなります。空席ございますので、悩んでいる方はよろしくお願いします。
 ↓

【申込受付期限:2023年12月1日(金)23:59まで】

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