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【特集】世界の今。新型コロナウイルスが変えた私たちの生活(4)——「イギリス・ロンドン」の今

コロナと、春になったロンドンの現在

4月に入ったロンドンは、サマータイムが始まり19時を過ぎても明るく、また最高気温は20度を超えるような暖かい日が続いています。そんな天候と比例するように、人々の生活も穏やかに落ち着いてきています。

私が住むエリアでは、現在は食料品をはじめ、トイレットペーパー等の在庫が安定しています。私は自宅で仕事を行い、3日に1度、近所の公園を散歩した流れでスーパーに行くルーティンを続けています。

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Photo:外出禁止を促すよう求めたジョンソン首相の署名入りの政府からのレターが自宅に届いた

在宅勤務になったことで、通勤時間や働く時間の調整がきくため、浮いた時間を趣味に当てています。今まで挑戦したことのないレシピで料理をしたり、Kindleで本を買い漁り読書をしたり、新しい分野の勉強を始めたり、この状況をできる限り有意義に過ごせるようにと意識しながら日々過ごしています。

また、外出禁止に伴い、National TheatreRoyal Opera House等は無料でライブ配信を行っており、そういったサービスを利用できる楽しみも増えました。

仕事に関しては、以前からも利用していたZoomをフル活用し、普段通りに行っています。通常と変わりなく家でも仕事ができている私にとっては、この状況で不便だと感じることはあまりありません。

ただ一つ問題があるとすれば、夫と私、共に普段はリモートワークではないので、デスクなど、長時間パソコンに向かうよう家の環境が整っていなかったことです。現在、夫はダイニングテーブルで、私はソファに座りながらローテーブルでの仕事をなんとか続けています。

身体を動かすのが大好きなロンドンの人々

一日に一度、身体を動かす目的で外に出ることが認められているため、公園にはたくさんの人が散歩やスポーツをしに来ています。そんな中、誰かと違う時は舗装された道からコースを外すなど、自然と互いに距離をとるような姿が多く見られました。

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Photo:すっかり春めいて綺麗な花を咲かせている公園

マスクをしている人もちらほら見かけます。公園には運動器具も多くあるのですが、Social distancingの影響かチェーンで繋がれ、今は一部使用禁止となっています。

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Photo:使用禁止になっている運動器具に、こっそり自前のゴムを付けて活用している人

また気温がぐっと上がり、天気の良い日が続いているため、サッカーやバスケットなど以前よりも外に出ている人が多く見受けられます。花も咲き始め、公園に来る人も日に日に多くなりました。人が集まりすぎるということで、封鎖されている公園もあるそうです。

安定した供給とSocial distancingを徹底したスーパー

スーパーでは入場制限が設けられ、外でSocial distancingに従った列に並びます。待ち時間はあっという間です。

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Photo:2メートルしっかり距離を開けて並ぶ人々

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Photo:案内板も立て掛けられています

スーパーにはトイレットペーパーや食料品の在庫があり、供給は通常通りです。

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Photo:ロックダウン直後には品切れだったトイレットペーパーも今は潤沢

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Photo:野菜もフルーツも通常通りの供給

ロンドンがロックダウンされた時は、スーパーからすべての物が消えてしまうのではないか、という勢いでしたが、1週間も経てば供給は通常通り行われ、あの買い占めは一体何だったのだろうという気持ちになるほどでした。ただ、郊外の大型スーパー等では1週間経っても品切れの商品が多いという話を聞いたので、供給の戻りの速さは場所や施設の規模等にもよりけりかと思われます。

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Photo:現時点で唯一供給が安定していないものは、卵と小麦粉。この棚に早く潤沢に在庫が戻る日を待っています

レジには、客とスタッフとの間にプラスチックの仕切りボードが立てられていました。

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Photo:ロックダウン後に取り付けられた仕切り

近所の暮らしと雰囲気

私の住むエリアは、若者からファミリー層が多く住む新興住宅地です。現在も朝からランニングしたり、ベビーカーを押して公園で散歩したり、ベランダで筋トレしたり、庭で子供と遊んだりという姿が多く見られます。

4月に入り、陽が長く、そして暖かくなったのも後押しとなり、Social distancingを取りながらも陽の下で家族と過ごす時間を楽しむ人が多いように感じます。普段通り仕事をリモートで行える人達にとっては「家族と過ごせる人が増えた」「忙しいながらも勤務時間の調整ができる生活スタイルは悪くない」という声もあります。

ただ実際には、リモートできる仕事ばかりではもちろんありません。ちょうど2日前から近所の道路整備のための工事も再開されていましたが、まだ早いのでは?と思わずにはいられませんでした。

また、郵便局の方はマスク、ゴム手袋を着用しながら毎日郵便を届けてくれています。

ロックダウン直前のロンドン

私自身、ロックダウン直前までTUBE(地下鉄)に乗って出勤していましたが、3月の3週目には、乗客数は通常の3割ほどまで減っていました。人も落ち着いており、コロナウイルスによる暴動や混乱など、私自身は全く見かけることはありませんでした。それは今日も変わりありません。

また、実際スーパーから物が消えたのは、ロックダウンされる直前でした。

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Photo:ロックダウン直前のスーパーの様子。食品はおろか、洗剤やゴミ袋の棚も空っぽ

まずロンドンで無くなったものは、トイレットペーパー、パスタ、卵、小麦粉でした。次々と食料品や洗剤等がなくなり、薬局からは薬がなくなり…という状況に不安を感じましたが、その後1週間もしないうちに野菜や肉が戻り、普段通りに生活できることが分かったのでとても安心しました。

不安は続くが、それでも絶対大丈夫という想い

日々増えていくコロナ感染者と死者の数、またジョンソン首相のコロナ感染(退院済み)など、不安はまだまだ残ります。

画像15Ikea(ITV.com)

Photo:IKEAの駐車場にドライブスルー式の検査場が(写真はitv.comより)

NHS(国民保険サービス)のボランティアの一環として、自主隔離されている方への薬の配送や、食料品の買い出しの代行、自主隔離中に孤独にならないよう相談に乗る電話対応など、医療の知識がなくても参加できる制度が設けられました。

また、毎週木曜日の20時には、医療従事者の方に向けて町中が感謝の拍手を送るなど、大変な中でも「みんなで頑張ろう」という強い一体感が、現在の街には感じられます。

この先、いつまで続くかが見えない状況の中で、医療従事者の方、薬局、スーパー、交通機関、この状況下でも外に出て働き続けるリスクを負われている方には、本当に感謝しかありません。一日も早く「普通」の日々、安心できる日々がロンドンに、世界中に戻りますように。

コロナウィルスで亡くなられた方々のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

by パケトラライター 伊藤史子(イギリス・ロンドン在住)

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