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あの頃のあったかい感情を"好き"だと確かめる術はなかった 〜ナオ編 エピソード17〜

だいちとセックスした日以来、
私たちは"付き合う"という形になった。
彼氏には心を全て許せて曝け出せるそんな関係でないと、私の中では彼氏とは呼べない。
告白は一応OKしたものの、
私たちの間には最初からどこか相容れない壁があるように感じた。

そんな一抹のモヤモヤと共に短い夏休みは明け、
8月は仕事とだいちとの予定等々で
あっという間に過ぎていった。


2018年8月13日(月)
仕事終わり、
だいちが初めて私の家に泊まりにくる。
おうちで2人でごはん。
そのあとセックスしたかどうかは定かではない。(記録にない)


8月15日(水)
高校時代仲が良かったキヨシとチカと
名駅の鳥貴族で飲み。
キヨシは東京でコンサル会社でバリバリ働き、
チカは小学校の先生として働いている。
高校時代の友人は全員頭が良くどこかぶっ飛んでるほどに変わってるのだが、そんな中でもこの2人は出会った頃から特段変だったw

私の通っていた高校は県内でも有数の偏差値を誇る進学校だが、文武両道を掲げていてバチバチに勉強という雰囲気はなく、田舎でのびのびとした環境もあり、それぞれ個性豊かな子達が自然に集まる学校だった。
そんな中、キヨシとチカ、この2人は地頭がとても良く才能豊かで様々な文学や音楽に精通しており、とても自由で穏やかな雰囲気を纏っていた。その一方で、2人とも全く勉強に興味がないタイプだった。
幼い頃から勉強を強く意識させられた環境で育った私にとって、余裕があり好きなことを好きなようにする2人がすごく魅力的に見えて、仲良くなるのに時間はかからなかった。

キヨシのルックスは細身で高身長。
完全サブカル系でマッシュヘアーとかが似合う、例えるならKANA-BOONの鮪さんだ。
まじそっくり!笑
高校時代から今でも"恋愛"や"性"に対する欲が皆無の、かなりレアな人種だった🤭(笑)
私たちの恋バナには、ある程度の興味を持って聞いてくれるが、キヨシ自身は一切興味がない様子である意味オカマに限りなく近いタイプの男の子だった。まさに女子トークが女子目線で普通にできる貴重な男子!!
しかもキヨシは普段から豆乳を好んで飲むので、リアルにおっぱいが膨らんできて女体化してきたって笑い話で盛り上がったことがある。笑

私とキヨシは高3の時クラスが一緒だった。
私はクラスで1番いじられてネタにされるキャラで、当初は面白いことを全力で体張ってやったりすることが大好きな人間だったw
男女ともにほぼ全員からめちゃくちゃいじられて面白がられて、それが心地良かった。
みんなは私のことを面白いと言う、
そんな私が1番面白いって思う奴がキヨシだった。
自分に1番近い雰囲気を感じていた。
話していると涙が止まらないくらい笑っていられて、心から楽しくて仕方ない!
そんな時間を過ごせるのがキヨシ。
友達として大好きで、言うならば
"お気に入りの奴" だった。

周りにもキヨシと私はどこか似ているとよく言われた。
2人はどこか変で、ある意味お似合いやで!
と言ってくれる男友達もいた。

高校時代私は、友達といる時間が楽しくて
恋愛には全く興味がなかったので
キヨシのことはめちゃ仲の良い男友達!
としか考えていなかった。

だけど、今になって特別な存在だと感じる。
その感情は恋愛感情よりもまた、それを超越したもっとあったかいもの。
こういう感情は、社会人になってからの出会いでは決して抱けないのだろう。。

そんなキヨシは高校時代の全く勉強しない不真面目キャラから一転、今や年収1000万プレイヤーとして仕事大好き人間へと転身している。

まるで別人のように。
話していてもあの頃の面影がなく
どことなく寂しさを感じた。

わたしが好きなキヨシは、
今のキヨシではない。
だからもしもあの頃のあったかい感情が
恋愛感情だったとしても、
それはもう過去形になるのだなぁ。

そう思うとフラれてもないの
ちょっと失恋したような気持ちになった。
同時に安心もしていた。


そしてチカは、
高1の頃に付き合っていた女の子だ。

ボーイッシュでサバサバしていて面白い子。
色白で細くてすごく美人顔なのに、
やることや言動が変な故に、人気者だった。
クラスの女子から、そして男子からも、
彼女は文才の塊で、人と違ったユーモラスな
発想ができる、その宇宙のような頭の中は
誰も理解できない。でも親近感がある、
すごく親しみやすい女の子だ。
女の子からモテるのも私には理解できた。

彼女は私を機にレズになった。
高1の私との恋愛を機に、
男の子とは一切付き合っていない。
ずっと女の子だけを好きになり、付き合い、別れ、そしてまた付き合うことをしている。
今は歳上の女の子と付き合っているとか。 

私はあくまでバイセクシャルだけど、
中学の頃に2年好きになった女の子、
高校の時のチカ、
大学1年の時のカエ、2年の時のリナと、
女の子を好きになりがちで、
チカには時々恋愛相談をしたり
近況報告を電話で話していた。

もちろん、キヨシもそれを知っている。
チカがレズで、私がバイで、
私とチカは元恋人同士だったということも。

なんというか、不思議な関係で、
高校卒業してからも機会があれば毎年私たちは集まって会っていた。
もう卒業してから7年とかになるけれど。
チカは三重、私は名古屋、キヨシは東京で
異なる拠点でそれぞれ仕事が忙しいのに
不思議と自然に集まった。
ある時はキヨシの東京の家で。
ある時は私のマンションで。
ある時は高校のある地元の田舎で。

今回は名古屋の居酒屋だけれど。

話題は、映画や小説や音楽、
そして各々の生活習慣のことなど、
多岐にわたる。

キヨシもチカも容姿が良いのに
恋愛にはまるで執着がないところが
私とはまるで違う。

高校時代全く恋愛に興味がなく、
アホなことばっかやってケラケラ笑い転げて楽しくて仕方なかった純粋だったあの頃の私。
1番変わってしまったのは私だった。

2人の本質は変わらない。
私はたぶん、跡形もなく変わってしまったのだろう。

2人との友情は変わらずにあるとしても、
やはり、今や根本的に合わない何かを感じてしまう、そんな切なさを感じずにはいられなかった。

あの頃は映画も音楽も小説も漫画も何もかもに興味があり、趣味が多かった。
チカに勧められて初めて知った
浅野いにおの「素晴らしい世界」。
以来浅野いにおのファンになり作品を読み漁った。

幾度となくお互いの価値観を共有してきた。
思い出はあらゆる文学、エンタメに散りばめられて今も確かにそこに存在している。

恋愛に没頭すると自然に趣味が少なくなる。
そのことに私は薄々気づいていた。

映画だけはかろうじて変わらずに
好きな趣味としてあったけれども、
2人の幅広い雑学王並みの知識や話題に
ついていけないことが何より悲しかった。
自分の盲目度合いに気付かされる。

今の自分が好きかと聞かれたら、
好きだとは言えないだろう。
そんなことはずっと前から分かっているのだけれど、葛藤しても、
寂しさをどーしても拭い切れない。
2人のように自分自身を貫いて
強くは生きられない自分を、
認めざるを得なかった。



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