ジェンダー不平等の先にあるもの
こんにちは。PAF MALLのエシカル男子、【14期】エシカル・コンシェルジュ講座受講生のカワムラです。
第9回講義「みんなのための、ジェンダー平等と女性のエンパワメント」。講師:大崎麻子さん(特定非営利活動法人Gender Action Platform 理事)。
皆さんは「無償ケア労働」をご存知でしょうか。
ケア労働とは、人のお世話(ケア)にまつわる労働のこと。
育児、介護、看護:同居する子ども、高齢者、病人のお世話。入浴や食事の世話、話し相手になることなど
家事:水汲み、薪集め、料理、買物、掃除、洗濯、等々。家族の生命を維持するための労働。
コミュニティ/地域社会:他の世帯や家庭のサポート、地域のこどもや高齢者へのサポート
無償ケア労働の意義は、家族の生存を支えているということ、人間と社会のウェルビーイングを下支えする労働であるということ。育児は次世代の労働力を育む労働であり、家事全般は現在の労働力である夫の健康を下支えする労働なのです。
経済活動の必須資本=人的資本を下支えし、生産労働を補完する重要な重労働でありながら「無報酬」。そして往々にして「女性の役割」であることが多いのです。
これにより、男女間の力関係を生み出してしまう(ジェンダー不平等を生み出してしまう)。性別役割分業を固定化してしまう(「女性が無償ケア労働を担う」ことを前提とした経済・社会の仕組みができてしまう)。健康を損なう、教育・経済・政治参加の機会制限(=エンパワーメントを阻害する)が生じてしまうのです。
実際、諸外国と比較して、日本は男女ともに総労働時間(有償と無償の合計)が長いという統計が出ていますが、有償労働の男女比は諸外国と比べて1.7倍ですが、無償労働の男女比は諸外国と比べて5.5倍となっているのです。これは、コロナ禍のステイホーム期でも変わらなかったといわれています。
国内政策の現在地は、女性活躍からジェンダー平等へ。内閣府による「女性版骨太の方針」「骨太の方針」「女性活躍推進法の改正」
企業・行政機関に対するデータ開示の義務化(現状把握)
• 男女間賃金格差
• 女性管理職比率
• 男性育休取得率「年収の壁」の見直し(税と社会保障制度の改革)
女性特有の健康問題
暴力・ハラスメント対策の強化
目指しているのは、男女ともに働きやすく、働きがいがあり、フェアに評価される職場。男女がともに働き、ともに家庭生活を営める環境。女性が経済的に誰かに依存しなくて済む社会。
そのために必要なのは、男女間賃金格差(労働市場でのジェンダー不平等)を「見える化」すること。
垂直分離(企業・組織内):上位の職階に男性が多く、下位の職階に女性が多い。非正規雇用者に女性が多い。
水平分離(社会全体):高収入の職種に男性が多く、女性が少ない。女性が集中する有償ケア労働の賃金が低い。
無償ケア労働の負担における男女格差:家事、育児、介護等を担う時間が女性の方が圧倒的に⻑く、賃金労働に従事する時間、労働市場での活動を制限するため、女性に不利に働く。
こういった、制度や慣行に根強く残る性別役割分業意識や無意識のバイアスによる間接的な差別を解消しなければなりません。家庭内での家事、育児などの無償ケア労働を、女性だけではなく男性も担えるようにすることが必要なのです。
日本の女性は、声を上げずに行動します。
非婚、少子化、そしてその先にあるのは人口減少です。
若年男性も、パートナーに望んでいるライフコースは「両立=結婚し、子どもを持ち、仕事も続ける」であるのに。
人口減少への社会の対応として挙げられているのは以下の2つ。
人口減少の緩和:日本全体では、産みたい人が産み育てやすい環境を整備する。地方では、若年女性の流出を減らす。若年女性のUターン、移住・定住を促す。
人口減少への適応:男性と女性が共に働き、家庭生活を営めるようにする。男女が一緒に地域・社会インフラを維持し、経済を活性化していけるようにする。
その先進事例として紹介されたのが、兵庫県豊岡市の「豊岡メソッド」。過疎に悩む地方都市豊岡は、いかにしてジェンダー不平等解消に挑み、組織風土改革を成し遂げ、小さな世界都市となったのでしょうか。
それはまた次週ご紹介します。どうぞ引き続きおつきあいください。