僕らはみんな生きている 生きているから...
こんにちは。PAF MALLのエシカル男子、【14期】エシカル・コンシェルジュ講座受講生のカワムラです。
前回は、「地球を分け合う動物たちに配慮する2つの方法」」(講師:岡田千尋さん・NPO法人アニマルライツセンター代表理事)のテーマに沿って採卵鶏、肉用鶏の畜産について書きましが、今回は豚や牛などの畜産、そして水産について書きたいと思います。
まずは、アニマルウェルフェアが定義している5つの動物の自由についてのおさらいです。
飢餓と渇きからの自由
苦痛、傷害又は疾病からの自由
恐怖及び苦悩からの自由
物理的、熱の不快さからの自由
正常な行動ができる自由
+6. 喜びなどポジティブな体験ができる自由
豚の畜産はフリーストールへ
豚の畜産で課題とされているのが「妊娠ストール」という、妊娠した母豚を入れておく狭い檻です。
※刺激の強い映像がありますのでご注意ください
EUでは2013年に禁止(※種付け後4週間までと分娩1週間前以降を除く)され、アメリカでは11州が禁止、オーストラリアでは豚肉業界が2017年までに自主的に廃止することを決定と、世界的に妊娠ストール廃止の動きが進んでいます。
WOAH(世界動物保健機関)では、豚の動物福祉規約に「成熟雌豚及び未経産雌豚は、他の豚と同様に、社会的な動物であり、群で生活することを好むため、妊娠した成熟雌豚や未経産雌豚はなるべく群で飼われるものとする」と記しています(第7.13.12条より)。
日本では、農林水産省が2023年に「豚の飼養管理に関する技術的な指針」で母豚の群飼育を推奨、妊娠ストール廃止は必須となってきています。ですが、これは食品企業の責任としての動きが大きいのです。
国内最大手の日本ハムが、すべての農場で2030年までには妊娠ストールフリーになることで、他の大手食肉会社もフリーストールの豚舎を導入しています。近年フリーストールへと切り替えている中小農場も出てきていて、2030年までには、妊娠ストールフリーが”普通の社会”になることが期待されています。
牛の畜産は、つながない飼育、放牧へ
牛の畜産で課題とされているのが「つなぎ飼い」です。畜産技術協会によると、72.9%の酪農場が乳牛をつなぎ飼いしているそう。
つなぎ飼いの牛は、不衛生のため病気にかかりやすくなり、結果、牛を使い捨てにしてしまう旧式のシステム。
1980年には85%がつなぎ飼いだったデンマークは2020年までに禁止。スウェーデン、スイス、オーストリアは放牧が義務付けられるなど、世界的に廃止の方向へ向かっています。
日本でも、農林水産省指針として、つなぎ飼いからの移行はすぐにでも必要であると示しています。「乳用牛の飼養管理に関する技術的な指針 」(2023年公表)では、常時繋ぎ飼い、運動させない、スタンチョン、短いロープ、昔のままの面積の牛舎などの飼育は、アニマルウェルフェアの観点からすぐにでも改善を求めるとしています。
つなぎ飼いからの移行は、酪農家にとっても必要なこと。生産量は、つなぎ飼いよりフリーバーン、フリーストールのほうが多いといわれています。多数の牛を効率よく管理できるため、千〜万頭規模のメガファームでは、つなぎ飼いはないそう。
ただ、つなぎ飼いではない飼育で十分な生産量を賄えても、調達の仕組み解決が困難ともいわれています。一般流通している牛乳は、タンクローリーで集乳して回り、指定生乳生産者団体を通して納品されるため、つなぎ飼い、つながない飼育、放牧の牛乳が混合されてしまうのです。
つまり、独自に農家を指定して作られる一部の放牧牛乳やオーガニック牛乳、および個々の農家のオリジナルブランドの牛乳以外、トレーサビリティができていないのが現状なのです。
消費者としてアニマルウェルフェアに配慮した牛乳を選択しようと考えたら、個々の農家から購入するか、オーガニック牛乳を選ぶか、植物性ミルクを選ぶかしかないということになります。
水産養殖におけるゲノム編集魚という課題
水産養殖の現状はどうなのでしょうか。水産養殖でのアニマルウェルフェアは、飼育密度、回遊できる広さ、エンリッチメント(水流や藻や石、隠れ場所など)、輸送をしないこと、屠殺時の意識喪失、品種改変しすぎていない、などが定義されています。海外の水産企業は、死亡率(生存率)など客観的に評価できる指標も公表しているといいます。
えび養殖の一般的な慣行である、メスのえびのホルモン操作(急速な成熟、産卵を誘導)として行われてきた「片眼柄切除」は、徐々に廃止の方向へ向かっているといいます。
水産養殖における課題のひとつがゲノム編集魚です。マダイ、トラフグが販売可能になりましたが、意図しない問題発生、操作中の苦痛(事故含め)、自然行動の抑制、動物倫理の破壊など、規制や評価のない日本では、アニマルウェルフェアの課題が一切検討されていないのです。
鶏、豚、牛の日本の年間屠殺数は約10億頭(2022年)。それと比べて水産動物は約1兆頭以上と、数が多いことによるさまざまな影響が懸念されています。
日本では、水産庁が水産エコラベルを推進しているのをご存じでしょうか。取得件数はまだ少ないですが、選択基準の一つとして、購入時にエコラベル認証の商品を意識してみてはいかがでしょうか。
MSC認証(海のエコラベル)=MSC(海洋管理協議会)の規格に適合した漁業で獲られた持続可能な水産物にのみ認証される
日本企業の取得件数:14社(2022年9月30日時点)
ASC認証(養殖に関するラベル)=ASC(水産養殖管理協議会)の策定基準をクリアした、環境と社会への影響を最小限にした責任ある養殖の水産物にのみ認証される
日本企業の取得件数:182社(2022年9月1日時点)
ワンヘルス、ワンウェルフェア(人間、動物、環境の健康・健全性はひとつ)という観点に立ち、動物を殺すことは、結局は人間をも追いつめるという、工場畜産システムの課題について語られた本講義。現代の食料システムは、環境、動物、そして人間への影響も大きいと考えざるを得ません。
確かに、大量生産が可能な工場畜産の卵、肉、魚、乳は価格が安い。でも、安いからこそ廃棄にもつながってしまう。価格が安いうちは食品ロスは解決せず、結果、食品にまつわるコストは安く済んではいない。
では、そのコストはどこへ? このスパイラルの解決策はあるのでしょうか?
生産・ 消費量の大幅な削減
動物福祉に配慮した飼育への転換
本講義では、解決策はこの2つしかないとされました。社会全体で、よいものを少量に切り替えていくことしかないと。
消費者としては、アニマルウェルフェアに配慮した食品を選ぶ、動物性食品の消費を減らす、などのライフスタイルによる貢献もできることとして挙げられます。
皆さんはなにを思いますか。僕は、とても大きなテーマながら、普段の生活では見えづらい領域の内容も多く、正直かなりモヤモヤとしました。
食品販売に関わる事業者として、もちろん消費者として、アニマルウェルフェアへの配慮を意識し、考える機会となった講義でした。
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