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おもいで。

ボクの家族は親族だ。
お母さんやお父さんの代わり
お姉ちゃんやお兄ちゃん
妹や弟の代わり

近所の親族のおうちを
数日代わりに転々とする

迷惑だろうな
いつも感じてる

でも幸せだ
おじいちゃま
おばあちゃま
叔母さま
叔父さま
こんなにたくさんいる
そんなひと
なかなか無い

自慢の親族と
対面した時のこと
ボクは覚えてる

「記憶ないでしょ?」
そう云われるが
三つの頃ぐらいから
覚えてること多い

最初に話した言葉
いや
云われた言葉

ボクが新しい母さんに
虐待されてた
事実が発覚して
お母さんの親族
勢ぞろいして

あの頃のお父さんに
ボクを引き渡すように
話したとき

ボクは泣いた
お父さんを失うこと怖くて
世界から消えちゃいそうで

声をあげて泣いた

「また会おう
いつでも会える」
お父さんはわかるような
嘘を吐いた

保護施設の前で
お父が去っていく
後ろ姿

ボクは
「捨てられた」
そう言って
泣いた

お母さんの姉妹
叔母さまが
ボクを抱きかかえ
云った

「くろがねは
きたえうてば
つるぎとなる」

呪文に聞こえた
繰り返し聞いた
「なんて?」
「もいちど何て?」

叔母さまの夫さんが
隣で言った

「ひとは辛い思いに
鍛えられてるんだよ」

「え?鍛えたくない」

「そうだね。
みんな試されることは
イヤダよね」

「ボク、ガマンしてないよ
新しい母さんに仲良くなるため
悪いことは悪いって言っただけ」

「それでいいよ」

「けど、
ガマンしなかったから
お父さんに
捨てられちゃった」

「ちがうよ。
父さんはキミを守っただけ」

「うそつき!
捨てられた事実は変わらない!」

「嘘じゃないよ
その事実に秘めた
真実をいくつであっても
知る権利はあるからね」

「もうやめて
パコちゃんにわからないわ」
叔母さまが泣きながら
ボクをぎゅっとして
言った

「いい?
よくきいて
あなたがどう生きるかで
お母さんがどんなひとだったか
たくさんのひとが
みて、しる、そういうこと
お母さんに
会ったこと無くても
あなたの行動すべて
いきているすべてが
お母さんのこころ
感じさせることになる

悲しみも
苦しみも
たくさんある
誰にでもある
でも
カッとなっても
何も変わらない

これからは
冷静に落ち着いて
よおく考えること

自分の運命に
負けてはダメよ

たくさん
ご本読んで勉強して
たくさんのひとから
学んで生きるの

お父さんは
戻らないわ

けど
あなたの半分は
お父さんでもあるの

この状況
恨んでも
憎んでも
何も変わらない

自分のこころだけ
重くなる

ねえ
バカバカしいから
『さすが』お母さんの
娘さんねって
そんなふうにまわりに
云われるような
人生を目指したら
どうかしら?

そしたら
いつもこころに
お母さんが一緒にいる」

叔父さまが
運転しながら
ボクと叔母さまの会話を
聞いてうなずき云う

「苦難がたくさんあるのは
偉大なひとになる証拠だよ」

ボクは言葉にしなかったが
こころで感じてた

「そんなこどもだまし…でも、
立派になったら
お母さん嬉しいかな」

【偉大でなくても
立派でなくても
負けばかりの人生でも
挑戦続けるあなたなら
わたしの自慢です
逃げ回らず
立ち向かうあなたなら
わたしの誇りです】

ずいぶん後になって
母の日記の
ボクに宛てた文章の中に
その回答みたいなのが
あって驚いた

ボクの想い出

新しい母さんに
砕いたガラス片入り
ごはん
いただいたこと

口の中で
ジャリジャリして
スグ吐き出した

血だらけの声で
新しい母さんに云った

「かあさん
残してごめんなさい」

その言葉が
新しい母さんへの
ボクの精一杯の
愛情表現だった

あのひとのあの時の
後悔の恐怖のひとみ
忘れていない




















読了ありがとうございます 世界の片隅にいるキミに届くよう ボクの想いが次から次へと伝播していくこと願う 昨年のサポートは書籍と寄付に使用しています 心から感謝いたします たくさんのサポートありがとうございました