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【後編】再エネによる「人おこし」─パシフィコ・エナジーが目指す持続可能な地域共生

全国各地で太陽光発電所を開発・運営するパシフィコ・エナジーは、発電所建設エリアの「地域共生」に力を入れています。今回取り上げるのは、岡山県美作市 作東太陽光発電所での地域共生プロジェクト。ここでは、NPO法人 山村(さんそん)エンタープライズへの寄付と、発電所近くで運営する若者支援シェアハウス「人おこし」の入居者に対する就労支援を行なっています。この就労支援の一環として、パシフィコ・エナジーは入居している方々に太陽光発電所の草刈りを手伝ってもらいました。

2本立てでお送りするこのレポート、前回は山村エンタープライズの活動内容やパシフィコ・エナジーとの出会いについてご紹介しました。後編では、引き続き事務局長の能登大次さんにお話を聞きながら、「人おこし」の入居者が実際に行なった草刈り活動当日の様子や、山村エンタープライズとパシフィコ・エナジーがめざす地域共生のあり方などについてお伝えします。

「草刈り」を通じてついに実現した直接的な地域共生

2022年6月、山村エンタープライズが運営するシェアハウス「人おこし」の入居者に向けた就労支援の一環として、作東太陽光発電所で実施された草刈り活動。パシフィコ・エナジーが発電所のメンテナンス会社さんと一緒に、太陽光パネルの下に生えた草を刈る手伝いをしてもらえないかと能登さんに相談したことをきっかけに、この取り組みは動き出しました。

「2021年の暮れごろ、パシフィコ・エナジーの担当者の方から『入居者の皆さんに、発電所の草刈りに協力していただけませんか?』というお話をいただきました。もともと私たちは他の企業さんや団体さんで草刈りをしたこともありましたし、こちらとしてもぜひパシフィコさんに協力したいということですぐにOKしました」

前回に引き続きインタビューに答えてくれた、山村エンタープライズ 事務局長の能登大次さん

パシフィコ・エナジーは2017年から山村エンタープライズへの寄付を続けていますが、いずれは金銭的な支援に留まらず、直接的に関わりながら一緒に地域共生につながる取り組みをしたいと考えていました。

そんななか、初めて具体的な形で持ちかけた「草刈り」就労支援。とんとん拍子で話は進み、草が伸びてくる6月末に実施することが決定しました。

若者二人のおかげで、パネル下の草があっという間にきれいに

草刈り当日は、二人のシェアハウス入居者の方が働き手として参加してくれました。太陽光発電所に来るのは初めてだったらしく、到着してまず感じたことは敷地の広さに対する驚きだったそう。広大な自然と太陽光パネルが同じ空間で共存していることに興味を持っていました。

そうして日差しが照りつけるお昼ごろ、いよいよ草刈りがスタート。実際に草を刈るのは、市販の草刈り機の両側にキャタピラーがついた、縦横60cm程度の専用草刈り機です。ちなみにこの日は、専用草刈り機のお披露目を兼ねていたこともあり、メーカーの広報担当者やメディアの取材陣なども大勢参加。多くの人を前にして、二人は少し緊張している様子でした。

両脇にキャタピラーがついた専用の草刈り機。試作段階のものを試運転的に使用しました

太陽光発電所での草刈りで特に大事なことは、「太陽光パネルを傷つけないこと」。地面に落ちている石が跳ねるなどしてパネルに傷がついてしまうと、発電量が低下したり、火災の原因になったりすることも。そのような被害を防ぐためにも、通常の草刈り機よりも少し小さく、小回りが効く専用の草刈り機を使用しているのです。

手元のラジコンで操作して、草刈り機を太陽光パネルの下へと潜り込ませたら、そのまままっすぐ前進。人がゆっくり歩くくらいのスピードで、伸び放題の草を刈り進めていきます。

太陽光パネルの下をくぐり抜ける草刈り機。「クローバーは刈らない」ことがポイント

ラジコンの操作は、レバーを動かして草刈り機を前進後退させる程度なのでとても簡単。専門的な知識や技能がなくても操ることができ、怪我のリスクもほとんどありません。また、ラジコンを使用すると遠隔での操作が可能になるため、作業の省人化にもつながります。

この日、初めてラジコンでの草刈りに挑戦した二人もすぐにマスターして、特に夢中になっていた1人は「またやりたい!」と次回以降の活動にも前向きな様子。そんな彼らの姿を見て、一緒に来ていた能登さんは次のように言っていました。

「参加者の1人は受験生で、普段は部屋にこもって勉強をしていることが多いんです。外の空気も存分に吸えて、良い息抜きにもなったのではないでしょうか」

無事草刈りが終了すると、刈ってもらった一角の草は高さがそろってきれいになりました。初の試みではあったものの、二人のおかげで大助かり。パシフィコ・エナジーとしても、初めてこういった形で直接的な支援ができて、喜びと手応えが感じられた一日でした。

手前が草刈り後の様子。パネルの隙間から顔を出していた草もなくなりました

若者支援と過疎地域のマッチングして、昔ながらの共同体をアップデートしていく

前回の記事でもお伝えしましたが、山村エンタープライズとパシフィコ・エナジーは、もともとの地元住民ではない「よそ者」同士。そのような二者が生み出せる地域共生の方法として、「若者支援」と「過疎地域」に着目しています。

現代の日本は、都会では社会にうまく適応できずに無力さを感じる若者がいる一方で、過疎地域では高齢化や人口減少が進み働き手が不足している状況。この二つの要素を同時に解決する手段として考えたのが、過疎地域における若者の就労支援でした。

「若者と過疎地域のマッチングがうまくいけば、生きづらさを抱える若者にとっては自分が輝ける場を見つけられて、過疎地域にとっては貴重な働き手を迎え入れられます。お互いのニーズを満たせるので、どちらにとっても良い影響がありますよね」

加えて能登さんは、近年若者に求められるハードルがどんどん高くなっていると言います。

「これまでは社会に出てから徐々に身につけていけばいいと思われていたことでも、今はすでにできることが当たり前、みたいな世の中になっている気がします。若いうちから力を発揮できるのは素晴らしいことですが、なかには無意識のうちに競争社会に身を置いて、無理をしている人も少なくないのではないでしょうか」

そうした人を救う場所として運営しているシェアハウス「人おこし」。自由に力を発揮するために何より大事な「環境」を提供することで、若者たちを解き放ち、視野を広げるサポートをしているのです。

「ひきこもり問題や高齢化問題が出てきたのって、やっぱり昔の地域にあった共同体のような関係性や、老若男女の関わり合いが希薄になったからだと思います。私たちはそれに対して、現代的な形で助け合えるコミュニティを作っていきたい。そのために、同じ志を持つ企業さんとも協力していきたいんです」

能登さん「山村エンタープライズを卒業して、現在近くの地元企業で働いている人は10人ほど。これまでの努力が実を結んでいることを実感しています」

今回の「草刈り活動」を通してさらに結びつきが強まった山村エンタープライズとパシフィコ・エナジー。今後も、金銭的な支援だけに留まらない、双方向から歩み寄り共創していける関係性を続けていきたいと考えています。

「草刈り活動はもちろん継続しつつ、他にも私たちにできることがあればなんでも協力したいですね。入居者のみんなにとっても新しい世界を知るきっかけになると思いますし。そうしたつながりがどんどん生まれればいいなと思います」

一時的ではない、永続的かつ循環型の関係性を目指し、山村エンタープライズとパシフィコ・エナジーの取り組みは続きます。


「再エネによる「人おこし」─パシフィコ・エナジーが目指す持続可能な地域共生」の前編の記事はこちらからご覧いただけます。


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