Takashi Koike

米国特許事務所に勤務する弁理士です。 日米の知財ニュースや実務の中で気になったことなど…

Takashi Koike

米国特許事務所に勤務する弁理士です。 日米の知財ニュースや実務の中で気になったことなどを不定期で更新していきます。 2021年に日本のJD、2023年にアメリカのLLMを修了しました。目下Washington D.C.の司法試験に向けて勉強中。 なお、執筆内容は個人の見解です。

最近の記事

雑記。

本日2件目の投稿です(急に暇になったわけではありません。w) まとまりのない内容ですが記事を書かせていただきました。 クライアント訪問 年明け~2月末まで、BOSSとクライアント様を訪問させていただきました。時期的に新年のご挨拶も兼ねた形となりましたが、弊所としては、定期的な近況報告&クライアント様からのフィードバックを頂く場としてお時間を頂戴しました。 定期的な近況報告をさせて頂く場合は、弊所の実績報告ということで、過去1年間(今回であれば、2023年1月1日~12月

    • USPTO:自明性判断のガイダンス更新

      前回に引き続き、USPTOのアップデートのお知らせです。 Updated Guidance for Making a Proper Determination of Obviousness 「適切な自明性判断の仕方」についてのガイダンスということですので、主に審査官向けの資料になると思いますが、このガイダンスを把握しておくことで、発明が自明であるとして103条で拒絶された場合に、その拒絶理由が妥当なのか否か、という判断ができるのではないかと思います。 では、具体的にどの

      • USPTO新ガイドラインの発表

        2024年1月10日付で、実施可能要件 (Enablement Requirements) に関する新たなガイドラインが米国特許商標庁 (USPTO) から出されました。 ガイドラインの全文はこちら。 新ガイドライン概要 今回のガイドラインは、昨年に出された最高裁判決 Amgen v. Sanofi を受けて作成されたものになります。 なお、Amgen事件はバイオ関連技術の事件ですが、新ガイドラインは、審査及び審判において実施可能要件(米国特許法112条(a)項)を検

        • DOCX Filing本格始動前のおさらい

          DOCXについては、既に何度か情報発信をさせていただいているので、今さらかも知れませんが、いよいよ年明け2024年1月17日よりDOCXが本格始動します。 DOCXの本格始動により、DOCX以外の形式(具体的には、従来のPDF形式)での出願を希望する場合は追加費用($400)を納めなくてはなりません。 新しい制度に対してはまだまだ不安を感じている出願人もいると思いますので、出願人の方々にはぜひバックアップ用PDF(Auxiliary PDF)の活用をお薦めしたく思います。

          米国特許七不思議SEVEN WONDERS OF US PATENT PROSECUTION

          こちらの記事は、パテントサロンさんのクリスマス恒例企画、知財系もっと Advent Calendar 2023用の投稿記事となります。知財系Advent Calendar 2023も合わせてお楽しみください。 はじめに 本日は、米国で権利化を経験されたことのある方であれば感じたことであろう米国特許審査あるあるから、Why American people!? と言いたくなる(かも知れない)点を七不思議としてまとめてみたいと思います(↑はい、厚切りさんのパクリです。知財人とし

          米国特許七不思議SEVEN WONDERS OF US PATENT PROSECUTION

          半導体関連技術に関するPilot Program

          既にご存知の方も多いと思いますが、米国特許商標庁(USPTO)がSemiconductor Technology Pilot Programなる試行プログラムを12月1日に開始しました。 概要について簡単にご紹介したいと思います。 プログラム導入の背景 本パイロットプログラムは、2022年の Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors (CHIPS) Actという法律(以下、CHIPS法)の成立を受けて設けら

          半導体関連技術に関するPilot Program

          米国意匠エージェント?

          2日続けて意匠の話題です。 米国特許商標庁(USPTO)に対して代理人として手続をするには、Patent Barと呼ばれる試験に合格し、USPTOに代理人として登録しなければなりません。 これは日本の弁理士も同じようなものですが、日本の弁理士が特許・意匠・商標(正確には、小特許とも言われる実用新案を含みますが)の全ての手続をすることができるのに対し、米国のPatent Barは特許と意匠のみで商標の手続をすることはできません。したがって、試験範囲も異なります。 米国の法律

          米国意匠エージェント?

          コンピュータ関連意匠に関するUSPTO内部向け意匠審査ガイダンスの発行

          1か月に1度くらいは記事を更新したいと思いつつ、前回の投稿から早2か月が経過してしまいました。継続は力なりとはよく言ったもので、継続するというのは実に難しいものだと実感しております(言い訳w)。 さて、今日は意匠審査基準についてのお知らせです。といっても、外務向けの審査基準MPEPが改訂されたというニュースではなく、あくまでもUSPTO(米国特許商標庁)審査官向けのSupplemental Guidanceが発行されたというお話になります。 詳しくは、政府発行のFeder

          コンピュータ関連意匠に関するUSPTO内部向け意匠審査ガイダンスの発行

          審査履歴と引例組合せの動機付け

          米国に限ったことではありませんが、特許出願が審査を経て登録になるまでの過程(審査履歴)が特許の権利範囲に影響を与える、ということは間々あります。 典型的な例としては、審査の段階において自己の発明の有する特徴や効果などを主張した場合は、その特徴や効果を有しない発明に対して特許の効力が及ばないとする、いわゆる禁反言(estoppel)が挙げられると思います。 今日ご紹介する判例は、上記のような典型例とは毛色が異なり、審査履歴が引例の組合せに対する動機付けを与えることがあるケース

          審査履歴と引例組合せの動機付け

          発明の非自明性と商業的成功

          日本では発明の特許要件の一つに進歩性という要件があり、公知な発明に対する進歩があることが求められます(特許法第29条2項))。 似たような要件として、米国では非自明性(non-obviousness)という概念があり、公知な発明から自明なものではないことが求められます(米国特許法第103条)。 国によって法律は異なるため、この「進歩性」と「非自明性」との間には細かい部分で違いがありますが、似ている部分も数多くあります。 そのうちの一つが、商業的成功(Commercial

          発明の非自明性と商業的成功

          特許適格性の議論はどこに向かう?

          個人的な私見ですが、この1年くらいで米国特許法101条(特許適格性)に対する審査が厳しくなっているように感じます。 先日審査官と面談をした弊所パートナーによると、最近米国特許庁内で101条に関する新しい研修がされたそうで、考え方が変わったと伝えられたそうです。結果、面談の中で提案した応答案も、数カ月前であれば同条の拒絶理由を解消し得たが、いまではダメだと・・・。 米国特許庁からはまだ何も発表がないため具体的にどのような変更がある/あったのかは不明ですし、当該研修が特許庁全

          特許適格性の議論はどこに向かう?

          US特許庁費用改定(案)

          最近、USPTOの費用についてご質問を頂いたので関連記事をアップさせていただきます。 米国の知財系手続に馴染みのある方は良くご存知だと思いますが、米国特許商標庁(USPTO)は、おおよそ2年ごとに庁料金の一部改訂を行っており、今年の4月には2025年1月から適用予定の新料金案が発表されています。 残念ながら本改定案に対する意見募集期間は終わっており、現在は意見内容を吟味しているところなのだと思うのですが、個人的に気になった料金改定内容をご紹介したいと思います。 継続審査

          US特許庁費用改定(案)

          DOCX続報。Backup PDFを無料で提出可能な期間が延長されました。

          DOCX出願の導入に伴い、USPTOでは今年の6月末まではエラー発生時のバックアップ用として予備のPDF(Auxiliary PDF)を無料で提出することを認めていました(詳しくは過去の記事をご覧ください)。 言い換えれば、来月からはバックアップ用、あるいは非DOCX(PDF)で特許出願をするには$400の追加費用を徴収する、というのがUSPTOの姿勢でした。 ただ、DOCX出願に対する批判・不安の声が絶えないようで、結局上記期間をこれまでの6月末から来年2024年の1月

          DOCX続報。Backup PDFを無料で提出可能な期間が延長されました。

          [速報] 最高裁判決 Amgen v. Sanofi

          米国連邦最高裁判所において実施可能要件について審理されていたAmgen事件ですが、2023年5月18日に判決が下されました。 結論は、満場一致でCAFCの判決結果を支持する(本件特許は実施可能要件を満たしておらず無効)というものです。判決文はこちら。 また、本件に関する概要は下記の記事をご参照ください。 所感 私の個人的な肌感覚ですが、結論としては予想通りだったように思います。 ただ、おそらくですが、この分野(ライフサイエンス)の方たちは、本件の個別的な結論よりも、最高

          [速報] 最高裁判決 Amgen v. Sanofi

          最高裁はAIに興味なし?

          米国特許法において、AIは発明者となれるのか?という議論について以前記事を書かせていただきましたが、先週の4月23日付で米国連邦最高裁判所が本件のCAFC判決に対する上訴を棄却し、最高裁での審理の必要なしと判断しました。 元となるCAFC判決(通称DABUS事件。2022年8月5日)はこちら。 CAFC判決は先例(precedential decision)とされているので、とりあえずはこのCAFC判決がリーディングケースとなるのだと思われます。 本判決におけるCAFC

          最高裁はAIに興味なし?

          近況

          本当はいくつか面白そうな連邦高裁(CAFC)の判例などもメモしてあるのですが、メモを取ってあるだけでご紹介できるほど判決文を読み込めていないので、それはまた別の機会にやりたいと思います。 最近は、時間がないのかそれとも時間を作る努力をしていないのか、なんだか良く分からなくなっており、ちょっと迷走気味です。 が、それはともかく近況報告です。 Noteはまだ続けます!という意思表示だと思ってください。笑 1.それパク 既に3話まで放送が進んでいますが、日本テレビで毎週水曜日