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コンピュータ関連意匠に関するUSPTO内部向け意匠審査ガイダンスの発行

1か月に1度くらいは記事を更新したいと思いつつ、前回の投稿から早2か月が経過してしまいました。継続は力なりとはよく言ったもので、継続するというのは実に難しいものだと実感しております(言い訳w)。

さて、今日は意匠審査基準についてのお知らせです。といっても、外務向けの審査基準MPEPが改訂されたというニュースではなく、あくまでもUSPTO(米国特許商標庁)審査官向けのSupplemental Guidanceが発行されたというお話になります。

詳しくは、政府発行のFederal Register (こちら)をご覧ください。

新しいガイダンスが適用されるのは、本Federal Registerの発行日と同じく2023年11月17日からということですので、既に運用が開始されていることになります。

【概要】

本ガイダンスは、コンピュータによって生成された画像そのものや、ディスプレイやモニタに表示されたコンピュータによって生成された画像、あるいはその一部が、法171条に定める製造物品要件(Article of Manufacture Requirement)を具備するのか、という点についての考え方を与えるものとなるようです。
ただし、本ガイダンスはRulemekingするものではないとの注意書きもありますので、USPTOのスタンスを明確にする意味合いのものと考えられます。

【背景】

法171条(a)は、意匠法の保護対象を”Whoever invents any new, original and ornamental design for an article of manufacture may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.”と定めています。
また、審査基準(MPEP § 1504.01)には、”a picture standing alone is not patentable under 35 U.S.C. 171."と示されています。
上記条文と審査基準を踏まえ、これまでUSPTOでは「製造物品であるコンピュータ画面(モニタやスクリーン)等に表示される画像デザイン(例えば、GUI)は保護対象に当たるが、画像そのものは保護対象に当たらない」としてきました。このため、コンピュータ画面等に表示されない画像、例えば壁面への投影画像、ホログラム、あるいは仮想現実(VR)や拡張現実(AR)で使われる画像についてはコンピュータ画面を必要としないため、保護対象に含まれておらず、産業界からの保護対象の拡充が求められていました。

なお、この点については2020年12月~2021年2月に意見募集がされ、2022年4月21日に出された意見募集結果の報告書では、当該意見募集結果を踏まえた保護対象の見直しをする、と発表されていたものの、随分時間が経っていたので、本ガイダンスを心待ちにしていた方も多かったのではないでしょうか。

【内容】

いろいろと細かい部分は省略しますが、結論は以下のようです。

  • A computer icon or a GUI embodied in a display panel, or a portion thereof, is eligible under 35 U.S.C. 171 because a computer icon or a GUI is an integral and active component in the operation of - i.e., embodied in and/or applied to - a programmed computer displaying the computer icon or the GUI.

受け止め方は人それぞれなのかも知れませんが、"embodied in a display panel"という要件が付いているため、結局、保護対象は拡げません(モニタやスクリーンは必要)、という宣言のように受け取れます・・・。ちょっと期待外れかも知れません。
実際、本Federal Registerの中では、審査官の考慮事項として、"… a claim to the image per se… will not satisfy the article of manufacture requirement, and such a claim should be rejected under 35 U.S.C. 171 for failing to comply with the article of manufacture requirement." という説明が付されています。

個人的には、本ガイダンスは(既に知られている)GUIやiconとしての要件を説明しているだけで、保護対象の拡充などについては何も示唆していない(当たり前といえばそれまでですが、法改正がない以上、保護対象を拡げることは考えていない)のかなと感じます。

なお、本ガイダンスでは、クレームや物品の適切な書き方と不適切な書き方の例であったり、具体的な図面と物品の説明の例(Examples 1 - 5)に対し、それぞれどのように判断するかが比較的丁寧に説明されていますので、実務上の参考になるのではないかと思います。


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