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USPTO:自明性判断のガイダンス更新

前回に引き続き、USPTOのアップデートのお知らせです。

Updated Guidance for Making a Proper Determination of Obviousness

「適切な自明性判断の仕方」についてのガイダンスということですので、主に審査官向けの資料になると思いますが、このガイダンスを把握しておくことで、発明が自明であるとして103条で拒絶された場合に、その拒絶理由が妥当なのか否か、という判断ができるのではないかと思います。

では、具体的にどのようなことが書いてあるのか、という点ですが、新しい判断基準を追加するという趣旨のものではないようです。フォーカスとしては、2007年のKSR最高裁判決で示されたFlexible Approachをどのように適用するべきかという点を、KSR判決の内容、その後のCAFC判決に鑑みて明らかにする(改めて確認する)という点にあるようです。

資料自体は非常に長いので詳細は控えますが、前半部分はFlexible Approachを強調した内容となっており、非自明性のハードルを高めようという意図があるのかも知れません。

ただし、後半部分では、Flexible Approachといっても、審査官には一応の自明性(prima facie case of obviousness)を証明する責任があること、自明性拒絶の根拠を明確に説明する必要があること、なども説明されており、Flexibleだからといっても、審査官に過度な裁量を与えるものではない点にも触れており、どのあたりでバランスがとられるのか(本当に非自明性の判断基準が高まるのか)、今後注目していく必要があるかも知れません。

前半部分だけに着目してしまうと、審査官の拒絶理由が(今以上に?)説明不足な内容となってしまうのではないかという懸念もあります。後半部分まで読めば、拒絶理由通知書において審査官のが果たすべき責任を引き下げるものではないという意図が伝わってきますが、このガイダンスの内容を各審査官がどのように解釈していくのかが気になるところです。後半部分を読まない審査官はいないと思いますが、前半部分の意図を重視(拡大解釈?)されてしまうと、拒絶理由の内容を理解することや、インタビューで非自明性の有無について議論することが難しくなるかも知れません。
一方、実務家としては、後半部分の責任が果たされているのか、という点を精査し、不適切と思われる場合はその点を丁寧に説明していくべきかと感じています。

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