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「情報を運ぶ」ことに関心のあるあなたのために書かれた本10選

不器用ながら、高校生の頃から「情報を運ぶ」ことに関わってきた。
学生イベントの広報、西洋出版史の勉強、塾講師のアルバイト、広告制作、そしてマーケティング。
領域や業界こそ異なるものの、うんせっせと日々情報を運ぶ人間であることに気付いたのはここ最近のこと。
自分の身の回りにある本は一見ジャンルや時代背景が異なるように見えて、すべて「いかに情報を運び、摂取するか?」に向けられていた。

「いかに情報を運び、摂取するか?」という問いをあえて立体的にすると、時代、社会、身体、媒介(媒体)、素材、言語/非言語といったさまざまなパラメータが存在する。
今回はあえてそういったパラメータを統一せず、まとまらない場所に駒を置いてみる、という遊びも含めて本を紹介したい。

ちなみに、前回は西洋出版史についておすすめの書物15選を紹介した。
より歴史的に、俯瞰的に「情報」「書物」をとらえたい方はこちらを見ていただきたい。(一部今回の記事と重複して紹介する本もある。)

野暮かもしれないが、あえて効能についても伝えておく。

・歴史的に情報量、質、伝播のされ方がどのように変わったかがわかる
・情報を様式(フォーマット)と内容(コンテンツ)に分け理解できる
・効果的に情報の伝達方法のヒントがつかめる
・情報の整理、分類、編集、保存のテクニックがつかめる
・情報に関わる人が、どのような工夫・進化・役割分担をしてきたか分かる
・情報摂取する、インターフェースとしての身体が重要であると理解できる


情報環世界――身体とAIの間であそぶガイドブック

ウェルビーイング研究で有名なドミニク・チェン、『どもる体』の著者・伊藤亜紗らのゆるやかなリレーによって結ばれる、「情報環世界」をうまく乗りこなし、理解するためのコツを紹介する本。
「環世界」とは、ヤーコプ・フォン・ユクスキュルが提唱した、生物それぞれが自らの近くによって構成する「環世界」を保有している、というひとつの概念。
本書では人間も同様に「環世界」を保有しており、かつテクノロジーの発達により増大した情報海の中でどのような世界をつくりだし、認識しているか、どのように情報を取り扱うべきかを紹介している。

広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。

「広告業界に就職するぞ!」という私の頭をダイレクトに叩き割ったのが本書だ。
シンプルで分かりやすいながら、伝えられるファクトのインパクトは絶大だ。
伝播する情報の「ボリューム」だけを切り取ってみると、インターネット・SNSなどを通じて現代がペタバイト級と圧倒的なのだ。
その中でいかに情報をつかってビジネスするべきなのか、人間を理解すべきなのか、その入門としてヒントを与えてくれる。

今日からはじめる情報設計 -センスメイキングするための7ステップ

情報をデザイン・設計する、インターフェースをつくりだすには一定の「コツ」がある。
情報の多くが視覚情報から受け取られており、情報の選定・圧縮・配置によって受け取られ方を大きく左右することができるからだ。
その「コツ」を分かりやすくワンステップずつ紹介してくれるのがこの本だ。
デザイナーやクリエイティブディレクター、もしくはその業務に携わる方には必携の1冊だ。
より深く情報デザインの世界に潜りたい方は、下記2冊もすすめたい。


ビジュアル・コンプレキシティ ―情報パターンのマッピング

インフォグラフィックスの権威、マニュエル・リマ先生による情報ビジュアライゼーションの歴史とマッピングについての1冊。
樹形図とネットワーク図に始まる人間の思考体系の変化についてダイナミックについて触れられており、ただの「インフォグラフィック本」と思ったら大間違い。
ページを繰るごとに人間の思考はこのように様式づけられ、印象づけられてきたのかとただただ圧倒される。
個人的には同じ木というオブジェクトに端を発するツリー図とリゾーム(根)構造について興味深く感じられた。

プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか?

ディスレクシア(識字障害)をひとつのトピックに、人間がいかに読書を通じて情報を摂取し、脳を発達させてきたか?を心理学的、脳科学的、教育学的観点から縦横無尽に紹介する名著。
シュメール文字に始まり、中国語・日本語といった言語学的認知の差異についても触れられており、何度読んでも発見と謎が得られる。
読書はただ単に本のテクストと向き合う行為なのか?それとも、本を通じて何か巨大なものと対峙しているのではないか…?そういった問いにもヒントをくれる奥深い1冊だ。

記憶術全史 ムネモシュネの饗宴

タイトルを見て侮るなかれ。
これは単なる「記憶術」についての本ではなく、「人がいかに忘却の恐怖を退け、記憶を保持しようとしてきたか?」を語る1冊である。
記憶術の権威、メアリー・カラザースの著書から引用もしつつ、記憶の宮殿をいかにイメージとして構築してきたか?知識を秩序立てて保管しようとしてきたか?を、難解な言葉を使わずに伝えてくれる。
何より、著者が意図的に現代の記憶と忘却のあり方について思考しつつ、歴史を参照しようとする態度を保っており、フラットな情報の取り扱い方についての考え方を提供しているのが素晴らしい。

消費者行動論体系

マーケティング・広告に関わる方、知覚モデルについて知りたい方は何も言わずに本書を読んでいただきたい。
そもそもマーケティングやら消費者行動論やらといった学問は戦後に生まれた極めて「新しい」学問だ。
しかし、もし本記事もしくは西洋出版史ブックリストで紹介されている本を1冊でも読んだことのある方は、この本を読めばその情報管理の技法がいかにビジネスとして応用されたかが分かるだろう。

情報爆発 初期近代ヨーロッパの情報管理術

「情報を伝達する」「文書を管理する」というのは、はるか昔写本時代から続く壮大なテーマといえる。
情報爆発は決して現代特有のものではなく、大航海時代及び活版印刷の普及を通じて情報の流通促進によっても確実にもたらされていた。
ある者は前述のように記憶術を極めることで解決しようとしたが、それだけではこの世を渡るあらゆる知を網羅することはできない…
では、文書や書物をどのように管理してきたのか、そもそも「管理するための概念」として何を採用してきたのか?答えは本書の中にある。


以上、「情報を運ぶ」ことに関心のあるあなたのために書かれた本10選でした。
最近分析や調査についての本の紹介もよく求められるので、いつか書く。

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