見出し画像

ノンデジ旅 #5

3日目

 最終日がやってきた。短い旅だった。行く場所はもう決めていた。三角だ。しかし、ただ三隅に用事があるのではない。A列車で行こうという九州のD &S 列車に乗る為だ。
 しかし、私には気掛かりなことがある。あまり、熊本市内を回れていないのである。熊本城ですら、まともな姿を見ていない。どうにか時間を割いて、市内観光ー三角という流れで巡ることにした。

  熊本地震以来、熊本城の姿は見ていない。10年前に来たときは、天守閣の偉大さに感服したものだった。熊本城を見物する時間が私の立てたグダグダ日程により、午前9時までと言うことで熊本城に熊本城に入らず、お堀の外から石垣を見物することにした。お堀の周りは、皇居のようにランニングしている人が多かった。しばらく歩いていると少々の案内板があった。熊本地震からの復興の様子について書かれていた。
 石垣の方に目をやると、部分的に石の色が違うのに気がついた。色が変わっている部分が石を積み直したところだろう。石の位置は震災前と全く同じ場所に積まれているらしい。職人さんたちの並ならぬ努力の産んだ結晶だなと思った。日本の世界に誇れるものだと思う。本当に素晴らしい。

補修中でしょうか
石垣の色が変わっているのがよくわかる

 いよいよ三角へと出発する。帰りの飛行機の時刻的に、行きは普通列車を使い、帰りに念願の「A列車で行こう」に乗ることにした。朝方に熊本城を見学したことにより、三角の滞在時間はおよそ1時間ほどしかなかった。そんな不安を抱きながらも、気動車のキハ40系に乗り熊本駅を後にした。出発するとすぐにワンマン運転をしているという旨の放送が入った。しかし、車掌と思われる人物が後ろからやってきた。なにかと思い観察していると切符の検札をしているらしい。令和の時代に在来線で検札の文化があることに感動していた。なぜ検察をするのかというと、熊本ー宇部の区間はICカードが使えるのだが、宇部以降から三角までの区間はICカードが使えずに切符のみの対応となるらしい。車掌さんは客の行き先を一人一人聞いて、宇部以降にいくICカード利用者に切符を発行していた。大変な作業である。なぜ、そんな中途半端なことをするのだろうか。
 三角線の眺めは素晴らしかった。熊本を出て2、30分もすると、進行方向右側に海が見えてくる。海には棚田が多く並んでおり、自分が九州を旅していることを再確認することができた。

キハ40

 列車が三角港に到着すると、帰りの列車までのタイムリミットは後1時間ほど。三角駅があるのは三角東港で世界遺産に登録されている三角西港とは離れているらしい。どうせなら西港の方へ行ってみたい。そんな気持ちから、時間との賭けに出ることになった。西港に向かうバスの時刻表を見ると、ちょうど私のついたときに出発するバスがなかった。走るしかないと思った。三角駅から西駅までの距離は2キロほど。走ればなんとか1時間以内に帰ってくることができる。そんなふうに考えていた頃には既に私は走り出していた。

つづく

 

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?