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山にいる理由

時よりこれを考える。

私が児童養護施設にいた頃、一人の先生が山を好んでか、夏休みなどを活用した施設行事はとにかく登山に連れて行かれる事が多かった。

中学生までに富士山4回、北岳、奥穂高、八ヶ岳、丹沢、多摩川原点登山など、数々の山に登った。中学校2年生の時に登った日本標高第二位を誇る北岳では、小屋泊で寝れず、寝不足山行で人生初の高山病にかかり、同行した同級生の女性に荷物を背負ってもらった苦い思い出がある。

当時は山の魅力なんて良く分からなかったし、
『富士山へ登って楽しかったけど疲れました』的な、夏休みの作文や絵日記のネタにしかならなかった。レンタルシューズにお下がりザックで靴のサイズも微妙だし、ザックはダサいし良い思い出なんて大してない。

大人になって、トレーニングを目的にジムに通い出し身体を鍛え直すようになった頃、山でも登ってみるかと思いつきで登りに行ったのが滋賀県にある伊吹山だった。人気の山でもあり、標高の割に登り応えがある山として定評があったのでこの山にしたのだが、眼下に広がる琵琶湖の雄大な景色が気にいって、その後、何度も伊吹山に登りにいくようになった。最初は軽いトレーニング程度で、程よく息があがる苦しさと足腰が鍛えられていく感覚が心地よいくらいでしたが、景色を眺めるうちに他の山ではどんな景色が見れるのか気になり出したのだ。

百名山 伊吹山

興味本位で、山を調べていたら日本には沢山の山があり、幼少期に登った山は日本の標高順位TOP3だったこともその時に知る事となった。どうせなら同じ山ではなく、色々な山の上から景色を見てみようと歩き出した。カメラと三脚を片手に、山の上では自分の後ろ姿と絶景を必ずセットで映すルールも加えて、とにかく歩き続けた。何年もそんな事をしていたら、気付けば見てきた景色は数えきれないほどになっていた。

北アルプス
奥穂高
中央アルプス

三年前までは、僅かな時間を見つけてはとにかく山へ行った。もはや意地とか中毒みたいな要素もあったと思うが、まだ見ぬ山を求めて歩き続けた。山をやってる人には分かると思うが、一度山にハマると取り憑かれたように登り続ける事になる。そのきっかけや影響を受けた山は人それぞれだと思う。本当に山は不思議だ。

私はソロで山に登っていた事もあり、リスクヘッジで登頂を諦める事もあった。それくらいの慎重さがなければ怖い想いをした可能性もあるだろう。北陸の白山や、近畿の大台ヶ原では遭難者を救助した事もある。常に安全への心がけは一番に置いていた。登山届、地図アプリ、エマージェンシーセットの携帯など、登山をリスクあるレジャーと認識して真摯に向き合いながら楽しんだ。

六甲全山縦走
ダイヤモンドトレイル
大峰山塊
尾瀬マウンテンマラソン

トレランなど競技レベルではありませんが、ダイトレ、六甲全山、大峰などロングトレイルへのチャレンジや、昨年はスカイランニングにも挑戦した。歩けるうちはとにかく歩いた。同じ景色には二度と出会わないし、手付かずの自然に身を置く事で、都会にいる時の雑念を払拭できる。そんな想いが私の足を突き動かしていた気がする。

御嶽山
3000mの世界
ご来光に照らされる槍ヶ岳への縦走路
石鎚山

山によって見せてくれる景色はまるで違う。
都会にいれば建物が取り壊されたり新築されたり、
新しいお店が出来たり閉店していたり、めまぐるしく様相が変わります。都会でビジネスをしていた私はそんな都会の変化に疲れていたのかもしれません。山にいけば不動だが四季にとんだ景色が受け入れてくれる。そんな瞬間が心地よい。その感覚に魅了され山を登っていたのだと思います。

自然の前では人間なんてちっぽけだ

大きな山の中では人間なんてとても小さな生き物です。そう思うほど山は大きく私を包み込んでくれます。どんなに人生が順調だったとしても、自分は自然の前では何者でもないという謙虚さを山が教えてくれる。いつまでもそんな謙虚な人間でありたい。

私にとって山は人生の教科書です。
その学びを得る為に私は山に身を置いているのだ。

尾瀬小屋
工藤友弘

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