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過ぎ去りし日々に

6月最終の営業が終わった。
上山46日目。忙しかった6月が過ぎ去った。

今週に入り天気も悪くキャンセルも相次いだ。
月曜日から金曜日まで嘘かのように静かな営業だった。東京からの人員応援もあり、既存スタッフの休暇回しや設備修繕、布団干し、備品整理など有意義な時間を作る事が出来た。

仲間達と頑張った6月

概算だが6月の1ヶ月で宿泊、レストランを合わせると尾瀬小屋に訪れたお客様は約6500~7000人にのぼる。
これだけのお客様を我々8人(写真にいない翼くん含む)と助っ人数人で乗り切った。これ以上望む事は何もない結果だろう。あるとするならば、お客様やスタッフへの感謝だけだ。心からありがとうと伝えたい。
最終日は私と木谷さんで作った夜ご飯とアルコールやデザートで6月最後の夜を静かに労った。変わらぬおもてなしやサービスが行き届くよう一致団結し7月の商戦へと挑む。

7月のお花はどうだろうか (写真は昨年)

6月のワタスゲは恐らく霜の影響を強く受け、真っ白なお花畑とはいかないだろう。7月のニッコウキスゲや美しい高山植物がどのような表情を見せてくれるか楽しみだ。7月も6月同様の忙しさが待ち受けている為、お花鑑賞する余裕がないかもしれないが出来るだけ植物や景色の移り変わりを捉えたリポートをSNSを通じて投稿していきたい。個人的にはアヤメ平のキンコウカが一番の楽しみだ。果たして見に行けるだろうか。

雷雨の中での歩荷も

一昨日、荷物が間に合っておらず、自分の山小屋の荷物を歩荷する事を決め、藍澤シェフと翼くんと私の三人で片品村へと下山した。歩荷さんの仕事や気持ち、考えなども含め、更なる理解を深めるために毎シーズン一回は本気で歩荷すると決めている。今年はそんな日にまさかの雷雨に見舞われた。重量は60kgで鳩待峠から見晴まで。荷付けが甘かったのか、担いだ瞬間に荷物の重心が下がり、鳩待峠から山の鼻までは苦痛でしかなかった。たまたま、山の鼻で行き合った歩荷の萩原雅人君に荷付けを再指導してもらい、随分と担ぎやすくなった。仕事帰りにも関わらず申し訳ない事をしたという気持ちと、ありがとうの気持ちでいっぱいだった。尾瀬ヶ原に鳴り響く雷鳴と、叩き付けるような豪雨が体力を奪う。いつも歩荷さんを見る側の立場ですが、実際に担ぎ手となった人にだけ分かる辛さがある。帳場で身体を休めながら『歩荷さんはいつもここで何考えて座ってるのかな』とか『ここでドリンク飲むのかな』『次はどこで休憩するのかな』なんて事ばかり考えていた。カメラで歩荷さんを撮っていた自分の記憶とこの想像を重ねるのが楽しみというか、荷物を運ぶ唯一のモチベーションだったかもしれない。そんな事を考えながら、ゆっくり確実に尾瀬小屋まで歩を進め、なんとか辿り着く事が出来た。歩荷さんの身になって自ら歩く事で、改修すべき木道区間や帳場、切除しなければ危険な枝木などが見えてくる。これは歩荷さんに委ねる事ではなく、国立公園の維持管理者や我々のような事業者の責任だと痛切に再認識した。我々は荷物が当たり前に担がれてくる事に慣れすぎている。もっともっと彼ら歩荷の為に出来る事をすべき状況にある。小さいボリュームでも良いから彼らの為にやれる事をどんどんやろうと再び強く心に決めた。

毎日のように叶う常連さまとの再会

こうして大切にしているお客様に支えられている割合が大半。日々感謝する傍らで、サービス業ならではか、心ないお客様がいるのも現実だ。電波がない事や客室にテレビがない事に激昂する方、『車で行けないならキャンセルするわ』とか『昔から来てるのにビールとか出ないのか』とか、中には『この山小屋は網走刑務所のようね』なんて揶揄するお客様もいる。昨日は2名2畳の個室をご案内したところ『人気にあぐらかいて殿様商売』なんてキャンセルメールが入ってきた。本当に色々なお客様がいるなとしみじみ。それでも、我々はどんなお客様も平等に対応するし、全力でおもてなし致します。しかし、私はお客様と山小屋は人として対等でありたいと思います。ご飯が美味しくないとか、スタッフの対応が悪かったとか、お風呂がぬるかったとか、提供するものに落ち度があった場合、どんなに厳しい意見や叱咤を受けるのは当然の事だと思っています。謝罪もするし、改善努力も全力を尽くすだろう。但し、小屋の悪口や誹謗中傷というものは到底別物です。スタッフが悲しむ様な事をするお客様はお客様ではないし、私が絶対に許さない。山小屋側も利用者にマナーや節度を要求するのは至極当然。昨日も雨キャンセル数十人。断った常連様も同じ数だけいただろう。常連様には他の山小屋を薦めるのだがそれでも尾瀬に来て下さる。でも、平等に予約を取っているからこそこうなるし、気軽なキャンセルを防ぐ手だてを講じるのは難しいのが現状。それでも会いに来て下さる常連様に本当に支えられている。心から感謝しながら前進しよう。

特製焼きカレー

色んな感情と向き合いながら疲れる時もあるし、
モヤモヤすることもある。
そういう時はウマイ飯食って早く寝るが正解。

今夜はスタッフの為に作った焼きカレーを振る舞い、
新たな一週間に弾みをつけ再出発だ。

尾瀬小屋
工藤友弘

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