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小説「光の物語」第36話 〜新年2〜 

「殿下、ぼくお聞きしたいことがあります」
暖炉前で剣の手入れをするディアルに従者見習いのパトリックが言う。
「なんだ?」
刃先の様子を確認しながらディアルは答えた。
「あの・・・殿下は妃殿下をどこで見つけられたんですか?」


思わぬ質問にディアルは虚をつかれ、
「どこでって・・・野原に落ちてたわけじゃないぞ」と笑った。「なぜそんなことを聞く?」
少し考えたあと、パトリックは恥じらいながらも答える。「・・・お嫁さんをもらう年になったら、僕もそこへ行こうと・・・」
その返事にディアルは吹き出しそうになるのをこらえた。


「・・・そうだな、妃殿下は隣の国から来たんだ。リーヴェニアだ。わかるか?」
パトリックは神妙な顔で頷いた。
「妃殿下がこの国へ来たのは国同士の取り決めによるものだ。我が国とリーヴェニアの結びつきを強めるために。だが、どんな時でも結婚交渉は一大事だから・・・」


話の難しさにパトリックの目は泳ぎ出し、それに気づいてディアルは話の道筋を変える。
「・・・つまり、ただリーヴェニアに出かけて行ってもお嫁さんは見つからないということだよ。まずは仕事を覚えて立派な騎士になることだ」
剣を研ぐ砥石を渡しながらディアルは言う。
「はい・・・」ちょっとがっかりした様子でパトリックは道具を片付けた。


「そういえば字の勉強はどうだ?」パトリックが母に手紙を書いていたのを思い出してディアルは尋ねる。
「この間、また母に手紙を出しました。前よりもいろんなことを書けました・・・ナターリエ様がつづりをいろいろ教えてくれたので」
「いいことだ。そうやって少しずつ自分を磨いていくことだよ。そうすれば良い騎士になれるし、お嫁さんも見つけやすくなる」
「はい!」明るい展望を示されてパトリックは元気に返事をした。
「ナターリエ殿はいい方だな」
「はい!」
少年の無邪気さにディアルは笑みを浮かべた。


新年 3へつづく


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