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今週の読書記録

この世にたやすい仕事はない 「津村記久子」

津村記久子さんの作品って何か読んだことあるかなと記憶を探ってみたら、「ポトスライムの舟」を読もうと思って、読んでないっきりだったなぁと思い出しまして、そもそも固い作風の人だと思っていたら、とても読みやすい文章で、そうだ「津島佑子」さんと勘違いしてたんだって、まぁどうでもいいことが判明しました。結局、初めての津村記久子さん作品です。

肝心の作品ですが、ストレスで仕事をやめた女性が職を転々としていくお話です。第5話、つまり5つの仕事を体験していくのですが、どのお仕事もクセがあって、非現実的なんですけど、人間模様とか主人公の心理状態は妙な現実感があって、そのズレてる感が心地よかったです。
第1話は仕事内容も展開も含め、陰惨とした感じがあって、どんよりと始まります。そしたら第2話以降は逆にポップさがあって、あれ?書いた時期が変わったのかな?と勝手に想像しました。

どの仕事も心に負荷の少ない淡々とした仕事なのですが、その淡々さ具合が絶妙に変わっていくのもこれまたいいです。
ペンキで同じ色を塗り続ける単調さと、塗り続けるのは変わらないんだけど、塗る色は多彩になっていく感じです。話自体もだんだんと色鮮やかになっていくのもいいです。
タイトルが自己啓発本っぽくて、勘違いする人もいそうですが、あくまでも小説です。しかも若干ファンタジー要素ありですので、お気をつけて。

ただ、下手な自己啓発本よりも、明日へのエネルギーと仕事へのモチベーションをもらえるのは間違いありません。


「模倣の殺意」 中町信

たまに推理物が読みたくなります。
それでタイミングよく本屋さんで大々的に紹介してあったので買ってみました。
推理物って一定数ファンがいて、それはもう使い古されたトリックとか、今の時代風じゃないので違和感があったとか、人物描写が不自然だったとか、結構評価辛辣なんです。この作品も約40年前に書かれたので、描写が一部古い感じが確かにするなぁと思わないことはないですが、私は気になりませんでした。トリックを明かしてしまえば、なんだそんなもんかって感じですが、私はうおって感じで読めました。
ただ、トリックがわかっても少々わかりにくさが残って、それを確認する手間がかかりましたが、まぁ不満点はそれぐらいです。楽しく読めました。


「そして、バトンは渡された」 瀬尾まいこ

帯にはこう書かれています。
「私には父親が三人、母親が二人いる。家族の形態は、十七年間で七回も変わった。でも、全然不幸ではないのだ」

異様ですよね。親が変わることって、子どもにとっては大きな出来事のはずです。必ずしも不幸なことばかりではないですが、何回も変わるのは普通に考えたら不幸のはずです。でも、この話には悲壮感が全くないです。

だから、家庭環境で苦労した人が読んだらこんな物語は不自然だって思う人がいるかもしれません。
ただ重いテーマだから、書き口が重くなる必要もないですし、むしろ重いテーマを明るく書くことで救われる人もいる気がします。

それでお話自体は、なぜそんな家庭環境になったのかを現在と平行して描かれているのですが、少し冗長です。
ただ、話の終盤、主人公の女の子が結婚するって場面になるのですが、それまで女の子の目線だったのに、最後だけ「第三のお父さん目線」で書かれているんです。
私、娘が生まれたばかりでまだまだ結婚のこととか考える時期ではないんですが、無償の愛を注いでいった娘が旅立っていく描写なんかを読んでいたら、もう他人事とは思えなくて、涙を堪えるのに必死でした。

多分、子どもがいなかったらここまでハマらなかったと思います。
やっぱり、本を読むタイミングってとても大切です。

最後に響いたセリフを引用して締めさせてください。

「自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなんて、すごいと思わない?」


あと、この読書記録ですが、今回からよかった本しか書かないことにしました。よくないものを人に紹介するのは好きじゃないですし、好きなものをどう紹介するかに頭を使う方が、いいなと思ったからです。
何をもってよかったと判断するかはその時々ですが、人に勧めたいってのを1つの基準にします。
ということで頻度も少し落ちるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。

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