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DESIGN : 箕面ビール [BATON]

大阪・箕面市にある箕面ビールから生まれた新しいビール、BATON
ステンレスタンクで発酵させたビールをフーダーと呼ばれる木製のタンク
で熟成させた後、更にボトル内で瓶内二次発酵を行うという、まさに「バトンリレー」のようなビールです。

そんなBATONのラベルデザインをOUWN・石黒が担当。今までにない新しい味わいをボトルでも表現しています!

発酵を重ね、受け継がれる酵母

石黒 : 箕面ビールは、今回の“BATON”以外にもキャッチーなコンセプトやデザインだったり、美味しいビールがたくさんあって、ファンも多くいる有名なビールブランド。今回は、元々自分と仲の良いMEETING.inc・三村恵三さんからラベルデザインの話をもらいました。

普通のビールは、ある程度酵母が成長したら成長をストップして味を安定させて、賞味期限が設定されて市場に出ていく。だけどこのビールは瓶内で更に発酵させていくというもので、作り方が特殊なんです。だから賞味期限もなく、ワインみたいに熟成されて、味が変化していくビールなんですね。木の樽で発酵させていくんですが、この樽も日本にはなくて海外から取り寄せていると伺いました。手間も時間もかかっていて、味わいも新しいものになっていると思います。

石黒 : BATONっていうネーミングは三村さんにアイデアを頂いたのですが、ステンレスタンク・木のフーダー・ボトルの3つの発酵ポイントがあるから、まるでバトンリレーのようだな、ということから決定しました。それに加えて木のフーダーは乾かすと酵母が死んでしまうから、1回その樽で作って瓶に移し替えたら、すぐに次のビールをフーダーに入れなくちゃいけないんです。木の樽だから香りや味が染み込んで、例えばフルーツを入れていたとしたら次のビールにもその味が微かに入る。1本前のビールの要素や、先代の酵母が受け継がれていくんです。フーダーの中でもバトンリレーが繋がっていくので、BATONっていう名前がピッタリだなと思いました。
木のフーダーは2つあるので、初回はそれぞれの樽で01と02ができて、その次は03と04…という感じで作られていきます。03・04は01・02とはまた違う味わいになる。ナンバリングでずっと続いていくビールです。

ー 01・02はどのくらいの本数作られているんですか?

石黒 : 1つの樽で2,000本だったかなと思います。酒屋さんに半分、一般の方向けに半分用意していたようですが、発売して即日で売り切れちゃったみたいで。ワインみたいなイメージで、その年に何本って決まっている感じです。特別感もありプレゼントにも適しているので、ギフトやスペシャル感も考慮したデザインを考えました。

「見えないバトン」を表現する

ー ラベルのデザインは2種類ありますね。

石黒 :  最初は1つのラベルになると思っていたんですが、5案ほど提案して箕面ビールさんと話していたところ「2つの樽があるから、ラベルも2種類で表現するのもいいね」という話も出たりで、通常盤と今後の特殊版として、2種類を採用頂きました。01と02でラベルを分けているわけではなくて、デザインとして2つあります。

ー BATONの文字が入っているデザインと、形状のみの斬新なデザイン。どちらもカッティングが特徴的です。

石黒 : バトンというネーミング、発酵ポイントが3つあることをどうやってデザインしようかと考えた時、見えないバトンっていうのをラベルで表現したいなと思いました。もちろん箕面ビールの方たちが味をかなり設計してくれるのですが、瓶内でも発酵させていくため飲む時期により最終的な味わいは微妙に変化し続けていくから作り手にも分からないし、今後生まれる味も予想ができない。「見えない」を表現するため、周りの四角の形状や文字が見切れていることで、そこに四角があるように「見える」仕掛けです。

ー もう1つは文字を入れず、想像を膨らませるような形が印象的です。

石黒 : そうなんです。片方は「BATON」というネーミングも入れて、スタンダードバージョンってイメージ。もう片方はより攻めたデザインで、特別感を出していますね。
この形は漢字の「人」を連想して、3本を繋げることでの連鎖をイメージしながらも、箕面の「M」っていうワードもこのバトンで表現できるなと思いました。このビール自体が変化や工程を楽しんでいて、新しい試みを楽しむもの。なので商品名を出すものと、ラベルの思いを表現するもので2軸で考えてアプローチを2つに分けました。自分でもかなり攻めてると思っていたので、箕面ビールの方がOKしてくれたのは驚いたし嬉しかったです。

ー 上に巻かれたラベル部分がリボンのようで、ギフト感を増している気がします。

石黒 :  お祝いとかプレゼントを感じるような雰囲気で、という話もあったから、そこも意識してますね。ここはナンバリングと味の説明も入っているので、毎回ナンバーごとに内容が変わります。

ー Tの部分が変形していて、アクセントで可愛いですね。

石黒 : Tの部分は実を言うと… 三村さんがバトンの綴りを僕に送ってくれた時「BATTON」だったんです。Tが1つ多かった。もちろんすぐに「ごめん、スペル間違えてた」って連絡が来て(笑)。
でも、そのおかげで2文字ずつ縦で組んだら面白そうだなと言うのが頭の中に生まれ、「T」が1つだったので縦組みを諦めるのではなく、ちょっとデザインの余白や奥行きを伸ばすチャンスだな、と思いました。今回は「積む」とか「消す」とかを意識した文字組みにしていたので、Tを横長にしてみたらテーブルみたいに見えて、テーブルに「A」と「B」の2種のビールをONする(置く)っていうのも意味として合ってるんじゃないかなと。結果これになって良かったなと思います。ちなみにフォントは、最近よく使ってるEiko。

ー ラベルの幅は、最初にこれくらいかなってあてながら決めていく?

石黒 : そうですね。瓶に合わせて紙をあててみて、地道にサイズ感を見ていきます。入れたい情報量もそこそこあったから、ラベルが細すぎても入らない。そもそも今回のデザインに情報は向いていないから別添えにして、円でも後ろのラベルでもなく、距離が稼げてしっかり見れる場所で、と思って肩ラベルの形・この位置で情報を分けることにしました。テイスティングノート(肩ラベルに入っているビールの説明)の部分はナンバリングによって変わるので、内容量が多少変わっても対応できるようにしています。

斬新なデザインは許容量があってこそ

石黒 : ボックスのデザインも2種類あって、こっち(↑写真左側)のデザインはバトンがつながっていく、酵母が動き回る、というようなイメージで作りました。パッケージ側面にバトンを彷彿させる四角以外に円を入れているのは、発酵によって見え方や味が変化したり、酵母の連鎖もあるから、循環するという意味もあります。

ー 写真右側のデザインは、潔いラインが気持ちいいですね。

石黒 : こっちのデザインでは、「見えない」って部分をより意識しています。樽の中や瓶の中で、酵母がどうなっていくのかは良い意味で分からない。もちろん作り手の人が途中で味を見て、品質や美味しさは保証されているのですが、瓶に入れた1年後にはどんな味になっているかは誰にも分からない。前の酵母と合わさった時にできる次のビールの味も分からないから、見えないもので繋がっていくバトン、そこを楽しんでいくっていうイメージで、バトンって文字をあえて見せないデザインにしました。

石黒 : 上面には共通して「BATON」の文字を入れているので、どこかで補填しています。「見えない」を表現したラベルって普通の案件ではなかなか通らないと思うので、箕面ビールの方達の許容量が大きくて、自分の提案を受け入れてくれたのは嬉しかったですね。

石黒 : 色も最初は黒1色にしようかと思ったんですが、ギフトとして送ることを考えると2色使って高級感を出してもいいんじゃないかなと。ベースの紙は茶紙を選んで、クラフトビールっぽさとフーダーの木をイメージしています。

言葉で表せない!新しい味わい

ー 実際に飲んでみて、いかがでしたか?

石黒 : もうね、最早これはビールの概念を変えてくれます!ビールって喉越しが良いって言うけど、ゴクゴク飲むと言うよりは泡が細かいからシャンパンみたいに少しずつ注ぐイメージ。01はIPAで度数も少し高く、コクがあって美味しかった!02は酸味があって、香りもスッキリと爽やかでこれまた美味しいです。
今回は初なので、その中でもスタンダードなものだと思いますが、毎回その時期に採れる果物とか旬なものを一緒に合わせたりで作る時もあると思うので、季節のものや地域の良さが活かされたビールになっていくと思います。樽が違うと味わいもかなり変わるので、毎回奇数と偶数のボトルで違いが出ますね。今回の01・02も、色も味も全然違う。
どちらも美味しいですが、自分は01の方が好きです(笑)。味は言葉で説明するのが難しいので…飲むのが早い!(笑)

ー 味も香りも気になるところですが、もう01と02は手に入らないんですよね…!03と04はいつ頃出るんでしょうか。

石黒 : 確かに01と02は箕面ビールさんのサイトでは購入できませんが、酒屋さんに卸しているところは多くあるので、まだまだ手に入れられます!
春夏が01と02というイメージで、1年に2クール発売時期があると聞いています。なので秋冬で03と04が出るのかなと。きっとすぐ売り切れてしまうと思いますが… 買いたい人はオンラインストアSNSを要チェックです。ちなみにサイズは大きい方で750ml、小さい方で375ml。お酒を飲む人なら1回で飲みきれる量ですね。

石黒 : あとはもしかしたら、取り扱いのあるレストランで出会えることがあるかも。自分もどこかご飯を食べにいく時にお店で出会いたいです。(先日出会えて感動!)
別件の話ですが、こちらもデザインをしている日本酒の三好に初めてお店で出会えた時は感動しました。中目黒のお店でADの出井さんと一緒にご飯を食べていて、日本酒で何かオススメありますかって聞いたら出てきたのが三好で、「えっ」ってなりました(笑)。出井さんとめちゃくちゃテンション上がったのを覚えてる。お店の人ともすぐに仲良くなりました!ちなみに、三好さんには既にBATONを飲んでいただいて、絶賛でした!

ー それはめちゃくちゃ嬉しいですね!お店の人もラベルをデザインした人と会えるなんてなかなかないし、お互い嬉しいですよね。

石黒 : それが縁で、作り手の三好さんが東京に来た時にお店に一緒に行ったりもして。
あ、そうだ。いきなり話変わるんですけど、ボックスのここの部分、筆記体で書いている文字は「Baton」なんですが、ちょっと見方を変えると… M、i、n、o、h…で、箕面なんです。

BatonとMinoh、2つの言葉として認識ができる

ー ほんとですね!ラフなライティングだなとは思っていましたが、よーく見ると気づくかも…!

石黒 : 筆記体で「Baton」を書いていた時に、Bが少しMに見えて、これはどうにかMinohにもBatonにも見えるようにできるんじゃないかな?って考えて。元々は最初のラベルデザインをしていた時に入れてた案なんですが、最後にこのボックスにスライドして入れました。キリンビールもパッケージにカタカナでキリンって言葉が入っていますが、そういう小さなアクセントになるかなと。お酒の席ってちょっとした話のネタがあると会話も進んだりすると思うんです。なのでこれも会話の1つになれば嬉しいし、楽しんでもらえたらいいなと思います!

BATONの次回発売は7月以降販売を予定!(2022年5月現在)

CL : 箕面ビール / @minohbeer
CD+C : KEIZO MIMURA(MEETING.inc) / @keizo.mimura
AD+D : ATSUSHI ISHIGURO(OUWN) / @ai_ouwn

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聞き手 ・ 執筆 : 星成美 / @castlru


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