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人工股関節全置換術ー術式による筋力の差ー

以前の記事で人工股関節全置換術(THA)にはその侵入方法からいくつかに分けられることを記載しました。また、その侵入方法でどの筋を切開するのか、もしくは筋を切開しないのかの違いがありましたね。

単純に考えると術後の筋力に差が生まれる可能性がありますね。実際の研究ではどのような結果になっているのでしょうか。



参考文献

鵜養拓, 他. 人工股関節全置換術のアプローチが術後筋力に与える影響についての検討-PLとALSの比較検討-. 東日本整災会誌, 2021,33: 59-63.


方法と結果

この研究では、後外側アプローチ(PL)と前外側アプローチ(ALS)で、術後の筋力にどのような影響が出ているかをHHDを使用し調査していました。

結果をまとめると、PLはALSと比較し有意に

・手術時間が短い(平均値(中央値?)では約2倍短い)
・SLR可能時期が早い
・杖歩行開始時期が遅い
・術後2週での股関節屈曲筋力が強い
・術後2週から6ヶ月までの股関節外旋筋力が弱い

となりました。逆に、中殿筋などの股関節外転筋力などには有意差は見られませんでした。


まとめ

術式による違いとしては、股関節外旋筋力の弱体化は懸念しないといけない部分かと思います。
股関節の外旋筋群は股関節の安定性に寄与しています。
脱臼予防や歩行の獲得に向けても、外旋筋の機能向上はリハの目標となるかと思います。
また、感覚器としての役割もあります。どの程度影響が出るかは不明ですが、歩様などにも影響が出そうですね。


PLとALSでは股関節の屈曲筋力は短期成績で少し差が出ましたが、ALSの筋間切開のおかげかその後は回復が見られました。
中殿筋などに差が出ないことは少し驚きでした。最近では、手術中になるべく筋の切開を少なくするように注意することがあるそうです。
外旋筋の筋力低下を見るとやはり切開による筋力の低下が起きており、歩行などにも影響が出てきそうです。また半年経ってもその筋力に差があることには驚きました。
この結果を受け介入方法の検討をしてみます。

ではでは

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