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僕はおまえが、すきゾ!(20)

乾杯をしてから、1時間後、僕は酔いが回ってきていた。古賀さんは酔っているのか、酔っていないのか分からない様子で、自分のファンタジー愛を只々、語り続けていた。優作はその話を聞き、今度ぜったい観るよー、と首を上下に頷かせるばかりだった。
僕は古賀さんの話にまるで興味を示さずにいた。古賀さんはハリーポッターが好きらしい。
古賀さんはハリーポッターの素晴らしさを僕と優作に説いていた。
僕は不機嫌に一言漏らした。
「そんなの、どこが面白いの?」と。
おい!、と優作が僕をたしなめた。
「武田さん、ハリーポッター、観た事ないんでしょ?一度、観て下さいよ」
僕の観る映画のジャンルは、ファンタジーは専門外だった。特に魔法とか空想の生き物などは、もっての他だった。大体、魔法なんて、非科学的で論理的ではない。魔法こそ、映画の中で吐いてはいけない嘘に他ならないと思っている。
「ハリーポッターは、決して非科学的な物語じゃないんですよ」
彼女はそう言った。
彼女の言い分はこうだ。
ポッターは、そうハリーポッターは、初めから魔法を使えたわけではないんです。ポッターの通うホグワーツ魔法学校で、魔法を学ぶんです。
そうして、ポッターは魔法の力を身に付けて、一緒に魔法を学んだ仲間と共に、困難に立ち向かう友情の青春物語なんです。
「青春物語ねー」
僕はその話に納得せずに、やはりハリーポッターを好きになれなかった。
絶対面白いから、今度一緒に松下さんの家で観ましょう、ハリーポッター全8作。
八作もあるのかよ、ハリーポッターって、と僕はため息を吐いた。
「そうだぞ、宏人。こんなに彼女が言ってくれてるんだから、一緒に今度、観ようぜ」
優作は只、彼女と映画が観たいだけなのだ。
それがどんな映画でもいい、只、彼女と時間を共有したいのだ。
俺、ちょっとトイレ、と言って優作は席を立った。
二人の間に沈黙が出来た。彼女は先程までのテンションがまるで嘘のようの静かになった。
「僕、多分、君とはうまくやってけないな」
僕が呟く。
「別にいいんじゃないですか?付き合ってる訳でもないし」
彼女はサラリと言うと、私もトイレ行ってきますと、席を立った。
僕は何故か彼女の言葉に敗北感を感じていた。
 

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