なぜ、無印食品は「コオロギせんべい」を発売するのか。
2020年5月20日。衝撃の「コオロギせんべい」が無印良品から発売されます。
「あら、かわいい名前じゃない」と思っているヒトもいるかもしれませんが、この商品、ホンモノのコオロギをパウダー状にして練り上げたせんべい。正真正銘の「昆虫食」なのです。
無駄を省いたシンプルなイメージ。洗練され、安価で便利なアイテムを提供してくれるグローバルブランド、無印良品。
それが今、なぜ、「コオロギ」なのか。
日本にいると分かりにくい、世界の問題を解決する無印良品のチャレンジを、ただのゲテモノ・奇妙な商品として扱ってしまうのはあまりにももったいない。
グローバルな視点で、「コオロギせんべい」の革新性に迫っていきましょう
飢餓をゼロにする。長い道のりの第一歩
この取り組みにはSGDsが深く関わっています。SDGsについて誤解を恐れずに説明すると「経済・社会・環境を放っておいたらヤバいから、これから先ずっと成長できるように世界でルールを決めるよ~!」ということで、2015年に国連サミットで採択された枠組みのことです。
は?「コオロギせんべい」に何のかかわりがあるの?
という方は、あと3秒待って!(笑)
SDGsに定められた目標の2つ目は
「飢餓をゼロに」
https://population.un.org/wpp/Graphs/DemographicProfiles/Line/900
より引用
日本にいると馴染みがないのですが、世界人口はヤバいくらい急増しています。
世界の人口は2019年の77億人から、2050年には97億人、2100年には109億人に到達すると考えられています。それだけ大量の人が飢餓に苦しまずに生活するには、大量の食糧が必要なのです。
さらに、農林水産省のデータによると、栄養が不足しているヒトの数は8億2100万人と3年連続で増加しています。5歳以下の子供の22%。つまり5人に1人が発育阻害状態にあるというデータもあります。
この調子で人口が増えていけば、飢餓に苦しむ子供たちの数が増えることはもはや計算するまでもない事実なのです。世界の栄養不足人口は、8億2100万人。人口が30億人ふえたら、栄養不足の人数はどうなるでしょうか?
私たちの未来を、道端で飢えて倒れる子どもたちを横目に眺める世界には、したくないものです。
■それで、なぜコオロギせんべいが注目されたワケ?
無印良品が、わざわざ「コオロギが地球を救う?」というページをリリースしたのにはそれだけの理由があります。
食料危機に陥るなら、家畜の量を増やせばいいじゃん。
そう思うのは当然ですが、家畜システムではそれほど多くの人類を支えることはできません。なぜなら、家畜を育てるにはエサも水も、場所も必要だからです。
エサの量だけでもこれだけの差がでます。CO2の排出量も断然少ないのがコオロギです。さらに成長が早く、約1か月で生産できるためスピードもとても速い。
それ以外にも、コオロギは家畜に比べて格段に狭いスペースしか必要なく、大量に生産可能であること。ほかにも、家畜の過食部率は40%程度なのに対して、コオロギは100%であり全く無駄が発生しないこと。
さらに、粉末で運搬する場合、コオロギは運搬効率も格段に良く、小さなスペースで大量に運搬できるという特徴まであります。これなら、運送にかかる車両や船舶が必要とするエネルギーも少なくて済むのです。
繁殖力もケタ違い。「コオロギせんべい」に使われるフタホシコオロギはペット食としても非常に優秀で、既に大量生産のノウハウもあるスゴい食材なのです。
つまり、「栄養源」としてのコオロギにはすごいスペックがあるというのは間違いない事実なのです。
■確かにイナゴの佃煮とか、有名だよね・・・
昔から日本ではイナゴの佃煮や蜂などが盛んに食べられてきたという歴史があります。長野や岐阜など内陸地方ではいまだに食べられていることも多いとか多くないとか。
日本は昆虫食大国です。食用にされている昆虫は55種ほどいたことが確認されています。その名残もあって、昆虫食カオスマップ2019で紹介された、昆虫食市場の各分野で実績がある企業・サービスは世界第2位。アメリカに次ぐ世界2位の昆虫食先進国なのです。
「コオロギラーメン」というのも存在し、しゃべくり007で有吉が絶賛していたらしく、実際店には行列ができるほど好評で美味しいらしいです。
クラウドファンディングでは目標額の229%、支援者650人。約690万円を調達しています。
ちなみに味は「エビに似ている」とのこと。「コオロギせんべい」と同じですね...!!
無印の担当者さんが言う通り!
とはいえ、「昆虫を食べる」ってこと自体が抵抗感あります。
この抵抗感っていったい何なんでしょうか?
■昆虫食が嫌がられる理由
昆虫は、汚いと思われているのがその理由です。
昆虫は基本的に汚いところに生息して、汚いものを摂取しています。落ちたものを食べるな!と教育された私たちにとって、地面を這いつくばる昆虫を食べることは、やはり抵抗感があります。
ミシガン大学が2014年に行った調査では、704人の大学生を対象にアンケート調査を行いました。その結果、昆虫は「病原体」と同じように汚く、食べるのに嫌悪感をしめす食材であることが示されたのです。
これは昆虫独特の嫌悪感です。
例えば、イギリスではタコを「デビルフィッシュ」と呼び忌み嫌う文化があるので食べられていません。文化が違うのが食べない理由であり、「汚い」のが理由ではないのです。
さらに、イスラム教では豚肉を食べません。豚は穢れた存在であり、食べるに値しないからです。これは衛生的な理由も含まれていますが、無菌の豚でも敬虔なイスラム教徒は豚を食べません。宗教上の信念によるものだからです。
したがって、私たちが虫を食べないのは、教育の過程で染みついた「虫は汚い」という信念によるものだということができます。
■それでも、コオロギせんべいは頑張っている
コオロギせんべいは、「コオロギ感」をなるべく払しょくするために粉末として使用しています。さらに、衛生的にも安全な環境で飼育された専用コオロギを利用しています。
実はSGDsの「飢餓をゼロに」という目標の為、国内でもがんばっている企業はいくつもあります。しかし、その多くが栄養バランスを改善したり栄養を高める方向で話が進んでいます。
「食べれる食材を増やす」という方向で話を進めている企業は決して多くないのです。したがって、無印良品の今回の取り組みは称賛されてしかるべきなのです。
実験的な商品ですから、話題になったとは言え長期的に売れるかどうかなんて分かりません。むしろ難しいと思います。それでも挑戦し続ける無印良品の勇気を讃えたい。そう思いませんか?
今回のギモンの提供者
今回は、サークルメンバーの「虫嫌い」のギモンがちょうどコオロギせんべいのニュースの何日か前に提供されていたので、記事にしてみました!矢駒さんの予知とも思える話題性の高さに感激。
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引用
Lorenz, Amanda R., Julie C. Libarkin, and Gabriel J. Ording. "Disgust in response to some arthropods aligns with disgust provoked by pathogens." Global ecology and conservation 2 (2014): 248-254.
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