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月島
2024年7月21日 16:56
「聖夜っ……聖夜!!」 自分の名前を呼ぶ声が聞こえて、聖夜が目を開けると、そこは中学校の屋上だった。柊が泣きながら聖夜の顔を覗き込んでおり、彼女の涙で、聖夜の頬が濡れている。「……柊」「聖夜……!よかった……」 聖夜が起き上がると、他の仲間達も聖夜を囲んで安心した表情を浮かべていた。「聖夜君……無事でよかった」「もう……心配したのよ?」「俺も焦ったぜ!」「こ、これで
2024年7月20日 17:14
『町には無数の狼がいるわ。その根源……アビリティ発動者を叩くのが先決よ!』『天ヶ原中学校上空にアビリティ反応確認!あの黒い城が本拠地だと思われます!』「了解!」 聖夜達は琴森と真崎の声に頷き、天ヶ原中学校を目指す。しかし、狼達がそれを阻むように聖夜達へ襲いかかる。「『かまいたち』!」 翔太が放つ風の刃が、狼達を切り裂いた。切り裂かれた狼達は砂のようにサラサラと消滅していく。
2024年6月6日 20:20
深也が目を覚ますと、医務室の時計は午後11時だった。 任務から戻ったのは夕方6時で、結局聖夜の腕の中で眠ってしまったため、実に5時間眠っていたことになる。(うわ……こんなに寝てたんだ) ゆっくりと身体を起こし、深也はベッドの上で大きく伸びをした。(……今日は色々あったな) 目を閉じて今日のことを思い返し始めると、様々なことが頭を過ぎった。(高次元生物と戦って、昔の自分に殺
2024年6月5日 19:33
影の生み出した世界が崩壊し、3人はもと居た天ヶ原駅前に戻ることができた。 海奈が空を見上げると、美しい夕焼けが広がっていた。どこまでも続く夕焼け空。彼女が今まで見た、どんな空よりも清々しく、綺麗だった。「海奈!」 遠くから、他の任務に出ていた隊員たちが走ってくる。その先頭を走っていた花琳は、海奈に駆け寄るなり抱き締めた。「海奈……無事で良かった…………」「姉さん……俺……」
2024年6月4日 17:41
黒い世界のナイフが刺さった場所で、柊は深也と再会した。始めは無事に会えて安心していたが、彼の左肩の出血を見て、柊は顔色を変える。「深也君、その肩……」「大丈夫……結構痛むけど……」「すぐ治すよ。私に任せて」 柊は、無理矢理笑顔を作る深也の左肩を両手で覆うと、小さく呟く。「……『巻き戻し』」 すると、柊の声と共に、深也の傷口が空色の光で包まれた。みるみるうちに深也の肩の痛み
2024年6月1日 17:38
深也と柊が飛び込んだ先は、どこまでも黒い世界だった。地面はぬかるんでおり、空と大地の境界線はなく、全てを真っ黒な墨で塗りつぶしたような空間が続いている。「……重苦しい」 深也が呟き、それに柊は頷いた。「早く海奈を探して、ここから出よう……」 2人が影の世界を歩き出した、その時。深也の背後から無数の手が伸びてきた。「深也君!」 柊は手を伸ばそうとしたが、それよりも先に無数の
2024年5月31日 20:34
真崎のアナウンスに従って、柊、海奈、深也の3人は天ヶ原駅前に駆けつけた。駅前の様子は明らかにおかしく、黒い霧が漂い、昼にも関わらず薄暗い。「なんだこれ……」『高次元生物の影響だと思われます』 深也の呟きに、真崎が答えた。それに対して、今度は海奈が問いかける。「その高次元生物はどこに?」『高次元生物は影のような形態をしているとのことです。恐らく、その薄暗い中に紛れているのかと』
2024年5月29日 18:36
柊はベッドの上で自室の天井を見上げていた。(暇だな~……) 聖夜と翔太は任務で他県へ、白雪と深也はパトロールで外出中だった。海奈と花琳の行方は分からないが、2人は姉妹だという理由から、なんとなく一緒に居るような気がして、柊は探しに行く気が起きなかった。(姉妹の時間、邪魔しちゃ悪いしな~……) そう思った矢先。「柊ちゃん、居る?」 花琳の声だった。柊がドアを開けると、そこに
2024年5月28日 18:43
聖夜は、道中で買った花を持った翔太と共に燕の病室を訪れた。 翔太が声を掛けてドアを開けると、そこには、いつものようにベッドの上で窓の外を眺めている燕がいた。「燕、元気にしてたか?」「あ、お兄さんと……聖夜さん」 燕は聖夜の顔を見るなり、少し目を細めて微笑む。「こんにちは、2人とも」「燕ちゃん、こんにちは!」 翔太は、明るく笑いながら挨拶をする聖
2024年5月27日 20:59
ノエルと出会ってから数日後、聖夜は訓練施設で翔太と共にVRの高次元生物と戦っていた。「『竜巻』!!」 翔太が右腕を振り下ろすと、激しい竜巻が巻き起こった。 施設内いっぱいに吹き荒れる竜巻は、高次元生物を巻き込む。しかし、厄介なことに、今回相対している敵の体は鋼鉄でできていた。そのため、どれほど強い竜巻でも、相手を吹き飛ばすことはおろか、ダメージを与えることすらできな
2024年5月26日 18:02
少年の言葉に、聖夜は戸惑いながら頷く。「君は……?」 聖夜が問うと、少年は人差し指を聖夜の口に当てて穏やかに言った。「話は後。まずはこの状況を何とかしよう」 少年が祈るように手を握ると黒い雪が降り始めた。それに伴って、辺りが冬のような寒さになる。「この寒さには耐えられないだろう」 少年は微笑んだまま言った。すると空気が揺れ、巨大なスズメバチのような生物が突如として姿を現し
2024年5月25日 20:34
部屋に戻った聖夜は、ベッドの上で横になっていた。(父さんが、事件に巻き込まれたかもしれないなんて……) 1人悶々としながら、聖夜は天井を見つめる。長年行方不明だった父が危険な目に合っているかもしれないということ、時の能力者は貴重だということ、自分の無力さ……色々なことが頭を巡った。(もっと強くなりたい……そのためにはどうしたら……) 聖夜は何度も寝返りを打ちながら考えた。(…
2024年5月24日 18:27
本部に戻った2人は、総隊長室を訪れた。赤いじゅうたんが敷かれた、広い部屋。しかし、部屋の中には総隊長用のデスクと、来客用のソファとガラスのテーブル、そして、物がほとんど飾られていない棚が一つあるだけで、とても寂しい印象を受ける。 聖夜は、ふと、棚に唯一飾られている写真が気になって近寄ろうとした。しかし、丁度よく扉が開いて千秋が入って来たので、慌てて柊の隣に戻った。「2人とも、待たせ
2024年5月23日 18:27
「そういえば、聖夜も言っていたな。柊は唯一の身内のような存在だって」 翔太がそう言うと、聖夜は頷いた。「ああ。うち、母さんを病気で亡くして、父さんも行方不明で……」「親父さんは生きてるのか?」「え、ああ、多分……」 曖昧にうなずく聖夜に、翔太は更に問いかける。「探そうとは思わないのか?」「え……」 思いがけない質問に聖夜は戸惑った。「……もう何年も会ってないから