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ジャパニーズクラフトジンのカクテルとモンブランのペアリング

6つの日本の素材のジン、「ROKU」

日本の四季を跨いだ6つの素材、

桜花、
桜葉、
煎茶、
玉露、
山椒、
柚子

から作られたサントリークラフトジンROKU。




ダメすぎてショック

この繊細なジンを使用したペアリングを作りたいと考え、
合わせる素材のブレインストーミングをしていた時、
ジンで使用している素材で繋ぐパターンを試みた際ショックを受けました。

まずは「玉露」。
ROKUを玉露で割ってみました。

全くもってROKUの良さが出ません。
いや、飲み物としては美味しいのですが、ROKUである必要性を感じません。
悪く言うと、「緑茶ハイ」のような印象です。

桜でも柚子でも山椒でも同じ印象でした。

「ROKU」の繊細な素材感でバランスが取れた構成に対し、
素材のどれかを強調することの必要性を感じませんでした。


また、
全く別の香り素材を合わせて新たなフレーバーやストーリーを生み出す、
それも有りだとは思うのですが、今回であれば、
「ROKU」の個性を活かす、
といった本質を求めるPLAYGROUNDらしさではありません。



「ROKU」が「ROKU」でなければならないアプローチ


飲み物としては純粋に水などで割る事で六の繊細な味を感じられます。

これをスイーツとのペアリングで表現する、
ただ美味しい、といったものは作れるとしても、
「ROKU」が「ROKU」でなければならないアプローチ、
ここが大きな壁でした。


新たな発想


そんな中、石垣さんの提案は「乳味」でした。
すっきりとした透明感のある、
繊細な日本の素材のジンのイメージにまさか「乳味」を合わせるヤンキー感。

ただ、恐ろしく理にかなっており、
ストーリーだけのカクテルやペアリングに対する石垣さんの明確なアンチテーゼだと僕は感じました。

もちろん、「乳」には強いフレーバーがあるわけではなく、
「ROKU」の繊細な素材のどれをもジャマせず、むしろ引き立ててきます。
尚且つ、スイーツとのペアリングを考えた時にスイーツの「まるさ」に対して、ジンのアルコールのエッジがより表立つ部分に対して潤滑剤として働いて、両者をスムーズに繋ぎ合わせてくれます。


りんご

石垣さんの提案にはそこにリンゴが含まれていました。
そこに無言の石垣さんとの共通言語を感じました。

「何故、りんごなのか。」
「りんごという素材の性質。」

それらが口には出さないですが、僕の中でひしひしと感じるものがあり、
まず、りんごという素材の性質について。


まだ、この業界で商品開発を始めた頃、5種類のフルーツのジュレを作る企画がありました。
葡萄、マンゴー、パイナップル、グレープフルーツなどです。
必死に素材と向き合いました。

美味しいものができました。

だけどそれぞれのフルーツのさっぱりとしたジュレの理想に対して、
あと一手といった印象でした。

自分が感じている一手は何なのか、必死に言語化しました。
それは
「汎用的なフルーツ感」でした。

パイナップルはパイナップルで美味しい、
グレープフルーツはグレープフルーツで美味しい、
それはそれで立派な正解なのですが、
「汎用的なフルーツ感」が加わった時に、
キャッチーにさっぱりと楽しめるジュレに昇華しました。

パイナップルであれば、パイナップルの持っていないフルーツ香を
基礎部分で押さえてえているため、
「フルーツ感の芳醇なパイナップルだ」
と感じるわけです。

その「汎用的なフルーツ感」を、
個性を出させずに、あくまで裏方の隠し味(香)として、
達成させる素材、、

それがリンゴでした。


そこに気づいてから、リンゴのベースシロップを作って、
5種類全てのジュレに配合しました。

辻口博啓シェフが目を丸くして「おおー!」と、
評価してくれたことを今でも覚えています。


和食の「出汁」のようなイメージかもしれません。
「出汁」がしっかり決まっていれば、どんなものが来てもある程度は成立してしまう側面があると感じています。


要は、「ROKU」でスイーツとペアリングを図るにあたり、
「乳」と「リンゴ」が両者を繋ぐパイプになってくれ、
さらに、
「ROKU」の繊細なジンのバランスを壊さないため、
余計な素材の個性感を主張せずに、汎用的なフルーツ感を付与するためのリンゴだと、僕は感じました。


それらが合わさった時に、不思議とミルクティーのような芳香を感じます。



モンブラン

そこに対してのペアリングスイーツとしてモンブランが上がりました。
もう、それしか無いでしょう!といった印象です。

芳香が伸びる素材や、芳香が飛ぶ素材は
「ROKU」を活かさないと感じていたからです。

栗のほっくりとした香りを主張しないけど存在感のある素材感が、
繊細な「ROKU」の芳香をサンドバックのように受け止め活かせてくれます。

また、バックにいる「りんご」と「栗」も非常に相性の良い組み合わせです。

かといって、栗がそれだけの役割ではなく、モンブランとしてのペアリングで相乗効果を生み出しています。


悲しきカダイフ

僕は昔からよくモンブランにカダイフを使用するので、
カダイフを使った構成を試みました。


カダイフ

美味しいものができ、
石垣さんとセッション。

石垣さんの顔が今一つ晴れません。

僕はいつもカダイフにはバターと粉糖を絡めるのですが、
カダイフ自体には甘味がないので、
中の甘味の無いカダイフ部分が、アルコールのエッジを通してしまいました。

そこが合わさらない事で乳味の繋がり場所が足りず、
完璧なハーモニーが成立しません。


やり直しです。


甘味度

このペアリングを成立させるにあたって「甘味度」もテーマに上がりました。
僕はお菓子単体を作る際、
かなり甘味度は低い事が多いのですが、一旦客観的にペアリングを見つめなおす必要がありました。

甘味度を付与できる、
それでいて、栗のように「ROKU」を受け止め活かすパーツ、、

原点回帰、
モンブランでド定番パーツ、
「メレンゲ」。
これを面白く生かせないかなと考えました。

それの答えが「2種のメレンゲを用いる」ということでした。


アーモンドと小麦を用いた、儚い食感のフレンチメレンゲをベースに、
糖のエッジを出した、細かなスイスメレンゲをあしらいます。

儚くも、アーモンドのリッチなナッツの油脂の旨味のメレンゲの上で
(良くも悪くも油脂はメレンゲを破壊します)
細かなエッジ立ったリズミカルなスイスメレンゲが踊ります。


バッチリ来た!


と感じました。



石垣さんとのセッションも良い形で完結しました。





是非、当日お楽しみいただけますと幸いです。




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