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元講師が打ち明ける「歌手やシンガーソングライターを夢見る君へ」:年齢について

質問の多かった「デビューする年齢」

現役講師時代、多かった質問の一つが「年齢」だ。「24歳なんですけど遅いでしょうか?」「何歳までにデビューできればいいんでしょうか?」など、目指す人はそれぞれ程度の差こそあれ、気にはしていると思う。

その考え、的外れかも・・・

もしかしたら君は、「デビューする時の年齢」に関して、ただ何となく「〇〇歳だったら早い・遅い」と考えているかもしれない。

また、誰か別の人に「今の君の年齢なら早い・遅い」と言われ、気にしているのかもしれない。

でもごめん。どっちも、ちょっと的外れだ。

まずは歌手やシンガーソングライターにとっての「メインのお客様」を想像してみよう

デビューする年齢を考えるためには、歌手やシンガーソングライターという職業が、どういう商売なのかを知る必要がある。

以降、読みながら、君も考えてみよう。

そもそも、歌手やシンガーソングライターという職業のメインのお客様は、「10代後半から20代の若者」だ。

この事実は今後も君がこの職業について考えるうえでの基本のひとつなので、よく覚えておこう。

具体的な統計があるかはわからないが、サブスクにしろ、人がお金を出して音楽を聴くようになるのは10代後半から20代の頃が最も盛んになる。自分で好きなものが買えるお小遣いがある年代ということ。

少数の例外については今は無視するとして、これが、20代後半から30代以降になると、多くの人は音楽にだんだんお金をかけられなくなっていく。

結婚して子供ができて音楽にお金を振り分けられなくなったり、仕事も家事も忙しくなって聴く時間がなくなったりするからだ。

そして老化現象として、リスナーが新しいアーティストを発掘しようかという好奇心も、夜中にライブに行く体力も、普通は年齢とともに衰えていく。

そんな事情からか、多くの人が10代後半から20代の頃にハマった歌手やバンドの曲を40代以降もずっと聴いていくというパターンになることが多いのだ。

続いて、送り手側の視点で年齢を考えてみよう

ここで、歌手やシンガーソングライター、つまり「送り手」の視点に切り替えて考えてみよう。

つまり、君が10代後半から20代の頃にデビューして、同じ時期に10代後半から20代の頃の若者たちの中に一定数のファンを獲得することができれば、そのファンは固定客として30代や40代になっても君の収入を支えてくれるかもしれない。

20代でデビューした君が、30代でアルバムをリリースしたとして、新規のファンも多少は獲得できるのかもしれないが、アルバム購入者の大多数は10代後半から20代の頃に君を好きになった人たちなのだ。

30歳以上。ダメではない。けれど・・・

30歳になったらデビューしてもダメなのか。ダメではない。でも条件は同じだ。

30歳を超えてデビューして売れている人はもちろんいるが、年齢が上がるごとに、期待できるファンの獲得数は絶対に減少傾向になる。でもそれが不幸せとは限らない。1000万再生でなくたって、50万再生だって、幸せに食べてはいけるかもしれないのだ。

それに加えて、30歳以上の人が、10代後半から20代の頃の人と感性がどれくらい合うのかという問題もある。そこで、かっこいいオトナとして見せていくとか、パイは少ないが思い切って30代に売ろうとするとか、思い切って中高年の人に売ろうとするとか、工夫が必要になっていくのだ。


若すぎても・・・

早ければいいのかというとそうではない。小中学生など若すぎても難しい。

数年おきに小中学生ボーカリストやグループがヒットすることはあるが、それは業界の大人の人たちがうまく売っているから。

業界の大人の皆さんは「今売れること」しか考えないし、それで正しい。業界の大人の皆さんにとっては、今売れなければ次の仕事もないからだ。

でも、売られる側からは全然別の話になり、特に「こんなに小さい子なのに歌がうまい」というのを強調しすぎた売り出し方をされると辛い。

大人になるにつれ、世間に認識された時の若すぎる年齢がハードルとなり、目新しさがなく、飽きられやすくなるというリスクがあるのだ。

まあでもそこは、プロとして早くからキャリアをスタートできているわけなので、本人の魅力や努力次第で、さまざまな形での「良い方向」に行くこともできる可能性がある。


小中学生の頃はのびのび育っていけたらいい

また、身体面でも、小学生後半から中学生は声変わりがある。その頃に仕事レベルで毎日長時間、発声で喉に負担をかけるのはよくないのだ。

さらに思春期で心も不安定になりがち。

もし本当に小中学生で売れてしまったのなら仕方がないが、そうじゃないなら、小中学生の頃は、できたら発声+ピアノorギターの練習はしつつも、しっかり体力を養って、いくつか失敗もして、音楽以外のことも含めたいろいろな経験を積んだほうが、後の音楽活動にもプラスになると思う。


大切なのは自分で判断できるようになること

もし君が「SpotifyやApple Musicのトップページにデカデカと表示されるレベル」の売れ方をしたいなら、「勝負が決まる節目」は、やはり遅くても30歳くらいまでなのだろう。

それまでに、デビューするだけでなく売れて、数十万人くらいのリスナーを獲得しなくていけない。

そこには、「売れた人」と「売れなかった人」との分かれ道は、確かにある(その先にも別の分かれ道はあるんだけどね)。

君はこれを厳しいと思う?

でも、実質的な年齢のカベなんていろんな職業にある。きれいごとだけではないのだ。ならむしろ、はっきり認識したほうがいい。

また、何事も変化する。日本は少子高齢化しているので、数十年後は中高年の人も音楽を聴きまくっているのかもしれない。

ちょっと脱線したが、こういった人々の人生傾向に加え、君がどういう売れ方・商売の仕方をしたいのかを設定することにより、君自身が年齢について「早いのか・遅いのか」を考え、判断することができるようになるのだ。

そしてレコード会社や事務所など君を「売る側」の人間も、多くが「10代後半から20代の頃のアーティストが一番売りやすい」という認識であることは今も間違いないと思う。

年齢について考えてみよう

どんな人に自分の歌を売って聴いてもらいたいのか、どんな売れ方(仕事の仕方)をしたいのかをまずは設定しよう。

例えば、洋服屋をやりながら歌手をやったっていいのだ。

そして今の自分の年齢がその「設定」にどれくらい合致するのか考えよう。

一般人の音楽購入のピークは10代後半から20代の頃。このことから考えていけば、おのずと自分の年齢について自分なりの認識を持てるだろう。

それだけでなく、自分がどういう進み方や頑張り方をすればいいのかのヒントにもなると思う。


教えられなくても気づいている人もいる

そして、今回の記事の内容を、誰にも教えられないのに自分で気づいて、自分なりの戦略を練っている人もいるのだ。

そしてそういう人も君のライバルになるわけで、すでに何かしら動いているのかもしれない。

焦るのではなく、そういう人の「賢さ」を見習っていけたらということ。

講師にとっては、厳しい質問

もし年齢について、君を教えているボーカルの講師や専門学校の勧誘スタッフに質問したら「大丈夫」としか言わない可能性が高いし、多くの場合、そうとしか言えない。

「遅いに決まってんだろ」と明るく言う講師もいるかもしれないが、それは上手なやり方で、普段からネガティブのハードルを下げておくことで生徒のモチベーションを維持している可能性がある。

もし重々しく長時間相談に乗る講師がいるとしたら、あんまりうまくない。これについてはいつか講師編の記事などで取り上げよう。

なぜ「大丈夫」と言うのかというと、まず基本的には辞めさせたくない。在籍生徒数を減らしたくないというのがある。

しかしそれと同じくらいあるのが、君の実力を伸ばすうえでモチベーションを下げてプラスになることは一つもないので、わざわざモチベーションを下げることはしないということだ。

「大丈夫」としか言わないことが悪いことでもない。その理由を今の君が知ってもあまり意味はないと思う。

大切なのはそれよりも、君自身が、自分の人生を自分で判断しながら進んでいくということなのだ。


追伸


今回は歌手やシンガーソングライターをいう視点での記事となる。例えばアイドルのメインターゲットは、歌手やシンガーソングライターのメインターゲットとは変わってくるので、そこはご注意を。


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